弁理士の日々

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役人は暴力に弱い

2019-02-03 11:12:07 | 歴史・社会
小4死亡、市に抗議殺到 「なぜ渡した」2日間で1千件
『千葉県野田市の小学4年、栗原心愛(みあ)さん(10)が死亡した事件で、心愛さんへの対応をめぐって市と市教育委員会に抗議や非難が殺到している。記者会見で心愛さんのいじめアンケートのコピーを父親に渡したことを明らかにした翌日の1日から増え、市は2日、市役所内の一室に電話8台を増設し、市職員が交代しながら応対した。(朝日新聞デジタル)』

行政が、父親の威圧的な言動に恐怖を感じ、秘密とすべてアンケートを父親に渡してしまった事件です。このことは言語道断で、なんとかならなかったものか、つくづくと残念です。
もう一つ、この事件から連想することがあります。
「役人(行政の窓口)は暴力に弱い」

この点に関し、以前このブログに書き込んだ記憶があったので、ネットで調べたら見つかりました。2008年の記事ですから、もう10年以上が経過します。
行政と暴力(2008-07-08)
概略、以下のような記事です。
----10年前の記事引用開始----------
生活保護費不正受給:群馬まで100キロ、タクシーで通院 埼玉・深谷市が組員告発
「埼玉県深谷市内の暴力団組員の男(60)が生活保護費を市から不正に受給していた疑いがあり、市が生活保護法違反容疑で埼玉県警に告発していたことが分かった。群馬県北部の温泉地にある医療機関まで約100キロの道のりをタクシーで通院したとして料金を請求するなど、妻(44)と2人の受給額は約1800万円に上るとみられている。
 関係者によると、組員は07年10月、群馬県北部の医療機関で診察を受けたとして、自宅からの往復のタクシー代十数万円を生活保護費に含めて受け取っていたという。同月、県の監査で不正受給の疑いが発覚した。」

深谷の生活保護費不正受給:「暴力に屈した」市長謝罪 弁明を撤回 /埼玉
7月1日14時1分配信 毎日新聞
「 ◇“市は被害者”弁明を撤回
 深谷市の生活保護法違反(不正受給)事件で、新井家光市長は30日、定例会見で「担当者だけで穏便に済ませようとした事なかれ主義が暴力に屈した」と、市の不手際を認めて謝罪した。容疑者の逮捕当日の市幹部の会見では「市は被害者」と主張していた。」

このような事件情報に接すると、「行政の窓口は原則として暴力に屈しやすい」という図式が見えてきます。

似たような事件に、<滝川タクシー詐欺>がありました。
「夫婦は06年10月~07年10月、収入があり生活保護受給資格がないにもかかわらず、市から介護タクシー代2億215万円と生活保護費389万円の計2億604万円をだまし取った。」
以下に詳しく書かれています。残念ながらニュースソースはもう見られません。
「生活保護世帯の元暴力団組員の夫と妻らが介護タクシー代金約2億4千万円を不正に受給していた事件で、北海道警は9日、夫婦らを詐欺の疑いで逮捕した。
(中略)
 逮捕されたのは、滝川市黄金町東3丁目、片倉勝彦(42)、妻ひとみ(37)両容疑者と札幌市北区の介護タクシー会社「飛鳥緑誠介(あすかりょくせいかい)」取締役の板倉信博(57)、社員の小向敏彦(40)両容疑者。片倉容疑者は介護タクシー代金2億65万円のほか、生活保護費約370万円を詐取した疑いが持たれている。(中略)

 始まりは06年3月だった。滝川市出身で、いったん札幌市に移っていた容疑者夫婦が滝川市に転入。「病気で働けない」などとして生活保護の認定を受けた。
(中略)
 しかし、市の幹部は以前から、重ねて忠告を受けていた。市の監査委員だった市議によると、06年秋の時点で高額の請求に気づき、懇談会の場で田村弘市長や副市長らに注意を促した。しかし、市長は「そんなことがあるのかい」などと答えるにとどまったという。
 その後、監査委員は07年春に検証報告を作成して「考えられない額で現実離れしている」「金が夫婦側に還流しているのではないか」と指摘した。市の顧問弁護士も同時期に「すぐに打ち切るべきだ」と進言。その後、市はようやく腰を上げて滝川署に相談したが、市として具体的な調査に入ることはなかった。正式に被害届を出した11月16日にも390万円を振り込んでおり、「弱腰」が目立つ。
(中略)
 市は、当初から元暴力団組員であることを把握しており、「見るからに『それ風』で威圧的だった」(市職員)。捜査した札幌地検や道警などには「トラブルが嫌で目を背け続けた疑いがある」「職員の刑事責任は追及できなかったが、納税者への背信行為であることは間違いない」という声がある。(以下略)


「行政が暴力に弱い」事例として、私が最初に接したのは「豊島産廃事件」です。

「1975年12月、豊島(てしま)総合観光開発は香川県の豊島で有害産業廃棄物処理事業を行いたいと香川県知事に許可申請した。これに対し住民は建設差止請求訴訟を提起したので、豊島総合観光開発は「ミミズによる土壌改良剤化のための処理」のみを行うと申請内容を変更した。許可権者の香川県は、行政としては許可せざるを得ないとして、住民に対しこれを受け入れるよう強く要請し、住民も受け入れた。
豊島総合観光開発は78年4月から「ミミズ・・・」業務を開始したが83年には事実上廃業し、シュレッダーダストなどを搬入して野焼きを行うようになった。これについて香川県は同社を指導監督するどころか、逆に同社を廃棄物処理法違反で起訴した高松地検に対して、同社の主張を認める説明を行っていた。
90年11月、兵庫県警は豊島総合観光開発を廃棄物処理法違反の容疑で摘発。当初、シュレッダーダストは廃棄物ではないと説明していた香川県も廃棄物であることを認めるようになった。同社は、50万トンを超す大量の廃棄物を放置したまま実質上倒産した。」
「こうした県の対応の背景にはやはり暴力が関係していた。排出業者が県庁で職員に暴力を振るった。闇の勢力との対決を恐れ便宜を図った。県は4万トンだから無害だという宣言を出したが、実際は50万トンだった。暴力によって行政がゆがむことの恐ろしさをこの事件が物語っている。 」


行政を掌る一人一人の役人はそれは弱い存在です。暴力をふるわれ、家族に危害が及ぶ可能性が出てきたときに、その役人一人の力で暴力に立ち向かうのは無理です。しかしだからといって、行政が暴力に屈してはいけません。
やはり、相手が暴力できたときにはそれに対抗できる仕掛けを行政の中に設けておく必要があるということでしょう。どのような仕掛けが適切かはわかりませんが。
---以上、10年前の記事終わり--------

今回の、こどものアンケートを父親に渡してしまった事件も、同じ構図を感じます。
行政の窓口の役人が、威圧的な態度で迫られてきたとき、その窓口の役人一人に対応を任せていたのでは、暴力に屈してしまうことになります。それが人間の弱さというものでしょう。
そのような弱さを認識した上で、対応を窓口の役人一人に負わせるのではなく、ただちに役所全体として対応が始まるような仕組みが必要だと痛感します。
しかし残念ながら、テレビの報道を見ている限り、そのような行政の仕組み作りの必要性について論じているニュース解説は皆無の状況です。
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