メドヴェージェフ・ロシア大統領が国後島を訪問した件について、11月9日に北方領土問題と日本外交で取り上げたところです。
駐露大使交代へ、北方領情勢分析不適切で更迭か
読売新聞 12月23日(木)3時10分配信
『政府は22日、河野雅治・駐ロシア大使を退任させ、後任に原田親仁・駐チェコ大使を充てる方針を固めた。
ロシアのメドベージェフ大統領による11月の北方領土訪問について、外務省や在ロシア大使館は当初、「大統領は訪問しない」という見通しを首相官邸に伝えていた。
この点について、菅首相らから事前の情勢分析が不適切だったと指摘された経緯があり、河野大使の退任は事実上の更迭だという見方も出ている。河野氏は2009年に大使に就任し、さらに続投するとみられていた。』
<駐露大使更迭>私はロシアに詳しくない…首相、怒り爆発
毎日新聞 12月24日(金)2時30分配信
『・・・一時帰国を命じられ、11月3日午前に帰国した河野大使は、同日夕、外務省の佐々江賢一郎事務次官、小寺次郎欧州局長らとともに首相公邸に呼び出された。菅首相や仙谷由人官房長官が事情聴取を始めた。
「なぜだ。なぜ訪問しないと判断したのだ」。官邸側から問いただされ、・・・河野大使の口は重くなる一方だった。「要するにどういうことだ」。いら立つ首相ら。最後に、河野大使はこう口走ってしまった。「私はあまりロシアに詳しくないので……」。次の瞬間、首相らの怒りが爆発した。』
今回、メドヴェージェフ大統領の国後訪問を予測できなかった失態の責任は、河野駐ロ大使一人にあるのではなく、外務省の欧州局長やロシア課長にも大きな責任があるはずで、その辺を前原外相がどのようにけじめを付けるのか、今後の課題です。
ところで、後任の原田親仁氏とはどのような外交官なのでしょうか。
鈴木宗男著「闇権力の執行人 (講談社プラスアルファ文庫)」については、このブログの鈴木宗男氏と大西健丞氏で話題にしました。このときは、「闇権力の執行人」の中の大西健丞氏とのいきさつに関する記事に注目したのですが、この本のすごいところは、外務省の現役高級官僚について実名入りで、今までの恥ずかしい行状に関してすっぱ抜いているところです。
鈴木宗男氏は対ソ連外交に深く入り込んでいたので、外務省のロシア関係とは特に繋がりが深かったはずです。そこで、原田親仁氏について何か書いてないか、読み返して見ました。
ありました。
旧ソ連時代の1989年ごろまで、在モスクワ日本国大使館では「ルーブル委員会」という組織が裏金で不正蓄財を行っていたというのです。そのカラクリは今回書籍を再読してもよくわかりませんでしたが、旧ソ連時代にモスクワに在勤していた原田親仁氏もこうした不正蓄財に手を染めていた、と実名で記述されています。
さらに、この不正蓄財のもともとの出所はKGBの工作資金だったとも記され、これら日本の外交官はKGBに尻尾を握られ、泳がされていたというのです。その秘密を握られた原田氏が在ロシア日本大使となって、本当に大使として日本の国益を守ることができるのか、心配になるところです。
もう一人。現在の欧州局長です。調べたら小寺次郎氏でした。小寺氏というと、佐藤優著「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)」に出てくる名前です。
宗男事件当時、小寺氏はロシア課長でした。上司の欧州局長は東郷和彦氏です。この東郷局長が極端な能力主義者だったのですが、「小寺は使えない」との評価で、ロシア関係の大事な仕事を小寺ロシア課長を通さずに佐藤氏のチームに直接指示していたというのです。
田中真紀子外務大臣のとき、ロシア課長からイギリス公使に転出が決まった小寺氏を、大臣命令で呼び戻した、ということでも有名になりました。
あの小寺氏が現在の欧州局長でしたか。
ロシア課長の岡野正敬氏と今回更迭されるロシア大使の河野雅治氏は、ともにロシアの専門家ではなさそうです。ロシア外交の中心にいるべき、欧州局長、ロシア課長、駐ロ大使の3人のうち、一人は宗男事件で知られたあの小寺次郎氏、残り二人はロシア専門外の人でしたか。
そして新任の駐ロ大使が、在モスクワ大使館での裏金作りでKGBに尻尾を握られた人物とは。残念なことです。
「闇権力の執行人 (講談社プラスアルファ文庫)」で明かされた、もう一人の恥ずかしい行状の外交官が最近ニュースになっていました。
6者協議主席代表の斎木局長、大使転出へ 後任は杉山氏
2010年12月12日3時1分
『前原誠司外相は、斎木昭隆アジア大洋州局長を大使に転出させ、後任に杉山晋輔地球規模課題審議官を起用する人事を固めた。斎木氏は2008年1月に局長に就任し、3年近く北朝鮮の核問題をめぐる6者協議の日本側首席代表を務めている。
・・・・・・
いずれも来年1月に発令する予定。』
この杉山氏について「闇権力の執行人」では、平成2年に週刊誌で報じられた「外務省高官の『二億円』着服疑惑」の疑惑本人であった、と記されています。外交機密費から二億円を着服し、料亭などの飲み食いに浪費していたというのです。ある料亭では「ろうそく遊び」なる下劣な座敷遊びに興じていたともいいます。
杉山氏が条約課長のとき、佐藤優氏を有罪に陥れたイスラエルの教授招致事件が起きました。教授を招致するのにロシア支援委員会の予算を用いようとして条約局の担当者と揉めた際、条約課長だった杉山氏が頼まれもせずに宗男氏に詫び状を提出したのです。この詫び状が、その後佐藤氏の有罪を立証するための証拠として外務省から検察に提出されました。あの詫び状の課長が杉山氏でしたか。
その後杉山氏は駐韓国公使となり、宗男氏がロシアからの帰路トランジットでソウルに立ち寄るたびに接待にやって来ましたが、韓国人を貶める発言をしたり、あるいは「女性家庭教師と昼も夜も」とニヤけていたと記されています。
一つ気をつけるべきは、鈴木宗男氏と大西健丞氏にも書いたように「闇権力の執行人」の内容を鵜呑みにはできないという点です。
しかし、ロシア外務省は鈴木宗男氏の「闇権力の執行人」を当然フォローしているでしょうから、これら日本外務省の高官たちがロシア政府から見くびられることは必定です。何ともやりきれません。
駐露大使交代へ、北方領情勢分析不適切で更迭か
読売新聞 12月23日(木)3時10分配信
『政府は22日、河野雅治・駐ロシア大使を退任させ、後任に原田親仁・駐チェコ大使を充てる方針を固めた。
ロシアのメドベージェフ大統領による11月の北方領土訪問について、外務省や在ロシア大使館は当初、「大統領は訪問しない」という見通しを首相官邸に伝えていた。
この点について、菅首相らから事前の情勢分析が不適切だったと指摘された経緯があり、河野大使の退任は事実上の更迭だという見方も出ている。河野氏は2009年に大使に就任し、さらに続投するとみられていた。』
<駐露大使更迭>私はロシアに詳しくない…首相、怒り爆発
毎日新聞 12月24日(金)2時30分配信
『・・・一時帰国を命じられ、11月3日午前に帰国した河野大使は、同日夕、外務省の佐々江賢一郎事務次官、小寺次郎欧州局長らとともに首相公邸に呼び出された。菅首相や仙谷由人官房長官が事情聴取を始めた。
「なぜだ。なぜ訪問しないと判断したのだ」。官邸側から問いただされ、・・・河野大使の口は重くなる一方だった。「要するにどういうことだ」。いら立つ首相ら。最後に、河野大使はこう口走ってしまった。「私はあまりロシアに詳しくないので……」。次の瞬間、首相らの怒りが爆発した。』
今回、メドヴェージェフ大統領の国後訪問を予測できなかった失態の責任は、河野駐ロ大使一人にあるのではなく、外務省の欧州局長やロシア課長にも大きな責任があるはずで、その辺を前原外相がどのようにけじめを付けるのか、今後の課題です。
ところで、後任の原田親仁氏とはどのような外交官なのでしょうか。
鈴木宗男著「闇権力の執行人 (講談社プラスアルファ文庫)」については、このブログの鈴木宗男氏と大西健丞氏で話題にしました。このときは、「闇権力の執行人」の中の大西健丞氏とのいきさつに関する記事に注目したのですが、この本のすごいところは、外務省の現役高級官僚について実名入りで、今までの恥ずかしい行状に関してすっぱ抜いているところです。
鈴木宗男氏は対ソ連外交に深く入り込んでいたので、外務省のロシア関係とは特に繋がりが深かったはずです。そこで、原田親仁氏について何か書いてないか、読み返して見ました。
ありました。
旧ソ連時代の1989年ごろまで、在モスクワ日本国大使館では「ルーブル委員会」という組織が裏金で不正蓄財を行っていたというのです。そのカラクリは今回書籍を再読してもよくわかりませんでしたが、旧ソ連時代にモスクワに在勤していた原田親仁氏もこうした不正蓄財に手を染めていた、と実名で記述されています。
さらに、この不正蓄財のもともとの出所はKGBの工作資金だったとも記され、これら日本の外交官はKGBに尻尾を握られ、泳がされていたというのです。その秘密を握られた原田氏が在ロシア日本大使となって、本当に大使として日本の国益を守ることができるのか、心配になるところです。
もう一人。現在の欧州局長です。調べたら小寺次郎氏でした。小寺氏というと、佐藤優著「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)」に出てくる名前です。
宗男事件当時、小寺氏はロシア課長でした。上司の欧州局長は東郷和彦氏です。この東郷局長が極端な能力主義者だったのですが、「小寺は使えない」との評価で、ロシア関係の大事な仕事を小寺ロシア課長を通さずに佐藤氏のチームに直接指示していたというのです。
田中真紀子外務大臣のとき、ロシア課長からイギリス公使に転出が決まった小寺氏を、大臣命令で呼び戻した、ということでも有名になりました。
あの小寺氏が現在の欧州局長でしたか。
ロシア課長の岡野正敬氏と今回更迭されるロシア大使の河野雅治氏は、ともにロシアの専門家ではなさそうです。ロシア外交の中心にいるべき、欧州局長、ロシア課長、駐ロ大使の3人のうち、一人は宗男事件で知られたあの小寺次郎氏、残り二人はロシア専門外の人でしたか。
そして新任の駐ロ大使が、在モスクワ大使館での裏金作りでKGBに尻尾を握られた人物とは。残念なことです。
「闇権力の執行人 (講談社プラスアルファ文庫)」で明かされた、もう一人の恥ずかしい行状の外交官が最近ニュースになっていました。
6者協議主席代表の斎木局長、大使転出へ 後任は杉山氏
2010年12月12日3時1分
『前原誠司外相は、斎木昭隆アジア大洋州局長を大使に転出させ、後任に杉山晋輔地球規模課題審議官を起用する人事を固めた。斎木氏は2008年1月に局長に就任し、3年近く北朝鮮の核問題をめぐる6者協議の日本側首席代表を務めている。
・・・・・・
いずれも来年1月に発令する予定。』
この杉山氏について「闇権力の執行人」では、平成2年に週刊誌で報じられた「外務省高官の『二億円』着服疑惑」の疑惑本人であった、と記されています。外交機密費から二億円を着服し、料亭などの飲み食いに浪費していたというのです。ある料亭では「ろうそく遊び」なる下劣な座敷遊びに興じていたともいいます。
杉山氏が条約課長のとき、佐藤優氏を有罪に陥れたイスラエルの教授招致事件が起きました。教授を招致するのにロシア支援委員会の予算を用いようとして条約局の担当者と揉めた際、条約課長だった杉山氏が頼まれもせずに宗男氏に詫び状を提出したのです。この詫び状が、その後佐藤氏の有罪を立証するための証拠として外務省から検察に提出されました。あの詫び状の課長が杉山氏でしたか。
その後杉山氏は駐韓国公使となり、宗男氏がロシアからの帰路トランジットでソウルに立ち寄るたびに接待にやって来ましたが、韓国人を貶める発言をしたり、あるいは「女性家庭教師と昼も夜も」とニヤけていたと記されています。
一つ気をつけるべきは、鈴木宗男氏と大西健丞氏にも書いたように「闇権力の執行人」の内容を鵜呑みにはできないという点です。
しかし、ロシア外務省は鈴木宗男氏の「闇権力の執行人」を当然フォローしているでしょうから、これら日本外務省の高官たちがロシア政府から見くびられることは必定です。何ともやりきれません。