弁理士の日々

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厚労省から各自治体への「事務連絡」

2020-04-27 16:40:59 | 歴史・社会
日本における新型コロナウイルス対策がどのような推移をたどっているのかについて、詳細に把握しようとしたとき、現在目にすることができる一つの有力な情報が、厚労省から各自治体に発出される「事務連絡」であるようです。コロナ関連の事務連絡については、「自治体・医療機関向けの情報一覧(新型コロナウイルス感染症)」に、一覧が掲載されています。そこでこの中から、重要と思われる内容をピックアップして読んでみました。

それでは、時系列で「事務連絡」を調べて見ます。
2/1 『都道府県は、各保健所等に帰国者・接触者相談センターを設ける。都道府県は、帰国者・接触者外来を設ける。2月上旬目途。』
 「PCR検査を受けるためには、保健所の関門を通過しなければならない」との政策がスタートしました。結果として、保健所が脆弱であることから、PCR検査数が抑制されるという日本の最大の問題が生じることとなりました。

3/1 『帰国者・接触者外来を増設し、帰国者・接触者相談センターの体制を強化
    ○○の場合、軽症者は、陽性でも、自宅での安静・療養を原則とする。』
 3/1の段階で、帰国者・接触者外来の増設と、帰国者・接触者相談センターの体制強化が喫緊の課題だったのでしょう。しかし厚労省は自治体の尻をたたくだけで積極的に改善策を講じず、それから約2ヶ月、事態は改善されずに現在に至りました。
 また3/1の段階で、「軽症者は、陽性でも、自宅での安静・療養を原則とする。」との方針が示されたのに、それが実際に稼働するのにさらに1ヶ月を要しました。この間、陽性者は軽症者も含めて入院させるので、「PCR検査を増やすと入院者が増え、医療崩壊する」との誤った考えで、PCR検査数の増加が抑制されてしまいました。

3/4 『保険適用:保険適用される検査は、都道府県等から行政検査を委託しているものとして取り扱う。』
3/17 『自宅での安静・療養を原則とする対策への移行は、厚生労働省に相談』
 せっかく、上記3/1で「軽症者は、陽性でも、自宅での安静・療養を原則」を打ち出しながら、この3/17で否定してしまいました。

4/2 『軽症者等の宿泊療養及び自宅療養
 宿泊療養:都道府県が用意する宿泊施設での安静・療養を行う。
 ①帰国者・接触者外来等でPCR検査実施。
 ③帰国者・接触者外来等において、確定患者かつ軽症者等と診断。
 ④都道府県等は、療養場所を確定(宿泊療養、自宅療養)
  宿泊療養の場合、調整窓口が都道府県の場合、宿泊療養の調整実施。』
 やっとのことで、軽症の陽性者について宿泊療養と自宅療養の方針が出ました。
 ここで「都道府県等」とは、{都道府県・保健所設置市・特別区}を意味します。埼玉県で言えば、さいたま市は「保健所設置市」なのでさいたま市長が所管し、埼玉県のさいたま市以外は埼玉県知事が所管します。東京都で言えば、23区は特別区ですから各区長が所管し、八王子市ともうひとつは「保健所設置市」なのでそれぞれの市長が所管し、東京都のそれ以外の市については東京都知事が所管する、という複雑な構造になっています。

4/15 4/15 『地域外来・検査センターの運営委託
(1)都道府県等は、地域の医師会に対し、PCR検査を集中的に実施する機関としての地域外来・検査センターの運営を委託することができる。
(3)地域診療所等(事前連携先登録)から地域外来・検査センターに直接紹介が可能
 ○ 地域外来・検査センター運営にかかる人件費、備品費、消耗品等の費用(診療報酬による収入分は除く)を委託料に含み得る。委託料は国の補助対象となる。防護服整備費用も同様。』
 PCR検査の舵取りを地域の保健所に設置する帰国者・接触者相談センターのみに頼った結果として、検査数は伸びないままに現在に至りました。4/15にやっとのことで、帰国者・接触者相談センター以外のルート開設に至りました。
 ただし、国や都道府県が主役になるのではなく、あくまで、東京23区であれば区長が一方の主役、そして他方の主役は地域の医師会です。その地域の区長と医師会の胆力次第で、うまく回るか否かに差が出てきそうです。
 国(厚労省)も、運営委託に許可を出しただけで、対応はすべて自治体に任せ、国が積極的にPCR検査数増大の活動を行う気配はありません。ここが最大の問題点です。

4/17 『厚労省と観光庁が協力し、観光庁が都道府県別の利用可能なホテルの把握、条件確認、協力の取り付けを行う。
上記情報に基づき、宿泊施設の選定・準備、宿泊施設の確保、医療スタッフ・支援要員の確保、宿泊施設の運用は、都道府県が行う。
支援要請があった場合の人的支援を防衛省が行う(自衛隊の災害派遣要請)。』(4/28追記)

4/23 『軽症者等については、宿泊療養を基本とする』
 自宅療養の陽性患者が死亡する案件が出た結果として、やっとこの方針が出されました。4/2に軽症の陽性者について宿泊療養と自宅療養の方針が出された時点で、自宅療養の問題点は明らかとなっていましたから、最初から宿泊療養優先の方針で臨むべきでした。

4/28 『地域外来・検査センター運営マニュアル』(4/29追加)

以上の読み込みが終わりましたので、次回は、今後日本において新型コロナ対策を有効に進めていく上で、どのプレイヤーがどのような働きをなすべきか、検討していきます。
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