弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

アルミホイールとスチールホイール

2010-05-14 21:40:31 | 趣味・読書
わが家では、ここ8年ほどマイカーを保有していません。
最近になって方針を変え、マイカーを購入することとなりました。外国製の小型車ということで検討し、たまたまわが家の近くに位置するヤナセが取り扱っている車種ということもあり、さるドイツ車のAクラスというタイプを選択しました。
全長3885mm、ホイールベース2570mmというコンパクトカーより若干大きめというサイズです。しかし車幅が1765mmと5ナンバーの範囲を超えているため、何とコンパクトカーなのに3ナンバーです。

2ヶ月ほど前に仕様を決める打合せをしました。
車輪は、スチールホイールが標準で、オプションにアルミホイールがあります。アルミホイールを選ぶと10万円ほど高くなります。私と家内は、今まで購入したクルマがすべてスチールホイールでしたし、特に希望もなく、何となくスチールホイールの標準タイプを選択しました。

最近までクルマにはさほど興味がなく、街を走っているクルマに注意を向けたことがありませんでしたが、いざ購入となると俄然興味が湧きます。そこで注意をして観察すると、なんと走っている車の大部分がアルミホイールを履いているではないですか。アルミホイールはかっこよく、スチールホイールが野暮ったく見えます。
さてどうするか。
わが家で購入を決めたクルマは、ホイールの選択がメーカーオプションなので、ホイールを変更するにはドイツ発送段階にさかのぼって変更する必要が生じます。「標準がスチールホイールということは、ドイツではスチールホイールがこのクルマにフィットしていると考えているに違いない」と自分を納得させ、変更しないこととしました。

スチールホイール(鉄ホイール、鉄っちんホイールとも呼ばれる)からアルミホイールに変更する目的は、「軽くなるから」である筈です。ホイールを軽量化することによってバネ下重量(SI単位でバネ下質量と呼ぶことにします)を低減し、道路の凹凸に対する車輪の追従性を改善することが主目的の筈です。
そこで、ヤナセに対し、Aクラスで採用しているスチールホイールとアルミホイールそれぞれの質量を調べてもらいました。
スチールホイール:15インチ(タイヤ:185/65R15) → 6.5kg
アルミホイール:16インチ(タイヤ:195/55R16) → 9.3kg

何ということでしょう。アルミホイールの方が3kg近くも重い、という驚くべき結果が報告されたのです。

若干ややこしいところがあります。
タイヤサイズで「185/65R15」とある場合、185はタイヤの幅(mm)、65はタイヤの扁平度、15はホイールの直径(インチ)を表します。タイヤの外径はこの数値から計算で出さないといけません。
そしてAクラスの2種類の車輪は、タイヤの外径は両方とも620mm程度で同じなのですが、アルミホイールの方は、タイヤの半径方向長さ(サイドウォール高さ)が0.5インチ短く、タイヤの幅が185mmから195mmと10mm広くなっています。その分、ホイールの直径が1インチ大きく、幅も広くなっているはずです。
材質の差(スチール → アルミ)とサイズ差(15 → 16インチ、広幅化)を総合して、質量が3kg近くも増えてしまったということです。

タイヤ外径は同じのまま、ホイール径を大きくしてタイヤのサイドウォール高さを低くする改造を「インチアップ」と呼んでいるようです。サイドウォール高さを低くするだけではタイヤ内の空気容量が減ってしまうので、タイヤ幅アップが同時に行われます。
インチアップの目的は性能面では、タイヤのグリップ能力の向上と思われます。デメリットとして、路面の凹凸の影響をもろに車軸に伝えてしまう点があるようです。さらに今回のホイール質量調査から明らかなように、ホイールの質量が大幅にアップしてしまいます。

以上のように、「アルミかスチールか」という比較をしたいのに、「インチアップ」が絡んでしまい、両者を分離することができません。
ご近所に同じAクラスを持たれている家があります。車種の現バージョンがA180であるのに対し、一世代前のA170です。駐車している車を拝見したら、タイヤが185/65R15で15インチアルミホイールを履いています。つまり、このホイールの質量がわかったら、同じサイズでスチールホイールとアルミホイールの比較ができるということです。
さっそくヤナセさんにメールで問い合わせたところ、翌日返答がありました。何と7.7kgでした。つまり、
スチールホイール:15インチ(タイヤ:185/65R15) → 6.5kg
アルミホイール:15インチ(タイヤ:185/65R15) → 7.7kg
アルミホイール:16インチ(タイヤ:195/55R16) → 9.3kg
ということです。

同じ15インチホイールで、スチールからアルミに変更すると1.2kgも質量が重くなるということです。スチールホイールの場合にはホイールキャップを用いるので、質量差はこれより小さくなるでしょうが。つまり、アルミホイールを選択する理由は、決してバネ下質量の軽量化による走行性能のアップではなかったのです。おそらく、「かっこいいから」だけでしょう。もちろん、通常はホイールの質量が公開されていないので、「軽くなって性能もアップしている」と思い込んでいるのでしょうね。

次に、「ホイールの質量が3kg近くもアップするのに、インチアップははたしてすべきなのか」という疑問が生じます。
[メリット]:タイヤのグリップ力が増大する。
[デメリット]:地面のゴツゴツ感が車体に伝わり、乗り心地が(多分)悪くなる。
       :バネ下質量が3kg近くも大きくなり、車輪の地面追従性が悪くなる。
そもそも、スチールホイールの185/65R15ですでに、十分にインチアップです。私が直前に乗っていたシャリオは、185/70R14でしたから、それに比較して1インチアップです。タイヤグリップ性能はそれだけで十分に向上しているはずです。Aクラスというのは街乗りを主とするファミリーコンパクトカーですから、タイヤグリップ力のさらなる増強よりも、乗り心地を重視すべき筈です。
ヤナセの人に疑問をぶつけてみました。
結論としては、「Aクラスにおいて、バネ下質量を車輪あたり3kgも増大させる犠牲と価格10万円アップの犠牲を払ってまで16インチにインチアップする必要性は感じられない。単純に『ホイールが大きい方が見てくれがいい』というスタイルだけの問題である。」ということです。
アルミホイールを採用することについても、「アルミホイールでないと客が買ってくれない」が主な理由のようです。
また、「185/65R15(6.5kg)と195/55R16(9.3kg)では走行性能に与える影響が異なるはずだから、サスペンションの設定を変更していますか?」と質問しましたが、「変更していない」との回答でした。

この議論の際はまだ15インチアルミホイールの質量が不明でした。ヤナセの人は、「①同じ15インチ同士だったらスチールよりもアルミの方が軽い」「②16インチにおいては、スチールだと重くなりすぎるのでアルミしか選択肢がない」とおっしゃっていましたが、実際は逆だったわけです。

ネット情報でも、「アルミホイールのサイズ別の質量比較」というデータが本当に見つからないですね。世の中のカーユーザーがホイールの材質を検討するに際し、あるいはインチアップを検討するに際し、ホイール質量を気にかけている人が極めて僅かであることの証左であるように思います。

以上の検討から得られた結論として、「現在のアルミホイールの流行、インチアップの流行は、クルマの総合性能の必要から生じたものではなく、単に見てくれを良くするためだけのものである。実際には、インチアップしていないスチールホイールの方がクルマの総合性能が上であるかもしれない」が得られました。

これからスチールホイールのAクラスを自信を持って運転することにしましょう。
ジャンル:
ウェブログ
コメント (6)   この記事についてブログを書く
« 郵便不正事件の謎(7)河野判決... | トップ | 田崎清忠先生 »

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
デザイン優先 (パテ)
2010-05-20 10:27:14
アルミホイールは、デザインを優先する場合が多いため過剰にアルミを使い、
結果として重くなるという話を聞いたことがあります(その分、スチール
ホイールより大幅に強度は増すようですが・・・)。
アルミホイールの重さ (ボンゴレ)
2010-05-20 19:42:37
パテさん、コメントありがとうございます。

やはり一般的に、アルミホイールはデザイン重視のためにスチールホイールより重くなっているのですね。

その分、ホイールの強度が増すといっても、必要以上の強度は要らないわけですから、メリットとしてカウントすることはできないでしょうね。
Unknown (Unknown)
2011-05-22 10:33:38
80~90年代の車の話見てるみたいだった(笑
現在の車はサスペンションの向上によって、そんなに車体へのダメージや乗り心地が悪くなるということは無いですよ。
(全く無いとは言い切れないけど)
てっちん錆びるからメンテめんどいし。
アルミホイールにする理由 (snaito)
2011-05-22 15:17:54
Unknownさん、コメントありがとうございます。

アルミホイールにする理由は、スチールホイールだと錆びるからメンテが面倒だ、ということですか。
私はスチールホイールのクルマを4台合計で30年ぐらい乗っていましたが、ホイールの錆をメンテした経験はありません。
逆に、アルミホイールだとブレーキからの粉末で汚れが付いてそれが落ちにくいが、スチールホイルー+ホイールキャップだとその心配がない、という話は聞いたことがあります。
無骨なスチール (やまぽん)
2011-06-07 21:44:51
おもしろい記事で参考になりました。

自分はフランスのコンパクトカーに乗っていますが、純正でアルミの15インチがついていました。今まではアルミならスチールより軽いだろうと思っていたのですが、色々調べているうちに「同サイズだとスチールの方が軽い」と知り、巡りめぐってここに来ました。
同サイズの重量比較がとても参考になりました。
高価なアルミホイールは同サイズのスチールより軽いものもありますが、手頃なアルミだと重量は増えてしまうのですね。デザイン性だと割り切る必要がありますね。
スチールの無骨なデザインに憧れ、15インチのテッチンを購入した次第です。
スチールとアルミの比較 (snaito)
2011-06-07 23:11:23
やまぼんさん、こんにちは。

上記私の記事は、あくまでメルセデスAクラス純正での比較です。
あらゆる車種を対象にこのような比較表ができるようにデータが公表されているべきだと思います。しかし私が調べた1年前は、本当にデータがありませんでした。Aクラスに限定してディーラーに質問し、営業マンが会社に問い合わせてやっとデータが明らかになるという始末です。
ホイールの重量というのは、もはや何ら検討の対象にはなっていないのですね。本当に驚きです。

ドイツではさすがにもっと質実で性能本意にスチールを使っているかと想像していたのですが、旅行でドイツを訪れた実感では、日本と同程度にアルミホイールが跋扈していました。

コメントを投稿

趣味・読書」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事