弁理士の日々

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「除くクレーム」補正の審査基準改訂

2010-06-08 22:38:30 | 知的財産権
3月17日、特許庁ホームページに「明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(新規事項)」の審査基準改訂案に対する意見募集 が掲載されたので、私は特許庁に対して意見を応募しました。審査基準改定案に対する意見募集でご紹介したとおりです。

6月1日、改訂した審査基準が発表される(「明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(新規事項)」の審査基準の改訂について )と同時に、寄せられた意見とそれに対する回答とが公開されました(「明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(新規事項)」の改訂審査基準(案)に寄せられたご意見について)。

意見募集に対して意見を応募したのは、3団体と3個人のみ、ということです。『「明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(新規事項)」審査基準改訂案に関するご意見(pdf)』によると、3団体とは、知財協、日本弁理士連合会、東京医薬品工業協会知的財産研究会特許部会の3つです。「4.提出者:個人」が私ですね。いつも意見応募は少ないですが、今回はもう少し多いかと予想していたので、意外に少ないなという印象です。

意見とそれに対する回答は、『.「明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(新規事項)」審査基準改訂案に関するご意見の概要及び回答(pdf)』にまとめられています。

私の意見とそれに対する回答は、2ページのNo.11ですね。私の意見の全体は、、特許庁ホームページに「明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(新規事項)」の審査基準改訂案に対する意見募集 が掲載されたので、私は特許庁に対して意見を応募しました。審査基準改定案に対する意見募集でご紹介したとおりで結構長文ですが、以下のように集約されていました。

[寄せられたご意見の概要]
《(i)の(説明)において、『上記(i)の「除くクレーム」とする補正は、引用発明の内容となっている特定の事項を除外することによって、明細書に記載された補正前の各発明に関する技術的事項に何らかの変更を生じさせているものとはいえない。』と記載されているが、「除くクレーム」によって除外する特定の事項が引用発明の内容となっているか否かに関係なく、明細書又は図面の記載によって開示された技術的事項に対し,新たな技術的事項を導入しないものであるか否か、という点のみを基準として、補正の可否が決まるのではないか。》

これに対する回答は以下の通りです。全体を4分割してみました。

[ご意見に対する回答]
《ご理解の通り、新規事項の追加であるか否かは、補正が当初明細書等から導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるか否かで判断されます》(α)
《が、》(β)
《「除くクレーム」とする補正については、(i)のような、第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条に係る先行技術との重なりのみを除く補正であれば、引用発明の内容となっている特定の事項を除外することによって、補正前の明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものではありません。そのため、結果的に当該補正は当初明細書等から導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるといえます。》(γ)
《なお、改訂案では、「各発明に関する技術的事項」という記載になっておりましたが、「明細書等から導かれる技術的事項」と修正しました。》(δ)

(α)の部分は、判決から導かれる一般論で、私の意見を肯定している部分です。

つぎに(γ)の部分です。
私の問『「除くクレーム」によって除外する特定の事項が引用発明の内容となっているか否かに関係なく、明細書又は図面の記載によって開示された技術的事項に対し,新たな技術的事項を導入しないものであるか否か、という点のみを基準として、補正の可否が決まるのではないか』は、さらに具体的には『除外する特定事項が引用発明の内容となっていない場合にも同様、明細書に記載された補正前の各発明に関する技術的事項に何らかの変更を生じさせているものとはいえない、と判断すべきものと考えます』ということなのですが、この具体的な問には答えてもらえませんでした。

結局現在のところ、「除くクレーム」とする補正が新規事項の追加であるか否かの判断を、《補正が当初明細書等から導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるか否か》という原則に立ち帰って判断する具体的ロジックが提示されていません。そこで、この部分には一切口をつぐみ、「特許庁は従来の審査基準で認めていた補正態様については今後も認めますよ」という点のみを明らかにしたと言えます。

次回は、この「意見に対する回答」をもう少し深読みしてみたいと思います。
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