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審査基準専門委員会の議事録公表

2010-02-21 10:47:54 | 知的財産権
産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の審査基準専門委員会(第4回)で、「除くクレーム」に関連して「補正の新規事項追加不可」に関する審査基準の改訂議論がされました。このブログではこちらこちらで紹介しました。

先般、この専門委員会の議事録が公表されたので(pdf)、内容を検討してみました。
審査基準における「除くクレーム」の取り扱いについての部分を抽出します。

1.日時平成22年1月28日(木)10:00~12:00
3.出席委員 中山座長、片山委員、筒井委員、永井委員、長岡委員、萩原委員、(参考人)豊田様
竹中委員、榊委員が御欠席

田村審査基準室長『最後に、c.は「除くクレーム」です。これも「各論」の中に入っているものの一つですが、大合議判決の中では、「除くクレーム」を例外的に認めているかのような記載はおかしいと言われておりますので、「例外的に」という文言を削除させていただく。さらに、結果的に、「除くクレーム」――これは29条の2の先願を除くとか、39条の先願を除く、それに加えて29条1項3号の新規性欠如に係る先行技術を除くものは補正が認められることが書いてあるわけですが、そこについても、基本的には「新たな技術的事項を導入しないもの」として補正を認めることとさせていただければと思っております。』

「例外的に」という文言を削除し、基本的には「新たな技術的事項を導入しないもの」として補正を認めるということです。そうすると、「29条の2の先願を除くとか、39条の先願を除く、それに加えて29条1項3号の新規性欠如に係る先行技術を除くものは補正が認められる」という前提が宙に浮いてしまいます。
「例外的に」を削除したとたんに、先願や新規制違反を回避する目的があるかないかにかかわらず、「新たな技術的事項を導入しないもの」か否かのみを判断基準とする、ということになってしまうのですが、審査基準室長はその点を敢えてぼかして説明しています。

審査基準室長のこの説明に対して、委員のみなさんはどのような議論をされたのでしょうか。
永井委員が「御提案になった「除くクレーム」についての表現ぶりを改めることについては全面的に賛成したいと思います。」と発言した以外は、「除くクレーム」関連についてはだれからもコメントがありませんでした。
「新規事項に関する補正要件」全体については、永井委員の他、豊田氏、筒井委員、片山委員から発言がありましたが・・・。

改訂後の審査基準は、「除くクレーム」について「例外的に」を削除する一方、「29条の2の先願を除く、39条の先願を除く、29条1項3号の新規性欠如に係る先行技術を除く場合に限って補正が認められる」という構成を残すのでしょうか。どうしても論理矛盾に陥ると思うのですが。

その他、田村審査基準室長の説明の中に以下のようなご発言がありました。
『ただ、新たに大合議判決の判断基準を入れさせていただきますので、これまで補正が認められていなかったようなものでも、この新しい判断基準に照らせば補正が認められるのではないかということでチャレンジされてくる出願人もあろうかと思われます。そこで、「d.審査基準のいずれの類型にも該当しないものの取扱い」といたしまして、「現行審査基準に示されていない類型の補正について上記a.の一般的定義にしたがって判断する際の審査基準の適用に関する方策を、改訂審査基準に記載することとする。」というふうに入れさせていただいております。具体的に申し上げますと、自明でなく、「各論」にも「補正が認められる」というふうに明示的に記載されていないような新しい類型、すなわち従来「新規事項」であると考えられていたような補正が提出された場合に、審査官が慎重に審査するための方策を審査基準の中に明記したいと考えております。』

さて、どのような方策が審査基準の中に明記されるのでしょうか。
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