弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

黒川氏賭け麻雀事件

2020-06-02 10:47:59 | 歴史・社会
黒川氏賭け麻雀事件には、いくつかの論点があります。
「新聞記者が高級官僚と仲良くなるのは問題だ」
「賭け麻雀は犯罪だ」
「緊急事態宣言下で3密の会合を行ってはならない」
「処分が甘すぎる」

ここでは、「新聞記者が高級官僚と仲良くなるのは問題だ」について取り上げます。

このブログの「官僚と報道機関の関係 2018-04-29」で以下のように論じました。
日本の報道・ジャーナリズムが「権力の監視」機能を発揮していない理由は、大きく次の2点に集約されると言います。
○ 記者クラブ制度
○ 特ダネ至上主義
ここでいう特ダネとは、
①その報道がなければ世の中に知られることがなかったような特ダネ
②明日公表されるニュースを今日独占して報道するような特ダネ
の2種類がありますが、数量的には②が多数を占めます。

日本のジャーナリズムのこのような問題点を記載した書籍として、このブログでは、過去に以下のような記事を書いてきました。
上杉隆「ジャーナリズム崩壊」2008-11-18
長谷川幸洋「日本国の正体」2010-01-05
牧野洋「官報複合体」2012-08-14

この中で、長谷川幸洋「日本国の正体」2010-01-05 について振り返ります。
日本国の正体 政治家・官僚・メディア――本当の権力者は誰か
長谷川 幸洋
講談社

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---ブログ記事抜粋--------------
大新聞をはじめとする日本のジャーナリズムは、「他紙よりも一刻も早く報道すること」を至上命題としています。そして、取材源を官僚に依存する記者は、官僚から特ダネ情報を他紙記者よりも早く受け取ることにより、特ダネをモノにします。実は情報を提供した官僚は、その報道によって自分の推し進める政策を後押しさせたいのであって、官僚自身の代弁者として好適な記者に特ダネ情報を漏らしているのです。このとき記者は役人から、政策を記したペーパー(紙)を併せて受け取ります。
官僚は、自分たちが推し進める政策を自分たちが思うとおりにうまく報道してくれる記者を選択し、情報を渡します。従って、官僚の政策を批判的に記事にする記者は情報が流れません。記者のうち、官僚から紙をもらえる記者は10人中1、2名しかいないということです。特ダネ記者になりたくて官僚に取り入っていくうちに、知らず知らず、記者は官僚の代弁者=ポチに成り下がっていきます。
記者は、「自分が官僚から信頼された結果として情報をもらえるのだ」と思い込んでいるそうで、「自分は官僚の代弁者に成り下がっている」とは気付かないのだそうです。

なぜ日本の新聞報道はそんなことになってしまったのか。以下の3点が挙げられます。
(1) 日本の新聞は、「他紙よりも一刻も早く報道すること」を至上命令とする。
(2) 情報を持っているのは官僚であり、官僚と記者との間に圧倒的な情報格差が存在する。
(3) 記者は「官僚は、自分たち記者と同様に中立の立場」と思い込んでいるところがある。
---ブログ記事抜粋終了--------------

さて、ここからは今回の黒川賭け麻雀問題についてです。
上記長谷川幸洋著「日本国の正体」でも明らかなとおり、日本の報道機関は、主なニュースソースを官僚に頼っており、特ダネをものにするには、高級官僚から「特別に懇意な記者」として扱われることが最重要です。相手が検察であっても同様です。東京高検の検事長という高級官僚に取り入って、公式発表の一日前に情報をリークしてもらい、それを報道することで「日本式特ダネ」をゲットできる記者が、「優秀な記者」と評価されます。その意味では、今回の麻雀の相手3人の記者・元記者は、新聞社から見れば「最も優秀な記者」です。
一方、検察側から見ると、自分のポチ記者に捜査情報をリークして記事を書かせることにより、世論を「推定有罪」に導き、捜査及び訴訟を検察有利に進めようとします。

現在の日本のジャーナリズムの病理の中で、今回の賭け麻雀は必然として生じた、ということができます。

さて、黒川賭け麻雀事件の論点のうち、「処分が甘すぎる」についてですが・・・
安倍総理は「法務省と検事総長が決定した処分について、内閣は受け入れただけ」と言い逃れしています。しかし、官邸が「この処分は甘すぎる。懲戒処分が適当。」と判断したのであれば、突き返せば良いだけです。検事長に対する懲戒処分の決定権は内閣が握っているのですから。「人事案の突き返し」は安倍政権の得意技ではないですか。
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