弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

ドットサイト(ダットサイト)

2022-03-13 14:29:55 | 趣味・読書
私は、「陸上自衛隊は戦えない軍隊だった 2022-02-28」記事において、ドットサイト(ダットサイト)に触れました。
ダットサイトは、小銃の光学照準器の一種です。
2002年当時、陸上自衛隊ではほとんど知られていなかったダットサイトを米国が使用しているとの情報が入ってきました。ダットサイトは銃に装着する照準器の一種で、中に見える赤い点を目標に併せて引き金を引くだけで弾を標的に命中させられるという便利な道具です。
著者が連隊長のとき、素早い照準を可能にするダットサイトやライト、スコープ、サプレッサー(銃声や閃光を軽減する装置)などの個人の装具類を小銃につけることは官給品以外、許されない環境でした。
2015年頃からは、世界の部隊が当たり前のように実際の戦闘で使用しているものを手にすることができるようになっています。

ダットサイトの原理について、ウィキの照準器で調べて見ました。すると、その原理は極めて単純であることが分かりました。
下の図(A)のように、球面ガラス(厳密には放物線面ガラス)のハーフミラーと、点光源(赤)があればできあがってしまいます。
球面ガラスの焦点(球面の半径の半分の位置)に点光源を置き、球面で反射させると、(A)に描いたように、球面のどの部分で反射した光線も、同じ平行な光線になります。
球面ガラスは度のついていないガラスですから、前方から入射した光を透過します。ガラスの後方から目で眺めると、ガラス面を通して遠景が見えています。
ダットサイトのゼロ点調整を行い、点光源からの反射光の方向と銃(カメラ)の向かう方向が平行になるように調整します。そのあと、ガラスの後方からガラスの部分を眺めると、遠景と赤点を見ることができます。そして、遠景のうちで銃が向かっている方向に、赤点が見えるのです(下の図の(B)(C))。
従って、銃で狙う標的と赤点が一致するように銃の向きを調整した上で引き金を引けば、標的に命中します。
昔からの銃の照準器は、銃口付近の凸型の照星と、後方の凹型の照門と、遠方の標的と、自分の目の4者を一直線上に配置することにより、照準が定まります。これに対してダットサイトは、球面ガラスの範囲内に標的が見えていさえすれば、後は銃の向きを調整して標的と赤点とが一致するようにすればいいだけです。目の位置がちょっとずれても、下の図(B)のように目が上方にあっても、(C)のように目がガラスの中央に位置していても、いずれでも赤点は銃の向かう方向と一致しています。
特にアサルトライフルを用いた近接戦(市街戦)で迅速に狙いを定める上で、ダットサイトの使用は大きなメリットになるといいます。

実戦でこんなに有益な機能が、こんなに単純な原理で実現するのにもかかわらず、ごく最近まで実戦で実用化されていなかった、ということに驚きを感じます。
ダットサイトの歴史について知りたいと思うのですが、なかなか情報が見つかりません。
英語ウィキのRed dot sightに記事があるようです。日本語ですと、ダットサイト/Dot sightに記事があります。
『ダットサイトの元となった、ハーフミラーを利用したリフレックス・サイトの特許はかなり古く、1900年のイギリスで取得されている。しかし小火器用のものが普及するのは大きく後の事となり、第2次大戦後、狩猟を目的とした、散弾銃用の光学サイトが登場した。ひとつは、太陽光などをプリズムを通して採光しレティクルを投影するもので、暗いところでは使えなかった。もうひとつはバッテリー式で電気的にレティクルを投影する仕組みを採用していた。
LEDによって赤い光点を投影する、いわゆる小火器用のレッド・ドット・サイトが登場したのは、1975年のこと。スウェーデンのエイムポイント社(Aimpoint AB)で開発された。
エイムポイント社の電子照準器は冷戦時代、試験的に導入された特殊部隊などで高い評価を受け、21世紀現在では『コンプM2』などのモデルが欧米各国軍の一般部隊でも標準照準器として広く採用されている。』
原理が簡単で実用的価値が高いのに、最近まで実用化されてこなかった理由は、点光源の確保にあったのでしょうか。

ところで、ドットサイトは、小銃のみならず、カメラの照準器としても使われていることを知りました。超望遠レンズで野鳥を視野に入れるに際して威力を発揮しているようです。それも、12800円で手に入ります。
私は、超望遠レンズを所有していないのでドットサイトの必要性はありません。しかし、ドットサイトの威力を自分の目で確かめたく、つい購入してしまいました。
オリンパスのEE-1(メーカーサイト)です。
カメラ(ニコンZ50)のホットシューにドットサイトを装着しました(下の3枚の写真)。
(使用時)

(使用時)

(格納時)


ニコンD50(APS-C)の望遠250mm(換算400mm)でファインダーに見えている画像(下写真)


EE-1を通して見えている映像(下2枚)



EE-1を通して見える赤点は、点ではなく、○と+を組み合わせたマークになっています。目の位置がちょっとずれても、カメラが向いている方向とマークの位置とは常に一致しています。見たい方向がガラスの枠内に入っていれば、カメラの向きを変えて赤マークが見たい方向に一致するように調整することで、狙いを定めることができます。

オリンパスのEE-1を用いた野鳥観察の実態については、「野鳥撮影に革命をもたらす!手持ちで撮れる600mmレンズフィールドレポート Vol.3」に詳しいです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする