弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

JAL入社式から見える時代の変化

2012-08-10 18:46:04 | 歴史・社会
2010年9月16日付の日本経済新聞夕刊記事で、衝撃を覚えたことを記憶しています。「就職氷河期、個性は封印」と題した記事です。例えばこちらに紹介されています。JALの入社式で居並ぶ新入社員の風景について、最近(2010年頃)と1986年当時を比較したものです。
   日本航空の入社式風景(2010年9月16日 日本経済新聞夕刊)
 
    1986年                         2010年頃

なんという違いでしょう。
2010年の女性新入社員たちは、まるで制服であるように同じようなダークスーツに身を包み、髪型も靴も、そして手の組み方までもおそろいです。
それに対して1986年は、ひとりひとりが個性的に衣服や靴を選んでいます。もちろん髪型もそれぞれです。

実は、若い女性の意識はこの20年で変わったのかで紹介した北原みのり著「アンアンのできれいになれた?」を読んだとき、JAL入社式のこの写真を思い出したのです。

80年代、JALに入社した若い女性たちは、思い思いの服装で入社式に集い、笑顔がこぼれ、いずれも希望に燃える表情です。「さあ、私たちはこれから活躍するわよ」という自信に満ちあふれています。
それに対して現在、強制されたわけでもないのに、何でこんなにそっくりのダークスーツに揃ってしまうのでしょうか。髪型も統一されています。どこかに「JALの入社式にふさわしい姿形」というマニュアルが存在し、全員がそのマニュアルどおりにしようと必死の努力をしているとしか思えません。

この20年間で、一体何が変わってしまったのでしょうか。
新聞記事では、『就職氷河期で採用枠が限られる中、「最近は優等生タイプばかりに企業の目が向き、内定が集中する傾向がある」。学生の就職活動を間近で見てきた明治大学の就職キャリア支援部はこう指摘する。
多種多様な人材を求めない企業と、個性を表に出せない新入社員。そこから組織の活力は生まれてくるのだろうか。』とあります。

そして、就職における若者たちの劣勢は、女性の恋愛環境をも変えてしまったのでしょうか。若い女性の意識はこの20年で変わったのかで紹介したように、80年代と2000年以降ではアンアンの記事に表れる女性の意識が大きく変化しています。
80年代は・・・
『今の時代、どこをどう探してもひとかけらも見つかりそうもない、軽すぎる勢い。世の中は良い方向に豊かに明るく軽くなっていくという未来を疑うことなく、アンアンも女の欲望を丸出しにしながら、あの時代をそのまま生きていた。』
『欲望を丸出しにしているのに、きれい。そして、全然男に媚びていない。何が斬新だったのかを一言で表すなら、すべてが完璧な「女目線」だった、これに尽きる。』
そして2000年以降は・・・
『あの頃に発売された本や、歌を振り返ってみると、女の子たちの叫びのようなものが、聞こえてくる気がする。・・・この社会には、女の子の居場所がない、と。
バブル世代の女は、自分たちがいる場所が世界の中心だと思えていた。・・・若く未来のある女が、世界で一番自由で強く、世の中の真ん中にいられる。女であることの居心地の悪さを感じたことはないけれど、「居場所がない」と苦しむのは、少なくとも80年代の女にはなかった感性だ。
わずか数年で女の子から見える世界は180度変わってしまった。』

80年代には「自分のため」だったものが、「男に奉仕する」「男に媚びる」ものに変身してしまいました。

JALの入社式に集う女性たちの表情と、まさに重なり合っているように思います。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする