弁理士の日々

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シンドラーエレベータ事故

2007-06-04 08:12:04 | 歴史・社会
シンドラーエレベーター事故から1年が経過するのですね。事故原因については不明のままでしたが、1年後にやっと動きがありました。例えばこちら

警視庁は、ブレーキバッドの摩耗によってブレーキの効きが悪くなったのが事故原因であり、事故の9日前に点検したエスイーシー社の点検員が摩耗を発見できたはず、と考えているようです。

ブレーキバッドの摩耗が発生しており、これが事故原因と関係があるというのなら、因果関係を大きく二つに分ける必要があります。

① ブレーキバッドが摩耗し、(たとえパッドが常温でも)ブレーキの効きが悪くなった。

② ブレーキパッドとドラムが接触してパッドが高温になり、フェード現象でブレーキの効きが悪くなった。パッドとドラムの接触の副次作用として、パッドの摩耗も進行した。

ところが、新聞記事ではパッドの摩耗しか述べておらず、フェード現象にはいっさい触れていません。「エレベーター用のブレーキでは原理上フェード現象が起こらない」ということであればよろしいのですが・・・。


まず、事故機程度のパッドの摩耗で、パッドが常温のとき(フェード現象が起こっていないとき)にブレーキの効きが悪くなるのか否か、という点です。こんなことは事故後ほどなくして判明するはずで、「原因不明」という報道から私は、「この程度の摩耗ではブレーキの効きは悪くならない」という結論が出たのだと思っていました。何で事故から1年も経たないとこのような結論が出せないのでしょうか。

警視庁は、「ブレーキの新旧や気温など条件を変えながら実験を入念に重ねた結果、最後の点検から事故までの間では、パッドの摩耗は大きくは進まないとの見方を強めている。」ということですが、なぜそのような推論に到ったのか、不明です。パッドが弱い力でドラムに接触し続ける故障が発生していたとしたら、短期間で摩耗が進行してもおかしくありません。そしてパッドの接触によってパッドの温度が上がり、故障発生から短時間でフェード現象によってブレーキの効きが悪くなった、ということはあり得ると思います。


エスイーシー社の主張:「摩耗は事故直前の数分で進んだ。点検に不備はなかった」と主張。点検担当者も「ブレーキの構造がよくわからず、細かい調整はできなかったが、外見でわかる摩耗はなかった」と説明したという。

警視庁の見方:事故直前の点検では、摩耗が進んでいたため、ブレーキ周辺にパッドの削れた破片などが散っていたはずで、担当者が摩耗を見落とした疑いが強い。

さて、事件は今後どのように解明されるのでしょうか。
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