弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

サグラダ・ファミリアの謎

2007-06-02 15:40:14 | Weblog
今年のゴールデンウィークは、家族とスペインに旅行し、マドリッドとバルセロナを訪問しました。スペインといえば闘牛とフラメンコ、バルセロナといえばガウディのサグラダ・ファミリア教会です。はい、いずれも経験してきました。

サグラダ・ファミリアについては、ガウディの意匠に感心するより、建築としての謎に興味をそそられました。以下に紹介します。
------------------------
サグラダ・ファミリア教会は、ガウディによって設計され、1882年に建設開始、現在も建設が進行している教会です。普通の教会の常識で言うと、南が正面、北が後陣、東と西は側面です。しかしわれわれは、東側面の誕生のファサード(ガウディ生前に完成)と、西側面の受難のファサード(1952年から建設開始)がサグラダ・ファミリアの正面のようにイメージしています。

教会の南側上空から写した写真7によると、右が東側の誕生のファサード、左が西側の受難のファサードです。写真の正面に見える部分が南の正面、奥が後陣です。

受難のファサードから教会内部に入ると、教会の中央部は工事中です。通路は、西側の受難のファサードから、南側の正面を通り、東側の誕生のファサードに抜ける通路のみであり、まさに工事現場の安全通路です。
教会内部の天井を支える柱は、写真1のように細い柱です。後陣に当たる部分は工事用のタワーが天井まで達しています(写真2)。写真3は誕生のファサードです。
   
  写真1            写真2            写真3
    
  写真4            写真5            写真6
東西の各ファサードにはそれぞれ4本の高い塔が建っています。一番高い塔は120m程度の高さのようです。エレベータは60mの高さまで運んでくれます。エレベータを下りた地点から反対側の受難のファサードを見たのが写真4です。真上を見上げると塔がそそり立っています(写真5)。
塔からの下りは螺旋階段を歩いて降ります。螺旋階段の真下を見下ろすと、遥か下方まで見渡せます(写真6)。まるでアンモナイトです。

教会内のショップで、この教会の最終完成形、構造などについて書かれた書物を探します。展示されているほとんどの書物は、外形的なデザインに着目したものでした。1冊だけ構造について記載された本を見つけ、購入しました。

さて、帰国してから、購入した本を読んで謎を解こうとしました。

現在のサグラダ・ファミリアは、東西の誕生のファサードと受難のファサードが完成形です。それぞれ主に4つの高い塔からなっており、一番高い塔の高さは120mです。下の写真7は上から見た現在の状況です。
ところがこの教会の建設計画では、もっと凄いことになっているのです。左下の図で、茶色い部分が現在できあがっている部分、空色の部分が今後の建設計画です。教会の中央、東西の両ファサードの間に、高さ170mの大ドームが建設されるというのです。さらにこの大ドームは、地面から塔が立ち上がるのではなく、ドームの下は教会の内部空間(空洞)なのです。どのようにしてこの大ドームを支えるのでしょうか。
ところが図面から読み取るところ、大ドームの重量の大部分は4本の石の柱で支えられています。上の写真1に示すような石の柱です。
私が持っている常識から推し量ると、このような細い4本の石の柱で、高さ170mの大ドームの重量を保持できるはずがありません。
  
  図                 写真7

私は、この教会の構造として鉄筋コンクリートは採用されていないと想像していました。
石でつくる構造は、圧縮には強いが引張に弱い。石柱などは、だるま落としを高くしたようなものです。簡単に崩れてしまいます。これに対し、鉄筋コンクリートとすると、引張にも強くなります。
鉄筋コンクリートの鉄筋は鉄ですから、本質的には酸化して錆びていくはずです。しかし鉄筋コンクリート中の鉄筋は錆びません。理由は、鉄筋のまわりのコンクリートがアルカリ性だからです。単純化して、ここではCa(OH)2がアルカリ性を示すとしましょう。
一方、空気中の炭酸ガスがコンクリートの中に浸透し、コンクリート中のCa(OH)2は徐々に炭酸化してCaCO3に変化します。表面から炭酸化が進みます。炭酸化した部分は、もはやアルカリ性ではありません。
表面からスタートした炭酸化が内部まで進み、鉄筋部分まで達すると、その時点から鉄筋は錆び始めます。鉄は錆びると膨張し、周囲のコンクリートを破壊します。これが鉄筋コンクリートの寿命です。大体100年程度です。

サグラダ・ファミリアは着工からすでに100年以上が経過し、完成はまだまだ先です。完成しても1000年以上の寿命を想定しているはずです。そうであれば鉄筋コンクリートを採用するはずがない、というのが私の想定でした。

ところが、サグラダ・ファミリアは鉄筋コンクリートを採用しているらしいのです。本にもそう書いてあります。また、実際に工事中の部分で鉄筋が露出しているところをこの目で見ました。例えば下の写真8や上の写真4。

 写真8

サグラダ・ファミリアの謎は深まるばかりです。
(1) 高さ170mの大ドームを、あんな細い4本の柱で支えられるはずがありません。石柱であれば当然、中に鉄筋が入っていても無理でしょう。
(2) 鉄筋コンクリート構造物は寿命100年であり、1000年以上持たせようとする構造に使えるはずがありません。しかし使っているらしいのです。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする