弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

先使用権に対する誤解

2006-06-22 00:07:18 | 知的財産権
ちょっと古新聞ですが、日経新聞は、特許の先使用権を以下のように紹介しています。
「特許庁は技術情報の海外流出を防ぐため、出願しなくても先に発明したことを証明すれば自らの知的財産権を守れる「先使用権」の活用を企業に促す。」

こんな間違った情報を国民に流したのでは、困ったことになります。

「先使用権」というのは、他人の特許出願以前にその発明について「事業をし、またはその事業の準備をしてる」場合にのみ認められるものです。
従って、その他人の出願より先に発明をしていたことを証明したのでは足りず、先に発明の実施の事業またはその準備をしていたことを証明しなければなりません。

特許庁は1年ほど前、「先発明権」(フランスのソロー封筒のようなもの)の創設を働きかけたことがあります。しかしこの件については反対が多く、法改正には至りませんでした。
その議論の過程で、「現行法の先使用権について、使いやすいようにガイドラインを設けよう」ということになり、そのガイドラインも今回発表されました。しかしあくまで「現行法の先使用権」であって事業またはその準備が要求されるのであり、「先発明権」ではありません。
この違いを特許庁はきちんと説明しなければならないのですが、日経新聞の記者が勘違いしたところを見ると、あまり明確に説明していないのでしょうね。

特許庁は264ページからなる先使用権制度ガイドライン(事例集)を6月16日に発表しました。この内容については別途論じたいと思います。
コメント
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