豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

ペンキマーク依存症・・・

2011年10月08日 | 道迷い遭難を防ぐシリーズ
パトロール中、時々見かけるのですが、ペンキマークで丸が書いてあると、ロープで立ち入り禁止にしておいてもまったく意に介さずホイホイと行ってしまう登山者がいるんですよね。





この前の夏ですが、私は北アルプスの通称「天狗の大下り」で登山道整備をしていました。そこは鎖が張ってあるのですが、いつのまにか岩を巻いて通る踏み跡ができてしまったため、そちらのほうをきっちり整備して安全に通行できるようにしたのです。


余談ですが、ここに張ってある鎖はその昔、小生が唐松山荘からわざわざザックに入れて運んできたものです。こんなクソ重たいものをもって唐松岳に登り、不帰キレットの難所を越え、さらに天狗の大下りを登り返したんですね。今から思うと「ヘリコプターで現地に直接運べばいいのに」と思うのですが、なんかいろいろ事情があったんですね。ちなみに私の場合は行きだけでよかったのですが、先輩は帰りもクソ重たいハンマードリルを持って天狗の大下りを降り、不帰キレットを越えて唐松岳に登り、唐松山荘にその機械を戻していました。

さらに余談ですが、この鎖を設置してからまもなく、この岩場で転落した登山者がいたんですね。で、その時私は丸山ケルンの下にいたのですが、そこから出動となったわけです。八方尾根を稜線まで登り、唐松山荘でロープとかいろいろ準備してから唐松岳に登り、不帰キレットの難所を越えて、さらに天狗の大下りを登り返したわけで、到着時には先輩隊員と遭難者が待ちくたびれていました。もちろん私は、死にかかりました。


そんな歴史的経緯があるものですから、ここの鎖場は我が人生において相当なアレがあるわけですね。そこで、これを契機に鎖場を封印してしまおうと思ったわけです。話が長くて済みません・・・・







とまあ、上の画像のようにグリーンロープやトラロープを張って鎖場を通るラインを通行止めにして、踏み跡の方を通るようにします。大量の土砂が踏み跡にたまっている上に道具がピッケルしかないので大変でしたが、なんとか作業完了です。

その後、ロープを越えてからナイスな感じの岩に腰を下ろし、弁当を食い始めたのですが、そこにひとりの男性登山者が通りかかりました。「こっちは通行止めにしたので、そこから降りていってください」と話かけてみると、その男性はうなずいてから踏み跡の方に入っていきます。やがて岩の陰に、その男性は隠れました。




が、





弁当喰いながら下の方を見ていると、その男性が岩陰から再度登場した挙げ句、こっちに向かって登ってくるではありませんか・・・・。



「おーい、どこを登ってきてるの?そこは立ち入り禁止でロープ張ってあるでしょ!」と呼びかけるとその男性は、「えっ!そこにペンキマークで丸が描いてありますよ?!」と、目を丸くしながら立ち入り禁止エリア内にあるペンキの丸マークを指さしています。








「マーキングが描いてあったって、そこはロープ張ってあるでしょ?それにロープの真下にはペンキで塗ったばかりのバッテンがあるでしょ?」と呼びかけても反応が鈍いので、「それにもうちょっと登山道の先を見なさいよ!ペンキマークがベタベタ塗ってあるでしょ?登山道が下に延びてるのが見えるでしょ?だいたいアンタ、ここは下りなのに、登ってることに対して疑問を感じないの?」と、実にしつこくネチネチと語りかけたら、ようやく理解してくれたようです。

で、理解してくれたのはいいのですが、強度なんぞ考えず適当に張ったグリーンロープに全体重を掛けて岩場を降り始めたものですから、「おーっ!そんなもん掴むな!!」と、思わず絶叫してしまいました。




冒頭にも書きましたけど、ペンキマークで丸が描いてあると、そこがどのような場所であろうと、平気で突っ込んで来る人を頻繁に見かけます。で、そういう登山者に注意すると「えっ?そこにマーキングありますよ???」と、普通に回答するんですよね。また、その手前に同じペンキでバツが描いてあっても、グリーンロープやトラロープで規制してあっても、そのロープに「立ち入り禁止」と書いた看板をぶら下げていても、ペンキマークで丸が描いてあると、アレな登山者は突っ込んできます。これは本当に不思議です。




もしかしたら、ダメと言われれば言われるほど、ヤリたくなるんですかね。あるいは立ち入り禁止と言われれば言われるほど反発したくなるとか、そういうのがあるのでしょうか?





よく登山客から「ペンキマークが少ないから道がわからん」とか「ペンキマークがありすぎてよくわからん」とかクレームを受けることがあって、なんとかしようとは思うのですけど、一方で「そんなもんに頼って山を登るなよ」とも強く思うんです。

ペンキマークで丸が描いてあるのを見つけると、人は安心します。が、それって安全を保証するものでも何でもないんですよね。例えば目の前にマーキングされた岩があるとき、次のマーキングがどこにあるのかをしっかり確かめて歩くのなら、マーキング頼りに行動してもわりと安全に行けるでしょう。しかし、多くの人は、なんとなくマーキングを見てるだけです。「マーキングが見つからないなあ」と思って少々不安になっても、何かするわけでもなく淡々と歩き、山小屋に到着してから小屋番に文句を言うのです。



適切に設置されたマーキングはアナタが正しい登山道の上にいることを教えてくれます。バツのマーキングは「ここに入るな!」というお知らせですが、そのマーキングが見えるということは、アナタが正しい登山道の上にいる、ということです。

一方、マーキングはアナタが間違ってるということをなかなか教えてくれません。なぜなら登山道を外れたところには、マーキングが無いからです。なんか禅問答みたいですけど、マーキングが見当たらなくて不安になった時には、そこがちゃんとした登山道なのか、それとも道から逸脱しちゃってるのか、しっかり確認しなければいけないのです。それをせずにダラダラと歩いてるようでは、マーキングの意味は無いと言えましょう。










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7 コメント

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Unknown (h)
2011-10-08 18:14:04
あの鎖ってば兄貴が設置したものだったんですね。ありがとうございます

ペンキマークをつける側になると分かるんだけど、ただ登山しているだけではそこまで分からないかも。地形と登山道との関係とか、考えながら歩いたりしないよな
あと、記事中にもあるけど、ロープとか鎖依存症てのもあって。鎖だろうが、トラロープだろうが全力で体重をかけて引っ張って上り下りする登山者がいる。ロープにはそっと手を添えるだけで、バランスとるためにあるんだよ、切れたり抜けたりしたら終わりだべ、っていっても分かってもらえない
長くなるけど、もういっちょ。アイゼン依存症。美濃戸口から赤岳鉱泉にいくのにアイゼンはいらんやろ。みんなとはいわないけど、多くの登山者が高低差の少なくトレースのきっちりある雪道でアイゼンをつけてる。アイゼンってば、キックステップが必要な傾斜の斜面や凍った稜線でつけるものだと思うんだけど
ヤマケイ (たぬたぬ)
2011-10-19 09:16:56
今月号のヤマケイを見ていたら、「どっかで見たことある記事なぁ~」という記事が・・・!

ペンキマーク見落としは読図以前のレベルかもしれませんね。
Unknown (bongo-pete)
2011-10-19 12:06:29
たぬたぬ様

今年に入ってからあそこに3回書いているんですけど、指摘されたのは初めてです。
Unknown (たぬたぬ)
2011-10-19 16:56:42
え・・・3回目!?
それは分からなかったです。。。(汗
Unknown (bongo-pete)
2011-10-19 22:07:47
たぬたぬ様

4月号の「山の論点」と、7月号の「読図以前の道迷い防止技術」という記事を担当しています。
やはり! (カモノハシ)
2011-10-21 23:31:07
神戸に住んでる貴blog愛読者です。
4月号山の論点、やはりピート様でしたか。筆致というか、論調・論点というか、ピート様を彷彿とさせるなにかがあり、気になって(?)おりました。
ご本人から言明があり非常にすっきりした気分です。
これからも 論評・blog等、楽しみにしています。
Unknown (bongo-pete)
2011-10-22 00:21:46
カモノハシ様

やはり、モヤモヤぐらいは感じてらっしゃる方がいたんですね。個人的には写真がブログでも使われていたものなのでバレバレかと思っていたのですが・・・・