豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

ガイド登山における下見について

2007年10月16日 | ツアー登山、ガイド山行
私がガイドをしていた頃、必ず、例外なく行っていたのが、下見です。若干ズルしたケースもありますが、初めて登る山はもちろん、何度も登っている山でもコースが違う場合には必ず下見をしていました。また若い頃に登ったけど、それから何年も登っていない場合もです。




断っておきますが、これは別に安全対策でも何でもありません。第一、下見をしなければお客さんを安全に引率できないというのでは、ガイドの資格ないです。下見には少なからぬお金が掛かりますから、ナシで済ませたいのがホンネです。





お客さんは「ガイドさんは、この山に何度も登っていて詳しい」と思いこんでいます。ですから、それを前提にガイドという存在を見るのです。だからガイドとしても、その山をよく知らないようなムードを見せるわけにはいきません。

例えば・・・

登山中、10メートルぐらい間違った方向に進むのは、ま、よくあることでしょう。間違いに気づいてすぐに引き返せば、何の問題もありません。しかしガイドツアーでそれをやると「あのガイド、道を知らないのでは?」と思われてしまいます。思われるだけならいいのですが、それがクレームとなってツアー会社に行ってしまい、ツアー会社から「あなたは道を間違えたのですか??」と、まるで遭難したかのように問いつめられるのです。


私はガイドをやる前からソレを知っていたので、ちょっとでも間違えそうなポイントを確認するために、下見山行は欠かしませんでした。お客さんの前では、迷う素振りも見せてはならないのです。

私は1度、「道を間違えた」というクレームを食らったのですが、そのツアーでは道を間違った記憶がありません。で、よくよく考えると、お客さんが楽に歩けるように段差の少ないところを選んでジグザグに歩いたのが、クレームの元なのかもしれないと思いました。それ以外に思い当たるフシがありません。

幅広い尾根の登りだと、ルートはいくつも取れます。で、そういう場合、私は時々先行して登山道を観察しながら「こっちが楽」だとか「やっぱり、向こうから登って」とお客さんに指示を出すのです。しかし、これをもって「あのガイド、道知らね~」と言われては、どうしようもないですね。このクレームで詰問された時「次に登る時は、いっそのことガンガン直登してやろうか!」と、少々怒りを感じながら弁明したものです。

下見では他に危険箇所のチェックなども当然行いますが、別にこんなもん、下見するほどのことではないと思っています。その場その場で判断できて当然ですから。せいぜい「いかにして危険箇所を短い時間で通過するか」を研究しておくぐらいですかね、下見に意義があるとすれば。



私のように東京に住んでいてあちこちの山を案内させられる立場だと、下見で山を登るのは経済的に大変です。

私の場合、ガイドになった当時は北アルプスはよく知っていました。が、北アルプスの登山シーズンは夏であり、その時期はパトロールで入山しています。そんなわけで専門分野の北アルプスをガイドすることは少なく、南アルプスや奥秩父ばかりになります。

甲斐駒も仙丈も北岳も間の岳も農鳥も登っていますが、もう10年近く前の話です。当時は初心者ですから、登山道の状況なんてまったく覚えていません。ですから、南アルプスを案内することが決まった時、全部登り直しました。

金峰山は何度も登った山で冬にもやっていますが、コースはいつも増富温泉からの往復です。で、もらった仕事は廻り目平から登るコースの案内だったので、泣く泣く下見に行きました。

甲武信岳も季節を問わずあちこちから登っていますが、モウキ平から千曲川源流に沿って登るコースだけはやっていません。で、もらった仕事は千曲川源流コースだったので、虚しさを覚えながら登りました。

で、これで下見は終わりかな?と思ったら、金峰山と甲武信岳を縦走する仕事をもらってしまい、再び廻り目平から金峰山にテントを担いで登り、初雪が降る中を寒さに震えながら縦走し、甲武信岳へ抜けました。



ガイドを始めて1年~2年目は、本業であるライター業と、ガイド山行の合間をぬって、下見の山登りばかりしていて忙しかったです。下見はもちろんお金をもらえません。それどころか自腹です。せっかくガイドで稼いでも、半分は下見に持って行かれたような気がしますね。時には、下見したのにお客さんが集まらなくてツアー中止という、泣くに泣けないこともありました。この時ばかりは、「うかつにガイドなんか引き受けるんじゃなかった!」と後悔しました。


3年目になると、さすがに下見が必要な山を案内することはなくなりました。奥地秩父や南アルプスでメジャーなコースは登ってしまいましたから。「これでガイド業は黒字転換だ!」と喜びましたが、今度はツアーが成立しません。ツアー会社の営業努力が足りないのかどうか知りませんが、キャンセル率がハネ上がりました。

キャンセルも早めにわかればいいのですが、数日前に判断が出ることが多いので本業の予定を入れるわけにはいきません。で、キャンセルになると遊んでいるしかないのです。


そんなわけで、ガイドは3年目で辞めてしまいました。



でも、ガイドは楽しかったですね。その時の経験が現在の遭難防止活動にも役立っていますし・・・・

いずれ再開したいとは思っていますが、もうツアー登山はやりたくないです。個人で集客して、一般には公開できない、危ない遭難ネタをお客さんにぺらぺらしゃべりながら歩きたいですね。



↑この記事が参考になる、面白い!と思ったらクリックしてください。ランキングサイトです。




4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (とべとべ)
2007-10-16 11:49:57
ガイドさんとの思い出なのですが・・・

私はガイドツアーには参加したことないのですが、朝日連峰で、個人で遊びに来ていたガイドさんと知り合ったことあります。

私自身、山を始めたばっかりでしたが、MACPACのザックはガイドが皆使っているいいザックだと薦めてもらって、帰宅後に、四谷のデナリに買いに行きました。

今では、MACPACなしでは、テント泊には行けない位に体の一部となっています。

その他、そのガイドさんからいろいろ面白い話を聞かせて貰ったのが記憶に残ってます。
返信する
Unknown (bongo-pete)
2007-10-17 03:15:28
ガイドの人だとカリマーが多いような気がしますね。Macpacも最近よく見かけます。

そんな私はロウアルパインですが・・・・・





返信する
ガイド (北あかり)
2007-10-17 11:28:42
>個人で集客して、一般には公開できない、危ない遭難ネタをお客さんにぺらぺらしゃべりながら歩きたい

ぜひお客になりたいです(笑)。

私はたぶん、貴方の以前のHPを読んでいたような気がします。
確証はないけど。
返信する
Unknown (bongo-pete)
2007-10-17 19:57:39
何というか、単にガイドとして連れて歩くだけでなく、教えるのが好きなんですよね。教えることは初心者の発想がわかりますから、自分にとっても勉強になります。

ブログを始める前にはサイト持っていましたけど、作業が面倒なんでなかなか更新できなかったですね。

返信する