豊後ピートのブログ

元北アルプス南部の小屋番&夏山パト十数シーズン経験。今はただのおっさん

富士山救助ミス落下の判決文を読んでみた その2

2019年03月08日 | 遭難と救助について考える
さて、前回の続きです。

静岡市消防は午後4時2分に現場へ降下しています。この時、上空の風は風速10メートル程度であり、極端な乱気流は無かったようです。静岡県警が現場を離れる前に「時折、下降気流がある」と伝えていますが、判決文には特に問題があったようなことは書かれていません。

で、降下隊員はDSVを遭難者に装着しますが、下半身がブリザードパックに覆われているため、股下シートを取りだしたものの、股間を通さずに両膝下に回してからホイストフックのカラビナに掛けています。

装着完了すると降下隊員は遭難者を両足で挟み込んでホールドし、同時にワイヤーの巻き上げも開始します。ヘリコプターも現場から離れていきました。そしてホイストのワイヤーが残り4センチとなったところで巻き上げを止めましたが、この時に機内でホイストの操作を担当していた隊員は、遭難者の位置がやや低いと感じたようです。

ホイストを操作していた隊員は遭難者の背後から両腕を脇の下に通して引き込み、降下隊員は左手で機体の取ってをつかみ、右手で遭難者の身体を押し込むような感じで機内に収容しようとします。が、ここでなぜか遭難者の身体を機内に引き込むことができません。これについて被告である静岡市消防も、原告側も、引っかかりの原因については断定していませんが、裁判所の判断では遭難者の足背部、つまり足の甲がスキッドに引っかかったと述べています。

裁判所がこのような判断を下したことについて、この判例を読む限りではよくわかりません。裁判において何らかの検証作業が行われたのかもしれませんが、一番不思議に思うところなので詳細が見られないのは残念です。

静岡市消防のヘリコプターではスキッドの外側からホイストを吊り上げるようにしているので、足の甲が引っかかるというのがどうもよくわかりません。昔の長野県警ヘリのように機体とスキッドの間を遭難者が抜けていくのであればわかるんですけどねえ…。運輸安全委員会による調査が行われていれば、こういった部分も普通に検証されて公開されたでしょう。ちなみに事故当時、静岡市消防が公開した再現画像が以下のリンク先で見ることが可能です。

消防広第283号(PDF)

この時、消防隊員には遭難者の身体が引き込めない理由がよくわからなかったようです。遭難者の足下は隊員から見て死角にあり、引っかかっているのが見えませんでした。それよりも降下隊員が遭難者を押し込む力が入ってないからだと考えた機内の隊員が、DSVの背部にある取っ手をつかんで引っ張ってしまいます。

ホイストの巻き上げを止めた時点で遭難者の位置がやや低かったと述べられていますが、おそらくこの時には足が引っかかっており、さらにDSVにも力が掛かっているはずです。よってDSVそのものを引っ張ったら、スッポ抜けてしまうでしょう。遭難者はスリングから外れた状態になり、2人の隊員が遭難者の身体をかろうじて保持している状態になってしまいました。判決文によると、機内にいる隊員はかろうじて遭難者の襟をつかんでいる状態とのこと。パイロットは急いで安全に遭難者を下ろせる場所を探して移動しますが、ついに4メートルの高さから落としてしまいます。

遭難者を落下させた後、収容をあきらめてそのまま帰投したのだと私は思っていましたが、判例を読むと午後4時14分に再度隊員が降下しています。この時もDSVを使用し、ホイストカット無しでの救助を選択しています。が、それまでの疲労と低酸素により、なかなか装着ができなかったと書かれています。さらに気流の乱れが発生し、右のスキッド後部が3度ほど斜面と接触したことが記載されています。そこで機内の隊員は一旦現場を離れて機体が安定するのを待とうと考え、降下隊員にホイストカットの指示を出します。が、降下隊員はこの指示が疲労によってよくわからなかったようで、DSVの装着ができないというサインを送り続けます。ここでパイロットとホイストを操作する機内の隊員は救助をあきらめ、遭難者を現場に残したまま降下隊員を吊り上げて帰投するのです。

この時に気流さえ安定していれば、救助ができたかもしれません。よくよくの不運が救助チーム及び遭難者に降りかかったのだと、ため息が出ます。


登山・キャンプ ブログランキングへ

この記事についてブログを書く
« 富士山保全協力金って、マヌ... | トップ | 国内最後のラマが登録抹消 »

遭難と救助について考える」カテゴリの最新記事