豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

唐松岳から五竜岳へ行く時は

2008年09月05日 | 白馬岳など北アルプス北部ネタ

八方尾根から唐松山荘を経由して五竜へ向かうコースは人気ですが、唐松山荘を出てすぐに長く険しい岩場があることは意外に知られていません。そんなわけで、予備知識無しにここを通った人の多くが、


「こんな岩場があるなんて、聞いてないよ~」


という反応を示します。まあ、それもまたサプライズってわけで、登山のおもしろさと言えるでしょう(強引)

ただ今シーズンは転落事故が2件もありましたし、ダブルストックのまま特攻してアクロバティックな登降を見せてくれる人が多いもんですから、ここでちょっとこの「牛首の岩場」について語っておきたいと思います。



この牛首の岩場は、唐松山荘を出て5分もしないうちに始まります。で、赤っぽい岩の痩せ尾根が長々と続き、また信州側は非常に急斜面ですから、転落したら確実に死にます。富山側も部分的にかなりの傾斜があり、落ちたらタダでは済みません。

晴れているときはずーっと下まで見えるので、かなりの高度感です。なんでこの岩場が難所として知られていないのか、今でも不思議に思います。

途中に幅広い尾根があって必ずしもずーーーーっと鎖場が続くわけではありませんが、断続的にヤバいところが出てきますので、ストックを利用している方は唐松山荘出発前にしまっておいたほうがよろしいでしょう。

で、下の画像にあるような看板が設置された岩場を越えたら、ストックを出しても大丈夫です。ここから五竜山荘まで、岩場や鎖場はありません。通常、唐松山荘から1時間ぐらいでしょうか。ちなみに地元の山岳ガイドなら、唐松山荘出発時にストックをしまうようお客さんに指導するケースがほとんどです。





看板は今年、私が設置したものでして、「転落多発」というのはマジです。牛首の岩場で今シーズン起きた2件目の事故はココでしたし、数年前にパトロール中、ここで転落を目撃したことがあります。この看板を設置中、

「これって脅しかい?」

と聞いてきた失礼な登山者がいましたけど、つまんない脅迫のために手間暇掛けて看板作り、わざわざ山を歩いて設置なんかしません。山を歩いていて「落石注意」とか「転落注意」なんて看板がある場合、そのほとんどは実際に落石があったり事故った場所だったりするわけで、もしかしたら死亡事故現場だったりするわけです。だから看板の注意書きは、ナメてはいけません。

同様に、簡単に通過できるけど鎖が張ってあるなんてケースは、やはり死亡事故が起きた場所だったりします。牛首の岩場にもそういう理由で設置された鎖がありますけど、どこなのかは内緒です。

ここで付け加えておきますが、この黄色い看板は今シーズンに設置したばかりなので、来年の夏までには風雪で吹っ飛んで無くなっているかもしれません。そんな時のために、横にある黄色い矢印マークを覚えておきましょう。


この看板がある岩場を登るとすぐに楽な岩場の下りなのですが、ここでザックを引っかけたりなんだりで転落するケースがあります。楽そうに見えても、なるべくなら後ろ向きになってキチンと下ってください。ここで転落すると信州側にいってしまうのですが、古い登山道の跡が残っているので大抵は止まります。ただ、そこで止まらない場合、どうなるかはわかりません。


この岩場を通過すると、やがてハイマツ帯の中をつづら折れになって下ります。落雷が接近している時にはここでの待避がオススメなんですが、あまりにも雨が強いときには登山道でプチ土石流が発生しますので注意してください。

下りきったところから大黒の短い登りがあり、ピーク直下をトラバースしてから少し長くて急な下りがあります。小さな池を過ぎたあたりから五竜山荘への登りが始まりますが、けっこうダラダラで長いです。


八方尾根から五竜へ向かう場合、最低でも午後2時までには唐松山荘を出るようにしてください。それ以降だと到着が午後5時を過ぎ、ちょっと遅いです。昼前に通過するのがいいですね。


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