豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

丹沢でも山小屋へのAED導入が進行中

2009年03月11日 | 遭難と救助について考える
中高年登山者も安心、山小屋にAED配備/表丹沢
神奈川新聞  2009/03/10


表丹沢では昨年、20件の遭難事故があり、そのうち2名が死亡しているのですが、死因は2名とも心不全なのだとか。

引用
昨年一月に塔ノ岳山頂の尊仏山荘と鍋割山山頂の鍋割山荘に設置。今年に入り、二月に大倉尾根の花立山荘、堀山の家の二カ所に配置した。いずれも配置前には山小屋関係者が、秦野市消防の指導で、人工呼吸の仕方、AEDの扱い方、管理方法などを学んだ。
引用おわり


上記リンク先には堀山の家に設置してあるAEDが掲載されていますけど、これならバッチリですね。窓からAEDそのものが見えていますから、速攻で見つけられます。



それにしても、この報道ですけど、「中高年登山者も安心」というタイトルはなんとかならんものでしょうか。AEDは確かに救命率を上げていますけど、設置しただけで安心ってのはかなり言い過ぎですな。

病院以外の場所で心停止した人が助かる確率は、数%です。ヒトケタパーセントですね。これは救急車が走行可能な下界での話ですから、レスキューに時間がかかる山の上では、もっともっと低くなります。

例えば、山の稜線で心停止した人がいたとします。運がいいことに山小屋が近くにあってAEDが置いてあったとします。それでも助けられる確率は、相当低いでしょうね。仮に天候が悪くてヘリコプター飛べない、なんて状態だったら、どうしようもありません。背負い搬送しながらAEDとか心臓マッサージなんて、無理ですもん。

AEDを誰でも使えるようになり、実際にAEDによる蘇生例が報道されているので、AEDさえあれば全員助かるみたいな勘違いをしている人も多いですけど、「安心」というには程遠いですね。




ところで、世の中にはAEDをどこに設置したら効率的か、なんてことも研究している人がいて、なかなか興味深いです。

何でも、自宅に設置した場合、使用頻度は1000年に1回だそうです。で、一番使用頻度が高いのは駅であり、1年間に使われる可能性は0.3回となっています。これはまあ大きな駅も小さな駅も含めた数字でしょうけど、参考にはなります。その次は病院、老人ホーム、ゴルフコースという順番です。

山小屋だと、どのくらいの数字になるのでしょうかね。上記のリンク先によれば、アメリカだとフィットネスクラブも使用頻度の高い場所となっています。ハードに肉体を使った人が大量に宿泊する山小屋も、けっこう使用される可能性が高そうな気がしてきました。とはいえ、導入には数十万円かかりますから、うまいことレンタルしてくるか、行政に補助してもらわないと、規模の小さい山小屋では二の足を踏むでしょうね。




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2 コメント

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Unknown (ばぎー)
2009-03-12 00:17:57
AEDの配備より より多くの登山者がCPRを習得する事の方が救命率向上には有効だと思います。
心マだけでも全然違うらしいですしね。
登山の心得パンフに人工呼吸用マスク付けて無料配布、どうでしょう?
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Unknown (bongo-pete)
2009-03-12 18:23:25
ばぎー様

AEDの到着に時間が掛かる場合には、CPRが有効みたいです。山だと概ね、そうなるでしょうね。

人工呼吸は不要というのが最近の流行なのですが、必要論にも根強いものがあります。最近では腹式人工呼吸なんてのも出てるみたいです。

この分野もけっこう進歩が早くて、どんどん常識が変わっていきますね。
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