豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

遭難者の登山届提出の割合が少ないのは「お忍び」登山が原因、では無さそう

2020年11月20日 | 遭難と救助について考える
そもそも「お忍び」という言葉は高貴な方や有名人がこっそりと外出するという意味だったはずなので、よりによって読売新聞がこういう表現をするのはいかがなものかと

後ろめたいから?7割が登山届出さず…「お忍び」で低山登り、遭難相次ぐ
読売新聞  2020/11/19 09:19

引用
登山届の提出割合が低いのも今年の特徴だ。昨年(4~9月)は遭難者の45・8%が登山届を提出していたが、今年(同)は26・8%にとどまる。特に8月は17件の遭難が起きたが、提出があったのは2件だけだった。
引用おわり

登山届の提出率が低いのはなぜなのか。
引用
県警幹部は「外出自粛が求められる中、登山をすることに後ろめたさを感じ、登山届を出しにくい心理が働くのかもしれない」と推測する。
引用おわり

という記述が出ていますけど、果たして本当にそうなのでしょうか?

記事中に「山岳遭難件数と登山届け出数の推移」というグラフが出ています。これを見ると特に8月は遭難者のうち登山届を提出していた人が、昨年と比較して少ないことがわかります。しかし、このことからコロナ自粛の影響で登山届を出さずに「お忍び」登山をする人が増えたというのは、いささか短絡的ですな。

記事の初めの方に出ていますが、今年、山梨県内で発生した山岳遭難の9割は低山です。富士山が入山できなくなり、南アルプスも山小屋の休業などで入山が困難になった結果、7~8月であればその山域で多発するはずの遭難がほとんどありませんでした。で、このことが登山届の提出率に大きく影響したのだと思います。

低山では登山届を提出するための登山ポストが必ず登山口にあるわけではないので、スルーされてしまうのでしょう。グラフの10月の箇所を見ればわかると思いますが、昨年と今年の遭難件数がほぼ同じです。そして登山届の提出率も似たり寄ったりです。10月になれば富士山や南アルプスに登る人はうんと減るはずなので、事故のほとんどは低山での発生だと推測できます。

もうひとつ傍証を紹介しましょう。山梨県のウェブサイトである山梨の登山・山岳情報ポータルには登山計画書の提出についても出ているのですが、ここに「登山計画書受理状況」というのがあります。平成30年から令和2年までの登山届の受理状況がわかるのですが、これを見ると登山届がメール・FAX・郵送・コンパス・登山ポストのいずれかで受理したのかがわかるのです。

この統計から8月の部分だけを抜き出してみます。

      コンパス  登山ポスト
令和元年  2998    7227
令和2年  2785    3727

コンパス経由で提出された登山届の数はほとんど変わりませんが、登山ポスト経由だと昨年のほぼ半分に減少しています。登山が後ろめたいというのであればコンパス経由の登山届も大きく減少しても良さそうですが、登山ポスト経由ほどには減っていません。つまり登山口に登山ポストが無いか、あるいは「低山だから登山届はいいや」ということで提出数が減ったのでしょう。

実際、春頃は登山の自粛でいろいろあった感じですが、8月に入れば皆さん、わりと普通に登ってましたよね?

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