豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

八ヶ岳で発生した道迷い遭難事例

2019年07月25日 | 山岳遭難
道迷い遭難では、どこから登山道を外れたのかがわからないケースが多いです。ですから、以下で紹介する記事のように、道迷いが発生した地点がよくわかる画像は貴重かもしれません。

道迷い遭難を防ぐためにできる3つのこと 島崎三歩の「山岳通信」 第155号/島崎三歩の「山岳通信」
ヤマケイオンライン


引用
7月14日、八ヶ岳連峰赤岳で、60歳の女性および29歳の女性が、美濃戸口から赤岳へ向けて登山中にルートを誤って道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。茅野署山岳遭難救助隊及び諏訪地区山岳遭難防止対策協会により2人は救助された。
引用おわり

画像を見てすぐ目につくのが、迷い込み防止のために張られたロープです。2人パーティは、ここを通過しちゃったわけですね。

この画像を見て推測できる道迷い発生の状況は、以下の要素が考えられます。

1 ロープの存在に気づいてはいるけれど、登山道と平行する沢が正しいルートだと思い込んでいるので、そのまま進んでしまった
2 ずっと足下ばかり見ているために、ロープの存在に気づかないまま沢へ入り込んでしまった。また、正しい登山道が見えていなかった


現地で実物を見てみないとなんとも言えませんが、ロープの位置がちょっと高いような気がします。北アルプス北部でもロープが張られているのにルンゼに入り込んで遭難したケースがありましたけど、そこもロープがやや高めに張られていました。

とはいえ、目印のリボンがぶら下がっていますし、普通はこんなところで間違えることはないでしょう。このルートで登山者の10人に1人が道に迷って救助要請してくるというのであれば危険と言えますけど、99.99%の登山者は何事もなく通過しているはずです。



画像左下の位置から登山道が始まっていると思われますが、この地点から普通に顔を上げて前方を見ればピンクのリボンが見えるでしょうし、登山道もはっきりわかるはずです。が、この地点に差しかかる前からずっと足下を見続けていたら、視界に入ってこないでしょう。そして、ふっと顔を上げた時に沢ががっつり見える方向に身体が向いていたら、そっちを正しいルートだと思いこんでも不思議ではありません。ガチで考える道迷いシリーズでは、壊れたように前見ろ前見ろ言っていましたけど、この事例を見ればわかってもらえると思います。

そしてもうひとつ。うっかり沢の方へ入り込んだとしても、登山道の識別ができていれば、遅くても数歩進んだだけで間違いに気づくはずなんです。正規の登山道は明らかに洗掘(わからん人はこちら)が進んでいるので、見分けが簡単につきます。
また足下を見ても容易にわかると思います。美濃戸口から赤岳に向かう登山道なんて、それこそ百万人以上の登山者が通過しているでしょう。一方、沢の方は滅多に人が通らないはずです。大勢の登山者が通過すれば、登山道にはその痕跡が残るのです。そういう視点から登山道を見る習慣をつけていれば、違いははっきりわかるでしょう。

登山道の識別は、大切な技術です。上記で紹介した記事では八ヶ岳と前穂高岳での道迷い遭難が紹介されていますけど、どちらも登っているうちに岩場へ迷い込んで行動不能になっています。識別がしっかりできていれば、岩場にハマりこんで身動き取れなくなるなんてことはありません。道迷いというと、なんとなく深い樹林の中をさまよっているぐらいのイメージしか思い浮かばないかもしれませんが、実際にはとんでもない岩場や急斜面に特攻してしまうケースが多いのです。道迷いの認識がない登山者は、普通の人が見たら信じられないようなところへ入り込みます。

普通に整備され、ガイドブックで紹介されているような登山道で発生する道迷い遭難の原因は単純です。視野の狭さと登山道の識別ができていないことによるものです。足下に視線を集中させず、頻繁に前方を見て歩いていれば、道迷いなんてまず起こらないでしょう。実際に道迷いが発生した地点をいくつか北アルプスで見ていますけど、どっちに行けばいいのかまったくわからん!なんて場所はありません。普通にその場に立って前方を見れば、いやでも正しい登山道が目に入ってくるような場所ばかりです。

ですから、登山者がやるべきことは2つです。まずは頻繁に前を見る習慣をつけること。最初のうちは4歩進むか、十数秒おきにしっかり顔を上げて前方を見るようにするといいでしょう。これがしんどいという人は、スピードを落としてください。そして普段から登山道をよく観察すること。最初は岩場を見るといいかもしれません。ルートになっている部分は登山靴で磨かれますから、そうではない部分とは明らかに違いがあるはずです。その違いを常に意識していると、何気なく歩いている時でも異変に気づきやすくなると思います。樹林帯であれば、先ほど述べた洗掘を学んでおくといいでしょう。洗掘が進んだ登山道はどこにでもありますから、観察場所には事欠かないはずです。


一般的な登山道における道迷いなんて、そのメカニズムを理解できていれば怖くありません。99.99%の登山者が問題無く下山しているわけですから、道迷いなんてほんのちょっとしたことが原因なのです。むしろGPSあるから迷っても大丈夫なんて考えている人のほうがめちゃくちゃ怖いです。


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