豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

山小屋の荷揚げでヘリが墜落 その3

2007年06月09日 | 山を飛ぶヘリコプター
前回の記事に関連して・・・・


毎日新聞だけのようですが、こんな記事が出ています。

ヘリ墜落:つり上げた除雪車傾き、ロープ切る 奥穂高

除雪車を吊り上げた時に傾いたのでロープを切った、となっています。なんだか刃物で切断したみたいな言い方ですが、実際にはヘリコプターの腹にあるフックをフリーにしてモッコを切り離しただけです。それに除雪車を空中投下したわけでもありません(念のため)

通常、荷物の回収は次のような流れになります。
1 ヘリコプターが地上作業員の頭上でホバリング
2 地上作業員がフックにモッコのミミ(輪)を掛ける
3 ゆっくりと上昇する
4 荷物にテンションをかけてみて、極端な傾きや荷物のバラケがないかチェック
5 問題がある場合には徐々に荷物を下ろし、着地した時点でモッコを切り離す

荷物はモッコに入れますので、吊り上げた時に「絞られる」状態になります。この時に圧迫を受けた荷物が飛び出しそうになったり型くずれを起こすことがありますので、テンションを掛けた状態でパイロットがチェックするわけです。

毎日新聞の記事では緊急で切り離したようなイメージがありますが、そういうことは無さそうです。

ちなみに信濃毎日新聞では「後方から風にあおられ、スティック(操縦かん)が限界に達した」というパイロットのコメントが掲載されています。



ところで・・・・・

2002年1月、ヘリコプターによる山岳レスキューの第一人者とも呼ばれる篠原氏が出動中に事故で死亡しています。

参考URL

この時は救助用のモッコ(俗に「赤モッコ」と呼んでいた)を使用していたのですが、何らかの原因により(突風と言われている)モッコの外へ飛び出してしまい、転落死しています。以来、救助用のモッコは使用禁止となり、吊り上げ、またはホバリングによる接地でしか遭難者をピックアップできなくなってしまいました。

救助用ネットによるレスキューが禁止されたと聞いた時、私は疑問を感じたものです。赤モッコの場合、一度に複数の遭難者をピックアップできます。作業も短時間で済みます。吊り上げとなると1回につきひとりしか上げられませんし、ホバリングが長くなります。悪天候下ともなれば、吊り上げに頼るほうが安全性の低下をもたらすように思えます。

今回の穂高岳山荘における事故によって、再び不条理な安全対策を強いられるようなことがあるかもしれません。

東邦航空は前述の赤モッコや片足着地(普通では着地できないところで、ホバリング状態のまま片足だけ着地して遭難者等を機内収容する)など、他のヘリコプター会社や警察・消防が使わない、独自の手段を用います。それは山岳向きの高性能なヘリコプター(古いけど)があること、そして山岳フライトに慣れたベテランパイロットがいるからこそできるわけです。が、それだけに問題が発生すると行政が一律禁止にしてしまいかねません。

ちなみに海外ではこんな方法での救助が許されていますが、日本では許可が下りないと警察の人から聞いた記憶があります。

Aviation Now 航空の現代  スイス航空救助隊REGA

この記事の下の方に、200m以上の長吊りを使ってオーバーハング下の遭難者を救助する方法が出ていますが、日本ではコレができない代わりにヘリコプターがギリギリまで岩壁に接近して、30~70m程度のワイヤーを降ろすわけです。



↓この記事が参考になる、面白い、と思ったときはクリックしてください。ランキングサイトです。↓
にほんブログ村 アウトドアブログへ