豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

積丹岳救助失敗の件が判決確定したので、ちょっとだけ書く その1

2016年12月29日 | 遭難と救助について考える
冬の積丹岳でスノーボーダーが遭難し、それを救助しようとした道警の救助隊が遭難者と一緒に雪庇から滑落したり、あるいはストレッチャーを谷底に落としてしまった結果、遭難者が行方不明になり、後に凍死した状態で発見されるという事故が2009年にありました。これについて「救助隊に過失があったのではないか?」と思った遺族が北海道を相手に訴訟を起こし、先日になってついに道が遺族に約1800万円を支払うという判決が確定しました。

この訴訟については何度も書いてきましたが、あらためて気になったことをいくつか書いてみたいと思います。まずは「善きサマリア人の法」について。積丹岳訴訟の1審判決が出たときはもちろん、最高裁判決でもそうですが、「日本にも善きサマリア人の法」を導入すべきだなんて意見がネットのあちこちで見られます。


「善きサマリア人の法」って、日本だと「良かれと思ってやったことなら、どんなミスがあってもノープロブレム」みたいなイメージですね。しかし実際にアメリカやカナダで州法として制定されている「善きサマリア人の法」は、医療従事者と一般市民が対象であって、勤務中の警察官には適用されません。そのあたりは、そのスジで有名な溝手先生が書いておられます。

山岳救助活動における注意義務

このページの下のほうですが、

引用
よきサマリア人法は、ボランティア行為(無償という意味ではなく、義務を伴わない自発的行為という意味)に適用され、警察官のように職務上の注意義務がある場合は問題にならない。そもそも、公務員は国家賠償法により原則として民事責任を免責されている。また、よきサマリア人法は、警察のような組織の免責には当てはまらない。
引用おわり

と書かれています。


「善きサマリア人の法」をちょっと調べてみたんですが、これはアメリカの州によってその内容にかなり違いがありまして、うっかり「善きサマリア人の法があるから大丈夫!」なんて早とちりをすると訴訟を喰らう可能性があります。例えばアラバマ州法では心肺停止状態の人に対しては医療従事者も一般市民も免責になりますが、それ以外の外傷等だと医療従事者と学校の職員のみが免責になります。またペンシルバニア州法では公式の心肺蘇生講習を受けていないと免責になりません。



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