徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

またまた便乗記事?

 米国はLAXで jetBlue 292 便 A320 が Nose Gear が真横を向いてしまったまま見事な着陸をやってのけ、その着陸時の映像がテレビでも放映され(残念ながら野暮用で忙しくしていたため放映を観てはいません)世間の注目が集まり Landing Gear にやや敏感になっていることに便乗したやっつけ報道ですね。

日航機、Landing Gear、ギア格納出来ず、ATBと一通り素材がそろったら、何が何でも記事にしなければならないのでしょう。特に某社さんは。
まあ、捏造ではない訳ですし、事実関係に間違いは無いのですが、相変わらずペンの力にもの言わせ、細かな表現で読者の心理を誘導しようとしていますね。

こちらも、重箱の隅をつついてあげましょう。
-“離陸直後”
通常運航では、離陸滑走を開始して加速、V1 (離陸決心速度)~ VR (機首引き起こし速度)~ V2 (安全離陸速度)を経て Airborne (離陸)。昇降計が上昇を示し機体が上昇していることが確認できたら、PNF: Pilot Not Flying は "Positive" または "Positive Climb" と呼称し、それを受けて PF: Pilot Flying は "Gear Up" と呼称、PNF に脚格納をオーダーするのが普通ですから、脚格納は“離陸直後”に行なわれるのが当たり前のこと。
殊に伊丹空港は Nise Abatement (騒音軽減)が厳しいので、安全が確認されれば速やかに脚を格納して空気抵抗を減らし(=空気抵抗が減ればその分エンジンのパワーを高度をとるために使える)、安全を阻害しない範囲で出来るだけ早めに高度を稼ぎ、離陸出力から上昇出力へエンジンのパワーを絞り、地上への騒音軽減に配慮するのは、伊丹空港を利用するパイロットなら常識中の常識です。

-“右の主脚が格納されていないという表示が出た”
-“車輪が格納されると消える計器表示が、点灯したままになった”
この文章を補足すると、"Gear Up" をオーダーされた PNF が Gear Lever を Up の位置に動かすと、油圧で、機体の脚格納扉が開き、Landing Gear が機体内部に格納され、脚にロックがかかると同時に格納の際開いた機体の扉が閉まります。この状態になって、Gear Lever の上部に位置する3つの Landing Gear Indicator
 |NOSE|
|LEFT|RIGHT|
の緑の表示が消灯すれば、Landing Gear が Up and Locked になったことを示すので、PNF は時機ををみて、Gear Lever を Up から 中立の OFF の Position に移動させます。

Boeing767_Landing_Gear_Lever

今回は、本来消灯するべき Right のライトが点いたままであったということのようです。
PNF はギア操作を行なえば、この "Gear Up and Locked" の確認は無意識のうちに実施することが日々の運航や訓練ですりこまれていますから、すぐに異常に気付いたことでしょう。万が一、他のオーダーで忙しく失念することがあったとしても、After Takeoff Checklist には Landing Gear ... Up and Locked または Landing Gear ... OFF の項目が必ず含まれていますから、チェックリストにより万一の失念を防ぐ施策がなされています。

-“約20分後に”
この20分間に何が起こったのかの取材がなされていませんね。こういうところに、“無事着陸した”とか“けが人はなかった”とか“日本航空が原因を調査している”などと相まって、本質的な中身が無く単なる便乗で読者の興味を引くだろうとか世論を誘導できるだろう、といったことが如実に表れていると思います。
20分間の間に何が行なわれたかが重要なポイントではないでしょうか。
単に伊丹に戻っただけならば、いくら関西アプローチが輻輳していたとしても20分はかかりますまい。
伊丹か関空で Low Pass して地上から Gear の状態を調べてもらったのかどうか、重要なポイントだと思いますが。特に Indicator が消えなかったのは、Body Gear の Right side ですから、仮に脚に本当のトラブルがあったとすれば、片脚着陸となる可能性もあった訳です。
その件については、“実際に車輪が格納されなかったのか、計器類の故障かは分かっていない。日本航空が原因を調査している”と自社で取材することもせず、中途半端に投げ出してしまっています。
上辺だけでとにかく書きなぐったお粗末な記事と言わざるを得ません。

-“B767―300G型機”
300G?不勉強だったらすみません。初めて聞く型式です。
私が知っている Boeing767 の型式(および First Delivery and Service Airline )は、
 -200 (1982/08/19 United Airline),
 -200ER (1984/03/26 El Al)
 -300 (1986/09/25 Japan Airline)
 -300ER (1988/02/19 American Airline)
 -300F (1995/10/12 United Parcel Service)
 -400ER (2000/07/20 Continental Airlines)
だけなのですが....。



日航機、大阪に引き返す 車輪格納確認できず (朝日新聞) - goo ニュース
 24日午前9時5分ごろ、大阪(伊丹)空港を離陸直後の福岡行き日本航空2051便(B767―300G型機、乗客・乗員144人)で、機体右側の車輪が格納されると消える計器表示が、点灯したままになった。同便は引き返し、約20分後に同空港に無事着陸した。けが人はなかった。乗客は他社便で目的地に向かう予定。実際に車輪が格納されなかったのか、計器類の故障かは分かっていない。日本航空が原因を調査している。

2005年 9月24日 (土) 11:48
大阪発日航機引き返す、「主脚が格納されない」と表示 (読売新聞) - goo ニュース
 24日午前9時5分ごろ、大阪発福岡行き日本航空2051便(ボーイング767―300G型機、乗員・乗客144人)が大阪空港を離陸した直後、右の主脚が格納されていないという表示が出たため、同空港に引き返した。けが人はなく、機体に損傷もなかった。
 同社は、誤表示か実際に主脚が出たままだったか調べている。同機は欠航となり、乗客は他社便などに振り替えられた。

2005年 9月24日 (土) 12:04
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