徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

A300/A310 来年夏で生産中止

 このところ、時代の変遷を感じざるを得ない話題に事欠かないようです。

エアバス社のA300/A310が2007年7月をもって生産中止されることが発表されました(3月7日:フランス時間)。

エアバスA300と言えば、日本では当時の東亜国内航空が導入して現在もJALD(日本航空ジャパン)で活躍中です。最初に導入したA300B2/B4はFEも乗務する3メンクルーの機材で、その後導入されたA300-600RはFMSも備えたグラス・コックピットで、運航乗務員数2名の機体です。

JALの 2006年度路線便数・機材計画 には、
 “国内線では、747(国内型)、A300 および YS11 型機を全機退役させ~”
と記されており、日本の航空会社からその姿を消す日もそう遠くありません。

時は1966年、アメリカン航空が Boeing727 置き換え用として提示した;
 -米大陸横断が可能なこと
 -旅客数は250~300名程度で、コロラド州のような高地に立地する空港(例えばデンバー)からも、Full Payloadで運航可能なこと
 -客室は通路を2本備えるワイド・ボディであること
 -双発機であること
との要求がA300開発のきっかけとなりました。

当時、米国の航空機メーカは(洋上運航に支障がない等の理由で)McDonnell Douglas DC-10 や Lockheed L-1011 Tristar といった3発機をワイド・ボディ機として計画・開発していました。

欧州はそれに、双発機、後のA300で対抗した訳です。
(当時のフランス大統領は、パリの空港の名前にもなった Charles de Gaulle 氏だった筈です;対抗意識バンバン)

翌1967年9月、英・仏・独の3国がA300の開発をキックオフすることになるのですが、英国には BAC: British Aircraft Corporation という航空機メーカがあったため、英仏間お得意のいざこざが邪魔をして、プロジェクトは必ずしも順調ではありませんでした。

が、1972年に初飛行を果たし、2年後の1974年5月にエールフランスが 1st customer として A300B2 型の運航を開始しました。

デビュー後、A300(エアバス社)はセールス面で苦難を強いられます。
ミッションのきっかけとなったアメリカン航空は、DC10を導入してしまうし....。

※が、この苦労が後のA300をベースとしたストレッチ・モデル330、シュリンク・モデル310、そしてA320やA340の成功へとつながっているのです。正に“若いうちの苦労は買ってでもしろ”ですね。

米国で最初に目をつけてくれたのはイースタン航空で、デビューから3年後の1977年のことです。4機のA300をリースして運航したところ、「トライスターより燃料消費が30%少ないぞ」と。
これがきっかけでイースタン航空(23機)、パンアメリカン航空と注文が舞い込んで、結果的には今日までの800機を越えるベストセラーとなりました。

(※1979年までのデリバリー数はわずか80機程度だったことを考えると、大成功と言えましょう)

米国は、今でこそ ETOPS と騒いでおりますが(自国の航空機産業の手前もあるのでしょう)、1980年当時は双発機に対する60分規則があったため、洋上進出の面で米国相手には苦戦を強いられたエアバスです。
そこで、エアバスが市場として目をつけたのは、FAA(米国連邦航空局)の60分ルールが適用されない、アジアやオーストラリアの航空会社です。

アジアやオーストラリアの航空会社は、南シナ海やベンガル湾横断、オーストラリア大陸横断にA300を活用し、1980年以降、それらアジア系の航空会社を中心に、A300の好調なセールスが続きました。

ちなみに、現在の A300-600R は ETOPS 180 の capability を備えています。

横道にそれますが、今日のエアバスの長距離モデルはA340、そして来るA380と4発機であるのに対し、ボーイングは双発+ETOPSとなっているのも面白い構図です。

さて、A300及びその派生モデル-600には、今日でも通用するハイテクが導入されており、殊に先進的だったのは Autopilot System と言えるでしょう。

先進的過ぎたがために、それをオペレーションする側(パイロット)の意識改革も必要で、メーカーとオペレータの相互理解不足に起因する痛ましい事故も幾つか起してしまいました。

これから暫くは、まだまだ現役で活躍するであろうA300ですが、日本の航空会社のフリート・リストから消える日はそう遠くなさそうです。

乗れるときに、乗れるうちに....。

ヨーロピアン・ワイドボディAirbus A300&A310

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そういえば、米国 Boeing 社も、米国の証券取引委員会 SEC: Securities and Exchange Commission に提出した 2005年の Form 10-K の中で(ページ32に以下の記載あり)
767 Program During 2005 the 767 achieved some success in obtaining additional orders. As a result the accounting quantity for the 767 program increased by twelve units during 2005. Given the timing and changing requirements for new USAF tankers, the prospects for the current 767 production program to extend uninterrupted into a USAF tanker contract has diminished. We are continuing to pursue market opportunities for additional 767 sales. Despite the recent airplane orders and the possibility of additional orders, it is still reasonably possible a decision to complete production could be made in 2006. A forward loss is not expected as a result of such a decision but program margins would be reduced.
 (下線部分に注目)
と、今年中に Boeing 767 の生産中止(生産中止の時期は不明なれど)を決める可能性もあるようです。

ハイテク・ツイン・ジェットBoeing757&767

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こちらは、本も機体も買えるうちに....。



以下、A300/A310の生産を2007年7月で終了 を伝えるプレス・リリースからの引用です。
A300/A310の生産を2007年7月で終了
2006年03月07日


エアバスは7日(フランス時間)、双発ワイドボディ機のA300/A310の生産を2007年7月で終了することを決定した。A300はエアバスが最初に開発した航空機で、生産を開始してからすでに35年以上が経過した。現在、市場からはより新しいタイプの航空機が求められているため今回の決定となった。この生産ラインから最後の機体となるA300-600は2007年7月に引き渡される。

エアバスのグスタフ・フンベルト社長兼CEOは、「社内のリソースを最適化することはビジネス戦略上、非常に重要なことでである。A300/A310の生産ラインはまもなく終了するが、エアバス全体の生産は益々拡大してゆく。これはA300やA310よりも後から登場したA321やA330/A340、また次世代のA350などといった新しい機体への需要が高まっているためである」と語った。さらに、「A300/A310プログラムはエアバスの基礎を作った航空機で、これまでに821機を受注しエアバスを大きな商業的成功に導いた。A300/A310から始まったエアバスの革新精神は21世紀に入ってもA380やA350に引き継がれている。A300/A310を成功に導いた顧客の皆様、それから設計、開発、マーケティング、製造に携わったエアバスの従業員にこの場を借りてお礼を言いたい」と付け加えた。

約150人のエアバス従業員が1ヶ月で1機のA300/A310を製造するのに関わっているが、これらの従業員は既存のエアバス機の製造や将来計画されている新型機の製造に移る。他のエアバス機の生産率が著しく上昇しているため、A300/A310に従事した熟練工は今後も非常に重要な戦力となる。2005年の生産機数はエアバス全体で378機であったが、2006年度は400機を越える見込み。

A300は1969年5月に開発着手され、エール・フランスが1974年5月に初就航させた。世界で初めての双発2通路機としてデビューしている。1978年7月には姉妹機のA310が開発着手、1983年4月にルフトハンザ・ドイツ航空とスイス航空(当時)が就航させた。A310は世界で初めて2人のパイロットによる操縦を可能にした旅客機で、コックピットにはデジタル技術を採用した他、計器類もブラウン管方式にするなど、航空業界に新たな業界標準を隔離した。A300/A310で実現した多くの革新技術がその後のエアバスの基礎を作っている。

A300/A310に対する総受注数は821機。そのうち802機が今年1月末までに引き渡された。残り19機はフェデックス、UPS、ギャラクシー・エアラインズ向けのA300-600貨物機。エアバスではA300/A310の生産終了後、既存のエアバス機を利用した新型貨物機を提供する予定。

現在も650機以上のA300とA310が世界の約80社で運航中で、これらのうち半数以上は2025年以降も運航を継続するであろう。エアバスでは機体寿命の最後まで運航面でのサポートを行う。

エアバスは100座席から550座席以上を装備する最新旅客機を製造する航空機メーカー。フランス、ドイツ、英国、スペインに設計・製造センターを持つ他、日本、米国、中国に現地法人を置く。本社は仏トゥールーズ。EADS(80%)とBAEシステムズ(20%)が出資する。

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コメント
 
 
 
A300とB767 (のぞみくん)
2006-03-09 19:45:29
A300というと、私にとっては「胴体から翼が出ている飛行機」ということで、空港では結構見分けやすいですね。これもエアバスらしさなのかな、と思ったり。

他方、B767は日本ではありふれているので見過ごしがちですが、よくよく考えたら、B757と資格を完全に共通化した機材で、その思想がエアバスA320以降に引き継がれていることを考えると、やはり先進的でしたね。

どちらも今のうちに見て乗っておかないと…。
 
 
 
型式限定共通トリビア? (PAX)
2006-03-09 22:06:10
「のぞみくん」さん、こんばんは。

早速のコメントをありがとうございます。



> A300というと、私にとっては「胴体から翼が出ている飛行機」

は上手い表現ですね。特徴をドンピシャにとらえていると思います。



ご指摘の通り、Boeing767 の型式限定ライセンスは Boeing757 のそれと共通なのですよね。日本には Boeing757 を運航しているエアラインが無いのでその恩恵にあずかれていませんが、United では共通資格を利用した運用をしているようです。

ただ、同一日に2機種に乗務することは無く、Stayを伴うパターンでのみ、往路と復路の組み合わせが757と767混在があるらしいです。

苦労して取得した型式限定、一回のチェックで2機種乗れるとは羨ましい....。



また、エアバスの機種移行も楽らしいですね。

殊にサイドスティックは、慣れると離れられなくなるとか。
 
 
 
767も (むう)
2006-03-09 23:59:52
どこからか767も生産ラインを止めるとの噂が流れてきましたが、これの真偽のほどはどうなのでしょうか?

導入当初、七色に輝くコックピットとANAが宣伝していたのがつい最近に思えます。時の流れは早いもんだ。
 
 
 
どうなりますか (PAX)
2006-03-10 11:06:25
「むう」さん、こんにちは。

コメントありがとうございます。

767の生産中止の可能性については、エントリー本文にもちょっと記しましたが、ボーイング社が米国証券取引委員会に提出したForm K-10というAnnual Reportに書いてありました。これは投資家・株主向けに上場企業が提出を義務付けられているものであり、その記載内容は信頼できるものだと思います。

ただ、表現がアメリカ人特有のどちらに転んでもOK的なので、まあ、状況悪くなりました→突然生産中止決定→株主から追求され経営責任問われました、の予防線とも考えられます。



どうなりますことやら。



ほんと、時代の流れは早いですね。
 
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