徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

ATC TRANSPONDER を備える実験重気球

 高層気象観測用の気球、所謂ラジオゾンデは毎日二回、0000Z と 1200Z (日本時間の午前9時と午後9時)に全国18箇所からリリースされており、約1時間半かけて成層圏にまで上昇し、大気断面図作成等に必用な高層気象観測データを地上に送信しています。

(ラジオゾンデがどのようなものかは、鹿児島地方気象台高層課のこちらをご参照下さい)

飛行中の航空機が、この観測気球にぶつかる可能性はほぼゼロでしょうし、仮に高空を高速で飛んでいる航空機が万が一ぶつかったとしても、航空機側には殆どダメージがなく、お釈迦になるのはバルーンとゾンデの方でしょう。

ところが、この気球も巨大化してくると NOTAM: NOtice To AirMen で事前に注意喚起がなされます。
当該 NOTAM では、気球の形状やリリース・ポイントとリリース時刻、上昇予想領域、落下予想領域とそれらの時間帯が報じられます。

と、ここまでは日常茶飯事であり、特に吃驚することではありません。

が、先日配達された
 『情報の有効期間中、AIP第1分冊の巻末にファイルのこと。』
と記された黄色い紙切れ、AIP SUPPLEMENT 航空路誌補足版を眺めていて、「おっ」と驚いたことがありました。

【重気球放球実験について】と題した Nr ???/06 がそれです。

※実験目的でありますし、残念ながらこのようなご時世ですから、詳細はセキュリティの観点から現時点ではお預けです。

今回放球される気球は“重気球”というだけあって、総重量が何と800kg、気球直径が79mに達するものも含まれているのです。

直径79mというと、Boeing 777-300 の全長 242 feet 4 inch (73.9m)をも上回る大きさですし、総重量が800kgにもなると、軽々と舞い上がることも難しいでしょう。

流石にここまでくると、飛行中の航空機にぶつかったりしたらダメージ・ゼロでは済まされません。

当然実験する側(“重気球”を放球する側)もそのことを認識しており、パラシュート(実験観測計器を地上・海上に激突させることなくゆっくり降下させるための必需品です)は赤白に、実験観測計器は橙色と白に着色し視認性を向上させているだけではなく、閃光灯( FLASHING LIGHT )も装着しています。

今回吃驚したのは、実験観測計器が航空管制レーダ二次識別用の「 ATC TRANSPONDER 」を積んでいることです。
Boeing777 ND with TCAS Symbol
言われてみれば、放球時にトランスポンダー・コードをセットすれば、気球の高度は勿論のこと、上昇率や速度も観測機器から得られる訳で、TRANSPONDER を備えていれば、管制レーダからの質問信号に応答する十分な情報は得られるのですね。

これで、航空管制レーダにも「未確認ターゲット」ではなく『我輩は重気球である』としっかり映りますから、万一航空機が気球に接近する危険性があるときには、航空機に Traffic?? Information を送信するすることも可能になります。

公示された情報には、“ with ATC TRANSPONDER ”とだけ記されているので、正確には解りませんが、仮に当該トランスポンダーが Mode C であれば、Cockpit の TCAS: Traffic alert and Collision System (航空機衝突防止装置)にも◇マークが表示され、当該重気球に接近し衝突のおそれがある範囲内に入ると TA: Traffic Advisory, RA: Resolution Advisory が発せられる訳です。

気球にも ATC TRANSPONDER、時代は変わりましたね。
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