本の舞台裏:前田晃伸さん

こんにちは。編集部のムラタです。暑いですね。この「本の舞台裏」は、BNNの可愛い本たちの制作の舞台裏を紹介するというエントリです。

今回は、6月発行書籍『Built with Processing[Ver. 1.x対応版]』の造本設計を担当していただいた、デザイナーの前田晃伸さんにお話を伺ってきました。
ちなみに『映像作家100人』や、グループ会社 フィルムアート社の『ホームシック 生活(2~3人分)』 『サウンドアート 音楽の向こう側、耳と目の間』も前田さんのお仕事です。


__コンピュータのプログラミングの本は初めてだったと思います。どうでした? 難しさとかありました?

前:こういったジャンルは初めてだったので、良い経験ができました。改訂ということがいちばん大変でしたね。今までのイメージを継承しつつ、更新しないといけないですからね。

__なるほど。 カバーデザインについて聞かせてください。今回いくつかの名画にエフェクトをかけてアートワークを作りましたね。その着想と意図について教えていただけますか。


『Built with Processing[Ver. 1.x対応版]』カバー

前:Processingがアルゴリズムを利用し、有機的な表現を得意としてるのを見て、ヒッピー~スピリチュアル系が好みそうなフラクタルみたいだなーと勝手に思ったんです。アインシュタインとフラクタルの模様が重なったポスターとかあるじゃないですか? ヒッピー~シリコンバレーっていうのと、有機的なイメージを作る~生命の誕生をプログラムするっていうイメージが重なって、『ヴィーナスの誕生』という古典的名画をモチーフにアスキーアートで作ろうと考えました。ダサさがちょうど良いかなと。アスキー化してるアイコンにはモニターやキーボード、マウスなどを盛り込んでいます。

__細かい話で恐縮ですが、本文書体の選び方って、何かご自身の中で基準みたいなものがあるのですか? 今回は明朝体でしたが。

前:特にないです。なんとなくフィーリングで選んでます。



__今のお仕事の中心はブックデザインですか? CDのジャケットなども多く手掛けられているようですが。

前:仕事の中心は・・・特にないです。ブックデザインは月に何冊か依頼されるので、いつもなにかしら作業しています。ということは中心なのかな… 矛盾してますかね? 多分、どこにも属すことができず衛星のようにそれぞれのシーンや業種の周りを廻っている感覚だから、特にないって言ってしまうのかもしれませんね。ココ最近はWebデザインが多いです。Webは面白いですね。

__Webもやってるんですか。最近手掛けたサイトはありますか?

前:石野卓球さんのオフィシャルWebサイトを手掛けました。石野さんのこれまでのアーカイブと最新のニュース、スケジュールをデータベースのように一覧できるデザインにしました。一見シンプルですが、動かしたり触ると体感できるようになってます。わかりにくいかもしれませんが、ベースの色が白と黒の2パターンあり、アクセスするとランダムに設定されます。10秒間マウスが動かないとスリープ状態になります。スリープはネガポジ反転し、ニュース/スケジュールとディスコグラフィを交互に表示します。マウスを動かすとスリープが解除され、再度ネガポジ反転し戻ります。あと、進行中でまだお伝えできませんが現在、音楽サイトのデザインを進めています。

__楽しみです。前田さんご自身のサイトも無茶苦茶かっこいいですもんね。
  こういう、紙とWebとか対象の違いで、前田さんの中でデザインする方法論を使い分けたりしているのでしょうか?

前:デザインはコミュニュケーションの一種ですから、媒体が変わろうとそんなに大きな変化はないと思ってます。

__なるほど。 今、何をデザインするのが楽しいですか? あるいは何をデザインしてみたいですか?

前:今後はパッケージデザインがやりたいですね。お菓子とか化粧品とかお酒とか。特にお菓子はいいですよね。美味しいものってそれ自体が幸せの象徴じゃないですか? そういうものをパッケージできるっていいですよね。合わせて、売り場やお店の空間デザインもしてみたいですね。

__現在、世の中にデザインは足りていると思いますか?

前:デザインの定義で分かれますが、雑多な世の中のほうが面白いと思います。くだらないものも面白いし、美しいものも面白いし、デザインされていないものが面白いこともある。デザインと町並みが合致しているようなところもあれば、歌舞伎町のようなところもあるっていうのが健全のように思います。温室育ちのヤワなデザインは淘汰されていけばいいんです。

__デザイナーは、社会を変える力があると思いますか? デザイン(特に平面のデザイン)が世の中に与える力についてどう考えていますか?

前:僕はデザイナーなのでデザインの可能性を信じています。ですが、デザインが社会を変える必要はないし、デザインだけでは変えることはできないと思ってます。そういった事柄は政治にまつわる仕事の人がやるべきだと思っています。歴史を振り返ると、デザインや映画、アートが出しゃばると、ろくでもないことになることってありますからね。



__ところでほぼ同世代ですよね(前田さんは1976年生まれ)。どうですか?今生きてて。未来に対してあまり明るい希望を持ちづらい世の中な気がしますが、将来の展望を聞かせてください。ちなみにぼくは35歳を目前に控えて、なんとも言えない閉塞感のようなものを感じてます。

前:はっきりいって、良い話は聞かないし、今の学生は社会に出るのが億劫になるような息苦しい世の中だなーとは思っています。最悪な状況が何年も続いていて、最悪だって感覚すら麻痺してきてますよね。でも、バブルの時代だって今だって、自分の思い描くような理想の仕事や環境を築くのはいつの時代も大変なことだと思います。偉そうだけど、人生は思うようにいかないので、どこかで理想を遠くにぼんやり眺めながら現実を見つめるしかないじゃないですか。そういった現実に反撃の狼煙を上げ、人生に挑む方法は、ただただ自分の人生に与えられたことを一生懸命やるしかないと思っています。その熱量が高ければ高いほど次のステップにいけると思うし、鬱屈して認められないって言っている暇は、今の自分にはないです。とにかく、積み上げるしかない。と、まー、偉そうに暑苦しく言いましたが、気分は戦後なので、ひと山当ててやる。カラーテレビ欲しい。みたいな感覚になっています。……もちろん戦後を知らないですけど。

__いや、かっこいいです。鬱屈している暇なんてないっすよね。
  話飛びます。最近は電子書籍の話題が非常に多いです。「読む」という行為は、今後どのように変わっていくと思いますか? また、本を数多く手掛けられてきたデザイナーとして、電子書籍のデザインについて何か思うところはありますか?

前:活字離れって言われていたのが、メールだったり、ネットだったり、活字が身近な存在になってますよね。本は読まないにしても活字にもっともっと慣れ親しんいくんじゃないですか? そうなってくるといろいろ変わってくるような気もしますけど。電子書籍は新たな選択肢が増えただけで現状は何も変わらないと思います。単行本に対しての文庫みたいなもんですよね。説明書とか辞書は便利かもしれませんね。昔でいうCD-ROMのような電子書籍は受け入れられるんでしょうかね? 興味あります。

__なるほど。すみませんまた話が飛びますが、前田さんにとって音楽ってどういう立ち位置のもの? ヒップホップがお好きのようですが、ご自身のデザインへの影響とかもあるのでしょうか?

前:何か夢中になれるものがあるっていうのは良いことだなーと今になって思っています。確実にデザインや人生に影響を及ぼしていますよ。

__では最後に。これからデザイナになろうとしている若い子たちに向けて、何かメッセージを一言ください。

前:特にないです。僕自体これからなのでメッセージなんかありません!



打ち上げ@思い出横丁の居酒屋でのひとコマ。
実際はこの後日にメールでインタビューさせてもらいました。
前田さん、ありがとうございました。



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