始まりに向かって

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沖縄の言葉歌い継ぐ・・上間綾乃さんの歌

2013-11-25 | その他先住民族


2013・06・30読売新聞

            ・・・・・

「ちむぐりさ ちむぐりさ なまや暮らさらん(胸が痛い 胸が痛い 今は暮らしていけない)

フォークの名曲「悲しくてやりきれない」の哀切を帯びたメロディーが、ウチナーグチ(沖縄の言葉)で流れる。

カバーしているのは沖縄県うるま市出身の歌手、上間綾乃さん。

「泣けてくる」「胸に響いた」。

投稿サイト・ユーチューブで静かな人気を呼んでいる。

「ザ・フォーク・クルセダーズさんが歌った原曲を初めて聞いたとき、苦難を乗り越えてきた沖縄の姿と重なったんです。

歌詞は自分で訳したんですが、「悲しい」にぴったり当てはまるウチナーグチがなかなかみつからなくて。

沖縄には悲しみを表わす言葉があまりないんですね。

つらい歴史があっても、「なんくるないさ」(なんとかなるさ)って前を向いて生きていくのが沖縄の精神なのかな」


沖縄民謡を生演奏する那覇市の居酒屋で歌っていた2007年、大手レコード会社のプロデューサーの目に留まった。

「好きな歌を歌い、ご飯が食べられれば充分、東京は怖いと言う不安もありました」。

さそいを断り続けたが、昨年春、熱意に押されメジャーデビューした。

「生活の拠点は沖縄に置かせてほしい」とレコード会社に求めた。

「私を育ててくれた沖縄の地を踏み続けながら、歌いたかった」


琉球国民謡協会の教師免許を19才で取り、三線(さんしん)も弾きこなす。

沖縄では2006年9月18日を「しまくとぅば(島言葉)の日」と定める県条例が施行された。

「ウチナーグチ」を守ろうという機運はあるが、話せるのはお年寄りぐらいだ。

「このままでは沖縄の文化が詰まった言葉がなくなってしまう」という思いがある。

だから今も東京と大阪で、それぞれ月一回ほど、三線教室を開いている。

独学でウチナーグチの勉強も続けている。


「言霊と言われるように、言葉は使われることで魂が宿る。

若い世代にも沖縄の素晴らしい言葉を知ってほしい。

歌を通じて、この言葉はいい響きだなって思うだけでもいい。

針の穴のようなところからでも、広がっていけば、伝承されていくんじゃないでしょうか」。



前を向いて生きていく精神も、沖縄民謡も、授けてくれたのは母方の祖母、「おばあ」の幸喜トヨ子さんだった。

体調を崩し、去年帰らぬ人となった。

その2日前、古里のうるま市に親族が集まり、85才の誕生日を祝ったばかりだった。

「綾乃、帰ってきたのかい?」

最後に覚えているのは、久々に再会したその日の、包み込むような笑顔だ。

おばあが通っていた三線教室で民謡を習い始めたのが、7才の時。

うまく弾けると誉められるのが嬉しかった。

おばあの死後、ショックで寝込んだ。


起き上がってステージに立ったのが今月8日、新江の島水族館(神奈川県藤沢市)でのイベントだった。

「歌うことが、おばあが望んでいることだと思ったから」。

涙は見せなかった。


そして23日、沖縄は慰霊の日を迎えた。

その日は東京・銀座にある沖縄のアンテナショップで、ミニライブを開いた。

「慰霊の日に歌うことには、特別な思いがある。


優しかったおばあが、一度だけ怖い顔を見せたことがある。

小学校のころだ。

沖縄戦の話をお年寄りから聞いてくるという宿題が出て、おばあに尋ねると、「そんなことはいい。あんた達は前を向いて生きていけばいいんだ」。

戦争のことは語ってくれなかった。

あえて口を閉ざすところに、おばあの心痛を感じた」。


「私には、歌わなければならない歌があります」。

そういってライブで時々歌うのは、ひめゆり学徒隊の姿を描いた 「ひめゆりの唄」。

「沖縄の歴史を歌で語り継ぐのは、沖縄民謡の唄者の使命。

おばあたちの世代が経験したつらい歴史をしっかりと気持ちを込めて歌わなきゃって思うんです」。


人のつながりを表わす「結(ゆい)」の心を歌った新曲「ソランジュ」を今月発売した。

「全国の人々に思いを伝えたい」と、ヤマトグチ(標準語)で歌う。

「民謡は民の歌。普通の人たちの思いをメロディーにしている。

骨董品のように思われがちだけれど、新しいものを取り入れながら発展してきたチャンプルー(混ぜ合わせ)なんです。

自分のペースで、ヨンナー、ヨンナー(ゆっくりゆっくり)、民の思いを歌っていきたい」


                  ・・・・・


沖縄の女優・平良とみさんが書かれた「島唄!」という本に、ウチナーグチの美しい歌が紹介されていました。


                 *****


               (引用ここから)


天の鳴響む(とよむ)大主(うふぬし)
明けもどろの花の
咲き渡り
あれよ 見れよ
清らやよ(ちゅらやよ)
地天鳴響む(とよむ)大主(うふぬし)

(天にどよもす太陽の大主よ
夜明けの光が明けもどろの花となって
咲いて開いていくよ
あれよ、ごらんよ
なんと美しいことよ
天地にどよもす太陽の大主よ)        明けもどろの花


戦世も済まち
弥勒(みるく)世もやがて
嘆くなよ臣下
命(ぬち)ど宝

(争乱の時代も過ぎ去り
平和で豊かな時代も
やがてくるであろう
嘆くでないぞ 皆の衆
命こそが宝であるぞ)            命ど宝



恩納(うんな)松下に
禁止(ちじ)の碑(ふぇ)の立ちゆす
恋忍ぶまでの
禁止(ちじ)や無い(ねい)さめ

恩納番所の松の木の下に
禁止令を書き並べた
掲示板が立てられたそうだ
世に恋路を禁ずる掟など
あっていいものか              恩納(うんな)節


             (引用ここまで)


               *****

とても美しい歌だと思います。。


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などあります。(重複しています)

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