5月12日、第31回目のフィッシングカレッジが開講されました。
今回のテーマは「海洋リテラシー」と「離島の魚類と釣り」です。
開講に先立って和泉副学長のご挨拶を頂きました。
最初の講義は東京海洋大学・佐々木 剛先生による「水圏環境(海洋)リテラシーのススメ」です。
「リテラシー」とは、「識字(日常生活に非値様な最低限の知識や理解)」を意味します。
現在、海洋をめぐる環境の変化が表面化していますが、それはとりも直さず、私たち一般市民の生活と密接に関わっていますが、その海洋(水圏環境)について知る機会はまだまだ不足しているとのことです。
「海」と聞くとイルカや珊瑚礁、深海の奇妙な魚などは誰でもイメージしやすいと思いますが、一例を挙げるなら、海洋は物理学、気象学、地質学、化学、人文科学など、生物学以外にも海を様々な側面から見ることができます。
また、現在抱える問題としては、水質汚染や漁業資源の問題なども多岐にわたっていますが、それらを水圏環境の重要性を社会に啓発し、教育に取り入れていくためにも、リーダーとなる存在の養成が必要になりますが、来年からこの水圏環境リテラシーについて学んだ学生たちが社会に出ていきます。
日本の学校でも海について学ぶ機会はアメリカに比べると大きな後れを取っています。これは海洋大国の日本として見逃すことはできません。
佐々木先生が熱く語り、参加者は知的好奇心を刺激されます。
そのアメリカではモンテクレア小学校という学校が例として挙げられていましたが、1年次より海洋教育が行われ、小学校の先生だけでは難しい面は、カリフォルニア大の先生が子どもたちに説明しているということです。
そして、日本でもこの水圏環境リテラシーの一環として、海洋スポーツ、生物の飼育・触れあい、食をキーワードにした問題、生物や水産など、いくつかの項目を軸に聞き取り調査を行ったところ、「食」というキーワードに多くの関心が集まったといいます。
例えば漁師が漁業体験に協力したり(海岸の一部が保護区になっているような国と違い、日本にはどこにでも漁師がいます)、それが結果的に地域全体の盛り上げにつながったといいます。
特に教育を重点に置いたわけではありませんが、自然と参加者の間に海洋への関心が高まっていったということです。また、漁師は職場である自然環境を大切にしますが、それは漁業者のみならず、住民全体の願いです。
東京都大田区でも、ふるさと浜辺公園が作られ、東京オリンピック以前のように海苔の養殖を極一部ではありますが再会することも目標になっています。
しかしながら、現時点では水産試験場や自然研究所といった、モニタリング調査機関へのなじみが薄いことも事実です。これらの単語は一般市民にはなじまないのではと懸念されていましたが、さらには水圏環境リテラシーはボランティア活動としては成立していても、仕事として確立されていなかったため、若者がなかなか参入できないという状況でもあるといいます。
海の環境によって台風やエルニーニョ現象、各種の物質循環が行われているだけに、この状況は一刻も早く改善される必要がありますが、それには日本ならではの手段があります。
先ほども取り上げた「食」です。
日本人は「海」=食(刺身や寿司)として捉えるため、欧米の一部とは一部の海洋生物をめぐる意見の対立などがありますが、この魚食文化が一つのキーワードとなります。
現状を述べるなら、一般市民は魚食文化は優れているものの、海洋環境に対する科学的な知識が不足していることは否めません。
しかし、海の健康診断としてのモニタリングとして「釣り」は非常に有効です。釣りに出かけることで海洋環境を地理・地質的に観察し、何がどれだけ釣れたという報告がデーターになり、釣った魚を食べることで水質や魚の生態について学ぶことができます。
持続可能な水圏環境を維持するためには、住民との協力、連帯が必要不可欠ですが、このフィッシングカレッジもそのお役に立てれば光栄です。
奥山校長も非常に関心を寄せられています。
続いてはマルキユーの長岡 寛さんより、離島の中でも「伊豆七島」と呼ばれる東京都の離島についてお話して頂きました。
磯釣りがもっとも好きだと言う長岡さんは、入社後会社の先輩に連れられて、神津島に通うようになったのがそのきっかけ、と語っていました。
伊豆諸島と言えば、大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島と「8つ」島がありますが、式根島は江戸時代に新島が噴火してできたものであるため、「伊豆七島」には含まれないそうです。
そして、これらの離島は行政上は東京都に区分されるため、今度釣行する三宅も自動車は品川ナンバーです。
アクセス方法としては東海汽船の定期便や飛行機がポピュラーですが、磯釣り師の中には下田から船をチャーターして向かう人もいます。
ちなみにチャーターは割高、飛行機は速いですが天気が悪いと羽田や調布に引き返すため、東海汽船が一番ポピュラーであることに変わりはありません。
その汽船の発着所である離島の堤防は、潮通しが良く、海の真ん中にあるため、沿岸の堤防とはひと味違ったA級のポイントです。
狙える魚はメジナ、クロメジナは元より、磯釣りの代名詞だったイシダイ、イシガキダイ、カンパチ、ヒラマサ、シマアジなどですが、中でもカンパチは自分の頭と同じくらいのエサも食べ、極端な例では70cm級のヒラマサとやり取りしていたら、同じようなサイズのカンパチがそのヒラマサを襲ったという話もあるそうです。
また、ニザダイやイスズミといった外道扱いされてしまう魚も大きく、用心するべき点としてはコブダイやイシダイの歯、アイゴの背びれのトゲにはくれぐれも触らないようにしましょう。
長岡さんが過去に仕留めたクロメジナの魚拓です。でかい!(磯釣り師垂涎間違いなし)
伊豆諸島は太平洋の真っ只中です。うねりは低いように見えても、一気に堤防の上を洗うほど上がってくることもありますので、ライフジャケットは必要不可欠です。
そして、伊豆諸島はメジナより尾長と呼ばれるクロメジナが多いですが、この2種類は歯の構造が違うため、クロメジナに飲まれたら鋭い歯で太いハリスも一発で切られます。これを防止するために唇に掛けるためのハリが開発されています。
しかし、シマアジは口が柔らかいため、同じように唇に掛けるとすぐ口切れしてしまうため、当たりが来たら即合わせするべきか、飲ませるべきか、釣り人はジレンマに直面します。
また、中国でも磯釣りブームになっているそうですが、実際に行って確かめたところ、広州や海南島の磯で黒鯛やコバンアジが上がったそうです。
前回のヘラブナに参加してくれた少年からは、なぜメジナとクロメジナでは歯の構造が違うのかという質問がなされていました。
クロメジナの方が堅い海藻を食べるため、より歯が鋭くなったというのが現在の考えです。
(オキアミが普及したことで、メジナの磯臭さが抜けてきたという話もありますね)
これが左からメジナ、クロメジナ、オキナメジナの歯です。
今週末、釣行会参加者は実際に三宅島でクロメジナに挑戦してきます。
報告をお楽しみに!