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『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』

2009-03-12 | cinema & drama


最近劇場で観るのはミニ・シアター系の作品ばかりだったが、久しぶりに大作を観に行ってきた。
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生 / The Curious Case of Benjamin Button』、ブラッド・ピット主演の話題の映画。
167分という長編だったが、全くその長さを感じず、観終わったあと、何とも言えない不思議な気持ちになった。
時計が逆回りして行くように、80歳の姿で生まれて成長するにつれて若返って行くという、自身に課せられた運命を受け止め、一生を終えて行くひとりの男の姿が、とても丁寧に描かれていた。
実父に捨てられて、育った環境が老人施設だったということもあり、ベンジャミンは周囲から異様な目で見られることもなく、たくさんの人と触れ合いながら淡々と時は流れて成長して行く。
心を通わせた女性デイジーとの普遍的な愛。彼女はどんどん老いて行く一方、彼はどんどん若返って行く。ケイト・ブランシェット演じるデイジーのジレンマは、同じ女性としてとても共感した。同様に、ベンジャミンも精神と肉体のジレンマに苦しむ。
ベンジャミンが出会う多くの人は皆とても温かく、中でも最初に出会った育ての母親クィーニーの存在がとても大きかった。

監督はデヴィッド・フィンチャーで、ブラッド・ピットとは 『セブン』、『ファイト・クラブ』 に次いてタッグを組んだ。
先日発表されたアカデミー賞では、美術、メイクアップ、視覚効果の3部門を受賞したが、技術の進歩とは言え、老いた姿や若返った姿はとても自然だった。
先ごろ来日した時にブラッド・ピットは、若返った姿はCGのお陰さと笑いながら言っていたが、昔懐かしい “カッコいいブラピ” がそこに居た。
ヨットでセイリングしている姿やバイクに乗っている姿は、若かりし頃のLEVI'S501のCMを思い出させた。そして、ケイト・ブランシェットはとてもとても美しかった。
登場人物の中でツボだったのが、7回も落雷に遭ったというおじいさん。そのことを何度もベンジャミンに話し、その度に被害に遭ったシーンが無声映画のようなモノクロの早回しの映像で流れて、思わずクスッと笑わせてくれた。
人とは違った運命を背負いながら、生きることの喜びや悲しみ、人との出会いと別れを経験していくベンジャミンの姿の中に、“人生は後戻りすることができない” というメッセージが込められた、魅力あるステキな作品だった。