国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

国鉄は高額納税者だった。第5話 

2018-10-22 23:21:25 | 国鉄思いで夜話
納付金とローカル線問題と国鉄赤字

国鉄は、昭和39年に赤字に転落して、その後昭和60年まで経常収支では黒字に転換することはありませんでした。
そして、この頃から、国鉄としても地方納付金の減免、または廃止について要望するのですが、当然のことながら既得権益を剥がされるとして、自治省は反対をするのですが、その辺の事情を当時の資料などを参照しながら見ていこうと思います。

納付金について、おさらいしてみましょう。

国鉄に課せられる「納付金」の対象賢産はというと、土地、駅舎、線路設備、車両、船舶などなど、原簿価格でで二兆九六〇〇億円(四十一年度申告額)に達し、国鉄全資産の93%
ひとことでいえば、列車や船を走らせるための直接、間接のほとんどすべての施設が課税対象になっています。
国鉄は毎年三月末現在で所有する資産のうち、これら「納付金」の対象となるものを自治大臣に申告し、この申告にもとづき自治大臣が固定資産所在の市町村に割り当て額を配分する。
配分を受けた市町村では納付金。納入告知書を発行し、国鉄は五月と十月の二回に分けて、市町村に支払っています。
この配分基準としては大別して、

  1. 管理局庁舎、宿舎、車庫など自動車施設、工場施設はその所在する市町村へ

  2. 船舶は所属航路の停泊港へ均分配分

  3. 送電線はそれか所在する市町村へ鉄塔数によりあん分

  4. 以上の三つに該当しない資産は軌道の長さにあん分して配分する


、となっています。
特に、
 以上のうち④に当たる資産が、納付金対象資産の90%以上を占め、配分の中心基準となっている。
簡単に言えば、線路があればそこにはお金が入ってくると言うわけです。
納付金は、地方自治体にしてみれば、打ち出の小槌であり、国鉄が投資をして鉄道を改良すればするほど、地方に入る納付金も増加する仕組みになっていました。

下図をご覧ください。

昭和40年度以降に大きく納付金が増えているのは、新幹線の開業で一気に資産が増えたことも関連しています。
これらの納付金は、下記のようにかなりの額になります。
昭和41年の資料ですが、一覧をこちらでアップさせていただきます。

もう一枚、納付金の多い市町村



なお、国鉄としても、納付金という制度には当然のことながら、不満を持っており、下記のような恨み言を述べています。

国鉄としては、昭和31年から10年間で支払った納付金は累計で758億円に上り、このお金を全て国鉄の設備投資に回せていたら、103系電車であれば3000両、気動車であれば4000両も製作することが出来るとして、以下に大きな金額であるかと訴えています。
実際、納付金の制度がなければ国鉄の赤字の顕在化はもう少し後になっていたであろうと思われます。

さらに、国鉄の職員の中でも、国鉄の納付金の減免や関連事業の緩和を図るべきだと言った至極正論が述べられています。
昭和41年国鉄線 11月号から引用


そして、実際に納付金減免に関して、国鉄は動き出すのですが、当然のことながら自治省は反対を表明します。
下記の記事は、昭和42年12月国鉄線の記事からの引用ですが、昭和42年の予算として、通勤・通学定期券の35%値上げや、政府からの政府出資や利子補給とともに、納付金の軽減を求めています。
逆説的に見れば、納付金を全額廃止すれば、利子補給や政府出資金に頼る必要は無くなるわけですが・・・当然のことながら、自治省は反対することになります。

その辺は、次回に当時の新聞記事などを参照しながら、述べていきたいと思います。

続く

にほんブログ村 鉄道ブログ 国鉄へにほんブログ村

にほんブログ村 鉄道ブログ 国鉄へにほんブログ村

併せて是非ご覧ください

国鉄は高額納税者だった。第1話
国鉄は高額納税者だった。第3話
国鉄は高額納税者だった。第4話

********************************************************
取材・記事の執筆等、お問い合わせはお気軽に
blackcat.kat@gmail.comにメール
またはメッセージ、コメントにて
お待ちしております。

国鉄があった時代 JNR-era
********************************************************
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

まとめサイト作成しました。今回は、輸送力増強と国鉄です。

2018-10-12 12:08:27 | アーカイブス
いつもご覧いただきありがとうございます。
下記内容で、日本国有鉄道史の解説として、まとめサイトを作ってみました。
併せてご覧いただけますと幸いです。

輸送力増強と国鉄 第1話 輸送力増強

昭和24年9月、戦後初めての「特急 へいわ」が運転を開始しました。
 戦後の暗い世相の中でたとえ一般庶民には高嶺の花であった特急列車が復活するということは国民に希望を与えるものでした。
 特に、「へいわ」という愛称は、戦後の国民には素直に受入れられる名称では有りましたが、愛称については、改めて公募が行なわれることとなりました。
blogはこちら

輸送力増強と国鉄 第2話 講和条約後の日本
講和を獲得後日本は、国際的には独立国となりましたが、まだまだ10年戦争による疲弊は続き未だ国民の生活は豊かなものではありませんでした。
しかし、昭和30年代に入ると、次第に戦後復興と言われた時代は終わり、池田内閣の所得倍増計画に見られるように、より豊かな生活を目指して経済が活発化していきました。
blogはこちら

輸送力増強と国鉄 第3話 貨物輸送の改善
昭和25年からは、貨物輸送についてもサービス改善が図られ、小口貨物輸送専用のワキ列車が、汐留~梅田間および吹田~門司間に設定され、汐留~門司間で65時間から43時間に大幅に改善されました。
改善の動機はドッジ・ラインによる縮小経済で貨物輸送が減少したことと、トラック輸送や船舶輸送の復旧が進みサービス改善に迫られたことも原因としてありました。
blogはこちら

輸送力増強と国鉄 第4話 湘南電車に見られる、電車の活躍
昭和25年3月、東京~沼津間に80形電車による運転が始まりました。これまでは電車といえば近距離での輸送が常識を覆すものでした。 現在も使われている、オレンジと緑の塗り分けは、茶色若しくは黒しか見たことが無かった人々には驚きの目を持って迎えられました。最も当初は赤味の強いオレンジ色であったため後に修正したと言われています。
blogはこちら

輸送力増強と国鉄 第5話 機関車の再改造と輸送力増強
戦時中に製作された、EF13、D52などは、通勤形電車の63形同様、戦時設計と言われる構造であったため代用部品や、設計の簡略化などが行なわれており、実際にD52形蒸気機関車では走行中にボイラが爆発して、機関士が死亡するといった事故が発生しています。
blogはこちら


にほんブログ村 鉄道ブログ 国鉄へにほんブログ村

にほんブログ村 鉄道ブログ 国鉄へにほんブログ村

併せて是非ご覧ください

国鉄は高額納税者だった。第1話
国鉄は高額納税者だった。第3話
国鉄は高額納税者だった。第4話
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

国鉄は高額納税者だった。第4話

2018-10-06 08:33:49 | 国鉄思いで夜話
長らく更新が滞っておりましたが、久々に更新させていただきます。

国鉄赤字の原因はどこに?

国鉄赤字の時期をどこで捉えるかといいますと、新幹線開業が原因で、それ故に昭和39年から赤字が発生したと言うのが一般的ですが、その原因を作った一つに、昭和31年から設けられた、地方納付金という制度も関係していると、個人的には考えています。
地方への交付金が不足していたこともあり、積極的に、公営ギャンブルを奨励していた訳ですが、不足する地方財源の一環として、国は、昭和31年、公社に対して課税を行うこととしました。
ここでポイントとなるのは、公社だけがその対象であり、郵便局など国営の機関は対象としなかったことでした。
当時、公社と呼ばれた組織は、専売公社、電電公社、そして日本国有鉄道であり、その理由は、市町村にその施設がある以上、消防署等の世話になることが、あるでしょうと言う理由で、市町村に税金を払えと言う制度でした。
それでは、国鉄以上に窓口などで利用者と接し、金融機関でもあって、警察などの世話になるであろう、郵便局はその対象から外れるというのも矛盾でした。
なお、郵便局は、郵政公社時代に、この法律に基づき、地方納付金を支払っています。
国が勝手に設けた制度に国鉄が巻き込まれたということは、前回までに書いたとおりです。

納付金とはどのような制度だったのか?

さて、納付金に関して、国鉄の部内誌により詳しく書いた資料がありましたので、その記事を参照しながら解説を加えていこうと思います。
その記事を引用させていただきますと。
国鉄が支払っていた税金は、大きく分けますと
固定資産税・・・遊休地や、病院などの福利厚生施設など
自動車税・・・・国鉄バスなどの営業用自動車、それ以外の自動車
地方納付金・・・直接、事業に供する線路。駅などの用地及び建物、及び車両が課税対象


鉄道車両は全て対象になる。駅舎もその対象、折尾駅にて

なお、地方納付金は、年2回に分けて、市町村に納付されることになっており、前年度中に、下記区分に従い本社経理局長に報告するように、なっていたそうです。

以下は、国鉄部内誌、「交通技術昭和42年4月号」に掲載されていた記事から引用したものです。以下、同一文献から引用

> このために固定資産の所管者である総括局所長(鉄道管理局長なと)は、自局の所管する固定質産を、

  1. 固定資産税が課されるもの

  2. 自動車税などが課されるもの

  3. 市町村納付金が課されるもの

  4. 税の対象外のもの



に分類する他、市町村ごとの軌道延長キロなどを調査し、経理局長へ報告することになっています。 ここで注目していただきたいのは、軌道もその対象であったと言うことです。市町村の一部区間でも、線路があれば、市町村にすればお金が入ってくるわけです。もちろん、軌道延長キロですから、単線よりも複線になる方が、その収入は大きくなる計算になります。 もう少し、市町村納付金の対象資産について詳しく述べたいと思います。

再び、「交通技術昭和42年4月号」から引用させていただきます。

  1. 軌道延長キロ(単線換算)により按分して配分するもの(一括申告資産といい、全納付金対象資産の94%を占めている〕……線路・駅区などの用地及び建物・線路設備・電線路・工作物・停車場設備・車両及ぴ機器がこの区分に入る。

  2. 固淀資産所在の市町村へ配分するもの(個別申告資産)……局の庁舎・宿舎などの用地及び建物・自動車施設・工場施設・船舶及ぴ石炭積込施設などがこれiこ該当する。



と書かれています。例えば、鉄道工場や機関区、さらには操車場などがあった吹田市等は、国鉄からの地方納付金もかなりの金額になる訳です。

吹田観光ウエブから引用
また、地方のローカル線の場合、たとえ1日数本の列車しか走らなくとも、地方納付金が支払われる仕組みになっていたわけです。 なお、納付金の額のうち、軌道に関しては下記の通り、kmあたりの金額が定められていたそうです。再び、引用させていただきます。
したがって、大部分の資産は、軌道延長キロによって配分されるわけで、軌道延長キロは配分上最も重要なものとなります。例えば、市町村の区域内に軌道が少しでもあれば、本州:34万8000円、北海道;15万8000円、四国:24万4000円、九州:25万円(以上昭和41年度分)のように市町村納付金が納付されることになり、軌道延長の増減は市町村との利害と密接な関係にあることが理解されましょう。 
一方、自治大臣は、市町村納付金を納付すべき資産について固定資産評価基準により評価を行い、軌道延長キロなどにより対象資産所在の市町村への配分価格を決決定し、市町村及び国鉄に通知され、納付額算定の基礎となる価格が決定されます。そこで市町村納付金の算式を示すと、固定資産価格x0.5x0.014となっています。

引用以上

ここで書いていますが、線路では1kmあたり、上記のように一律の金額が納付されるわけですから、地方都市にしてみればおいしい財源であったといえましょう。 何せ、毎年確実に入ってくるわけですから。
 さて、こうした納付金ですが、国鉄が改良工事を施したりすれば、その分線路延長が増えて、車両も増えたりしますので、納付金も増えるという問題が生じました。
さらに、鉄道建設公団が建設する地方開発線と呼ばれる、AB線は、鉄建公団が建設して、国鉄に無償譲渡する路線ですが、これも国鉄にしてみれば線路が増えた分だけ納付金が増えるわけですから余り有り難くないわけです。 さらに、走らせるとなれば、それなりの経費も要るわけですから、国鉄としては譲渡してほしくない路線でした。 ちなみに、幹線区間と呼ばれた、CD線は、有償譲渡路線であり、鉄建公団から年賦で買い上げるもので、こちらも所有権は国鉄に移るため、納付金が発生しました。CD線の場合、鉄建公団への支払いが終わるまでは、鉄建公団の所有としておけば国鉄には納付金の分だけでも経費が浮くのですが、そのような仕組みにはなっていませんでした。


参考 鉄道建設公団が建設・開業した国鉄線 弊サイト、国鉄があった時代から引用

再び引用します
 ところで国鉄は、昭和40年度から幹線の複線化、電化による輸送力の増強並びに都市圏通勤輸送の緩和のために第3次長期計画を実施し約3兆円にのぽる設備投資を行ないつつあるが、これに伴い納付金対象資産も急激に増加し、毎年の市町村納付金は急増して、完成時には現在の約2倍(約240億円)に達するものと見込まれている。このように市町村納付金は、今後ますます増加し。ひいては、国鉄財政に大きな負担となるので、これが減免について政府など関係機関に要請している。 ここで、国鉄は、減免について政府など関係機関に要請している。

と書かれていますが、実際に減免が認められるのは、分割民営化の方針が決定した頃であり、それまでは誰も責任を取らない体制のまま、形だけの再建計画が続けられ、地方納付金も引き続き国鉄は払うこととなりました。
国鉄赤字を、設備投資の利子払いなどが嵩んだことに求める論調が目立ちますが、仮にこうした地方納付金を廃止なり大幅な減免が行えていたり、過度な定期運賃の割引などが行っていれば、少なくとも、違った形で着地していたのではないかと思えるのです。


にほんブログ村 鉄道ブログ 国鉄へにほんブログ村

併せて是非ご覧ください

国鉄は高額納税者だった。第1話
国鉄は高額納税者だった。第2話
国鉄は高額納税者だった。第3話

にほんブログ村 鉄道ブログ 国鉄へにほんブログ村

にほんブログ村 鉄道ブログ 国鉄へにほんブログ村

併せて是非ご覧ください

国鉄は高額納税者だった。第1話
国鉄は高額納税者だった。第3話
国鉄は高額納税者だった。第4話
********************************************************
取材・記事の執筆等、お問い合わせはお気軽に
blackcat.kat@gmail.comにメール
またはメッセージ、コメントにて
お待ちしております。

国鉄があった時代 JNR-era
********************************************************
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする