竹林の愚人  WAREHOUSE

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冷蔵庫で食品を腐らす日本人

2008-04-28 10:00:11 | BOOKS

魚柄仁之助 「冷蔵庫で食品を腐らす日本人 日本の食文化激変の50年史」 朝日新書 2007.08.30.

冷凍食品の生産高は2005年に153万9,009tを記録し、過去最高です。また、輸入量も前年比で12.2%増の29万1,098tと伸びています。急速超低温冷凍と調味料の向上で、20年前の冷食より格段によくなっているが、それらの食材の素性がよくわかりません。
特に中国や東南アジアから輸入した食材の素性はまだまだアヤシゲで、米国産牛肉の検査体制はないに等しく、売られている冷食の大半があっという間に手作りできるものばかりで買う必然性もありません。
コンビニやスーパーで冷えたものがどんな時間帯でも入手できるのに、家庭の冷凍冷蔵庫は巨大化する一方だ。巨大化する冷蔵庫内の傷みかけた食材で、食べきれぬ料理を作り、その料理が今日も明日も食卓にのぼる。大きな鍋の煮物は連日煮返され、3日目にはすえた味となり、最後にはゴミとして捨ててしまう。この姿は、都会でも地方でも今日よく目にする。豊かさとはほど遠いものを感じます。
1952年(昭和27)、ツナ・ソーセージという名前で魚肉ソーセージが発売されました。魚肉入りソーセージは第1次大戦中、豚肉不足におちいったドイツ、デンマーク、ノルウェー作られた記録がありますが、商業ベースにのったのは日本です。
製造したのは日本水産戸畑工場で、55年には年間9,417t、60年には10万tを超え、ピークの65(昭和40)年は18万8,094tも生産されました。
東京オリンピッックの1964年頃から、ロース肉を巻いたロールハムや牛、馬、ウサギ、羊などの肉を寄せ集めたプレスハムが誕生し、高価だった畜肉のソーセージも買えるようになり、魚肉ソーセージを「ニセモノ」と見て、70年代以後、魚肉ハム・ソーセージから畜肉ものへと移行しました。60年代の「もっと脂肪や油を摂ろう」から「健康のため、日本型食生活に戻そう」に世間がシフトしてきたのが80年代の終わりから90年代で、コピー食品メーカーも70年代以後、使用する添加物を進化させ、コピー食品が本家のホンモノよりローカロリーでコレステロールの心配もないと感じる消費者によって、もうニセモノでもコピー食品でもない、本家本元の魚肉ソーセージという地位をつかみました。
昨日のごちそうが今日はあたりまえの大衆食となり、処分に困っていた食品カスが新しい科学技術でごちそうになったりもする。食べものをめぐる下克上は今後もっと短いサイクルで激しく入れ替わってゆくでしょう。
今日の日本では、冷蔵庫もおうちの中もモノをギッシリ詰めこんでおるように思えます。食糧や人口問題、環境や資源の問題を考えると、必要なだけの食べものがあればいいし、新たな資源を使って生産するより、今あるものに手を加えながら暮らす方がいいと思います。