竹林の愚人  WAREHOUSE

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あこがれの家電時代

2008-01-21 08:01:51 | BOOKS
清水慶一 「あこがれの家電時代」 河出書房新社 2007.04.30. 

昭和30年代のある日、わが家にテレビが届いた。駅前の「電気屋さん」が、アンテナとつないだ後、スイッチが入り、画像が現れた時の感動は今も忘れることができない。 団塊の世代と呼ばれる私たちの子供の頃は、家に電気洗濯機・テレビ・冷蔵庫と次々に家庭電化製品「カデン」が入ってきた時代だった。若かった父や母は、このような家電を揃えていくことに満足を覚えていた。それは自分たちが豊かになっていくのを目に見える形で示していたし、そのことに幸せを感じていたのかもしれない。 私たちの世代は、こんな時代に子供から大人になっていった。恐らく、あの時代の若い夫婦とその子供たちが持った家電への熱い思い入れは、その前の世代もそれから後の世代も理解できないだろう。 昭和30年代、テレビ・洗濯機・冷蔵庫を「3種の神器」と呼んだ。既に28年(1953)に評論家大宅壮二は「電化元年」という言葉を使っていた。昭和31年の『経済自書』には「もはや戦後ではない」という言葉が使われ、焦土から復興の時代、豊かになっていくということを実感できるのが「3種の神器」だった。 昭和40年代は3C時代と言われる。3Cとは、カー・カラーテレビ・クーラーを指すが、30年代の復興の時代から40年代になって、自家用車やエアコンなどの耐久消費財に手が出せるほど所得水準が上がり、ついに43年(1968)に日本経済はGNP世界第2位を達成した。 経済大国への道は、庶民にとって、さまざまな家電製品を購入すること、さらに自家用車を持ち、自宅を持つこととして実感されたのかもしれない。 少なくとも、日本人が近代になってから初めて耐久消費財に強い関心を持ち始め、「消費行動そのものを生活の目標にする」というライフスタイルをとり始めたのはこの時代であろう。