竹林の愚人  WAREHOUSE

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脱「常識」の銀行経営

2008-01-08 08:32:23 | BOOKS
前田裕之 脱「常識」の銀行経営 関西アーバン銀行・伊藤忠彦の発想・戦略・施策 2007.10.22. 

関西銀行の経営が危機に陥ったのは、バブル経済が崩壊した1990年代の半ばころ。不動産、建設、ノンバンクなどの「特定業種」との取引で、バブル崩壊後の大きな反動に苦しんでいた。 1999年1月、住友銀行から伊藤忠彦が関西銀行のトップに派遣された。関西銀行の資産規模は約9,000億円と、地域金融機関の中でも中小規模の銀行だ。できることは基本的に3つ。業容の拡大、人件費や物件費などのコスト削減、資金運用などによる利回りの改善だ。 全店で350人の外回りをする営業担当者を250人に削減した。法人取引が増えない店はゼロにして、大阪の梅田や難波、心斎橋の本店など都心部にある大型店舗など、取引を増やす余地があるところに営業担当を集中配置し、企業取引を増やす態勢を整えた。 大阪に本拠を置く都市型地銀が戦う相手は都市銀行だ。都銀に対抗するためには規模が小さい銀行だからこそ、できることをやる。合併前の時点で約70支店、外回りの営業担当者約300人と、トップ自らが人材教育、営業施策の浸透、目標管理のチェックなどを実行できる。そして、顧客に直接会うこともできる。 大手銀行は富裕層、中小金融機関はそうでない階層の顧客が多いが、リテール銀行として成長するために富裕層向けのサービス体系を作り、全体のサービスも向上していった。また、ATMコーナーの入り口に、「住友銀行グループ」という文字を入れ、住友銀行の傘下に入で安心ですと顧客にアピールした。2003年には関西さわやか銀行(旧幸福銀行)と合併し、伊藤は短期間で関西銀行を全国トップクラスの業績を上げるまでにした。 地域金融機関が接している中小企業のうち業績が安定している優良企業は2、3割にすぎず、7割はグレーゾーンにある。これからは貸出金の額が大きく、貸出金利が安いというだけでは通用しない。取引先企業にきちんとアドバイスできる銀行がメーンバンクと呼ばれるだろう。とりわけ地域金融機関は大手銀行に負けないようなアドバイスをしなければ取引先企業をつなぎ止めるのは難しい。 また、貸し出しと並んで「個人の証券化」が大きな柱になる。個人の証券化の中心は投資信託や保険商品の販売で、リスク商品を取り扱うにはアフターサービスの善しあしが勝負の決め手だ。 無担保貸し出しの管理体制の強化と、顧客に対して証券化商品の説明をしっかりする態勢作りが重要で、きめ細かいリスク管理の手法を導入する必要がある。