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癒しの島、沖縄の真実

2007-04-18 17:05:51 | BOOKS
野里 洋 「癒しの島、沖縄の真実」 ソフトバンク新書 2007.02.26. 

沖縄は明治、大正、昭和と、ひたすら日本本土への同化に力を注ぎ込み、「完全な日本人」になろうと努力してきた。その頂点にあったのが本土防衛の沖縄戦であった。戦闘に一般市民までが巻き込まれ、4人に1人が犠牲になる悲惨な戦争だったが、それは強いられたものであると同時に、「日本のために」という意識、使命感が招いた悲劇でもあった。にもかかわらず、戦争が終わると沖縄は、一方的に日本本土から施政権を分断され、米国の軍事統治を受けることになる。日本人としてのアイデンティティーを血を流すことで確立しょうとしたのだが、果たし得なかった。明治以来、日本人になろう、なりきろうと努力を続けてきたのが沖縄の近代史だった。 ところが、復帰が実現してしばらく経って社会が落ち着いた頃、ひたすら追い求め続けた本土との「同化」に異変が生じ始めた。基地や経済振興などなお解決すべき大きな問題があるとはいえ、経済的にも豊かになり、なによりも沖縄の文化や芸能、あるいは沖縄そのものに県民が自信を持ち始めた。本土と同化する必要はあるのか、いや、沖縄は沖縄でいけばいい、と多くの県民がそう思い始めた。みんなが沖縄を見直すようになった。 復帰する前は本土志向が強すぎて沖縄独特の歴史が語られることは少なかったが、アイデンティティーに自信を持ち始めてから、琉球王国時代について語られることが多くなった。復帰して20年前後から顕著になった。 沖縄の自然、歴史、文化など沖縄そのものに自信を深め、かつては揺らぐことが多かったウチナーンチュとしてのアイデンティティーも以前に比べるとかなりしっかりしてきた。「沖縄」から「琉球」へ、県民の意識も大きく膨らんで、いま沖縄は、現代版「琉球王国」 の雰囲気が全県を覆い、元気がいい。 これまで、沖縄の「異質性」「辺境」「巨大な米軍基地」は、どちらかといえば負の面で見られてきた。しかし、これからはその価値が逆転して、それらが沖縄の魅力となり、大いなる力を発揮するに違いない。