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日本の火山性地震と微動

2007-04-01 10:15:52 | BOOKS
西村太志・井口正人 「日本の火山性地震と微動」 京都大学学術出版会 2006.02.10. 

日本の火山観測は地震観測によって始められた。日本の地震学の創始者の一人である関谷活影が1888年に磐梯山が山体崩壊を起こした後に地震観測を行ったのが最初で、1910年には東京帝同大学教授の大森房吉が有珠山に機械式地震計を設置し、わが国ではじめて火山性地震・微動を観測することに成功した。 日本では、東から太平洋プレート、南からフィリピン海プレートが沈み込むため、海域や内陸で頻繁に地震が発生する。普段、我々が「地震」という用語を使うのは、たいていこのようなプレートの沈み込みに伴って発生するプレート境界型地震や内陸で発生する地震を指している。このような地震は“断層運動”によって生じている地震である。これに対し、「火山性地震」とは火山活動に関係して火山付近で発生する地震である。この火山性地震は火山活動、つまりマグマなどの火山性流体の活動が直接的あるいは間接的に地殻に作用した結果生じ、ふつうの地震には見られない震動特性を示す。 火山地域で発生する地震や微動は、多様な火山活動に対応していろいろな波形特性をもつ地震や微動が観測される。波形特性や噴火現象、震源の位置をもとに分類されるが、その分類の基準は火山あるいは解析者によって異なることがあり、複数の観測点、孔井式の地震観測点や火口付近の観測点のデータを利用して分類を行うことが必要となる。 火山性地震・微動の波形は変化に嵩んでおり、その発生メカニズムも一つのモデルで系統立てて表すことが難しい。その波形や発生過程が複雑であるがゆえに一つ一つの火山の個性がきわだって見えるが、これまでの研究の積み重ねにより火山性地震・微動の共通の特徴が見えはじめてきており、共通のモデル化への一歩を踏み出したと言える。 また、その発生時系列の特徴や噴火活動との関係、そして地殻変動現象や表面活動との関連性が調べられてきた。静穏期をはさんで噴火する火山では噴火の発生前から火山構造性地震の活動が活発化し、低周波地震や微動も発現する特徴が多くの火山で報告されている。2000年の有珠山や三宅島の噴火、1991年の雲仙岳の噴火は、このような地震・微動活動の活発化により噴火の発生が事前に予見されている。大地震の発生による噴火のトリガー現象、ダイクの貫入による周辺地殻での地震活動の活発化についても因果関係の統計的な調査だけでなく、両者の活動による静的・動的な応力分布による相互作用が明らかとなってきた。