パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

ブルックナー交響曲8番、ウィーンフィル、ティーレマン

2019年11月08日 08時26分37秒 | 見てきた、聴いてきた(展示会・映画と音楽)

昨日の幸せだった時間(ウィーンフィルのコンサート)のこと

ブルックナー交響曲8番、ウィーンフィル、ティーレマン
この順番は適当にあげたものではなく、チケット購入に背中を押した力の順

ブルックナーの8番の交響曲は大好きな曲で、これがあるところならどこにでも
誰のでも出かけていきたい気持ちを持っている

ウィーンフィルはその音色を確認したかったため
昔聴いたヴァントと北ドイツ放送交響楽団のブルックナー8番の音色が
ふわっとして柔らかくブレンドされてとても気持ちよかったので、
その記憶の中にある音色と比較したかったため

ティーレマンは巷で評判の指揮者なのだが、彼の録音したものは持っていないので
お試しに聴いてみようとした好奇心から

大好きな曲だけに、新鮮に感じるために断酒ならぬ断聴してこの日を迎えた
ただ聴くだけでも大いに楽しむために精神的なコンディションづくりにも気を使った
座席に座って心の準備が充分でないままに始まってしまうのはもったいない
でもワクワクしながら待っていた自分の前を、時間ギリギリに来て終わったらさっさと帰った人がいた
自分はなんともったいない時間の過ごし方、、と思ってしまった

聴くという行為は、精神を集中して一音も聴き逃さず、音の表現するものを体験・考えると満足感を得やすい
今回もその態度で臨もうとしたが、果たして精神を集中して聴いていたのか
それとも川のせせらぎ、鳥の声、風の音を聞いてるときのような自然に身を任せているように聴いていたのか
ちょっとわからない
これブルックナーの音楽がそのようにさせるようで、ベートーヴェンの音楽を聴いているときとは明らかに違う

始まりと最後に腕時計を見ると、演奏時間は約1時間半だった
集中していたせいか、あるいは身を任せていたせいか、この時間は少しも長く感じなかった
むしろ短いような気さえした

聴き終わると印象は全体的なものと、その時その時の部分的な記憶に分かれる
部分部分は演奏のことであったり、曲自体のことであったり、連想の赴くままだ

ウィーンフィルの音は輝きに満ちた音だ
これは、確かに何かが違う
そしてそこで思ったことは、ブルックナーのはこの音を普段聞いて出来上がりをイメージして
作曲したのだろうということ
彼の理想の音はこのようなものだったのかもしれないということ
(ただ別の音色による表現も捨てがたい)
この音色からブルックナーが生活し、彼が普段目にしたウィーンの風景を感じられるような気がした
それと同時にこの輝かしい音は、神を讃えるために作曲したものだとの思いを強くした

結局のところ、ブルックナーは全肯定的な音楽を作りたかった
そのように思えてならない
この云いたいことがいっぱい詰まった音楽は、それ故に万人に理解されないかもしれない
でも、それでもこのように作らざるを得ない彼の表現意欲、そしてその形式は
少しばかり時代を超えているように思える

聴き終わた全体的な印象は、どうしても比較の上でのこととなる
今まで実演で聴いたこの曲は、メータとイスラエル・フィル、ヴァントと北ドイツ放送交響楽団、
朝比奈隆と大阪フィルだが、多分みんな今のティーレマンより歳が上だ
昨晩のティーレマンの音楽は、昔風でなく今風の音楽というよりは若い人が現在感じ取っている音楽
というような気がした(しかしティーレマンは現在60歳と知って驚いたが)

部分部分は差がなくても、聴き終わったあとで何年も残っているのは
年齢がいってるヴァントと朝比奈さん
それを思うと、ティーレマンがもう少し年令を重ねたら、どんな音楽に変わるかも
確認してみたいような気がする

音楽は音がなり始めるところからではない
ティーレマンが指揮台に立って音楽が始まるまでには計測不可能のような静寂があった
いつ始まるのかと緊張と不安が会場に漂う
息を潜め、みんなの耳が始まりを期待しピンと空気が張り詰めたその中から音楽が始まる
この効果はとても素晴らしい

これは音楽の最後でも同じことで
音が消えたらおしまいではなく
音楽は余韻という心の中でなっている音楽が終わったときが終わりなのだ

残念なことに懸念されたフライングブラボー(拍手)が二三人あったが
これをした人は冷や汗をかいたに違いない(非難の視線、空気を感じて)

コンサートが終わって半日になる
これからは記憶が整理されて、今感じていることと違うことが後々まで
残ることになるだろう

ところで、13日にはベルリン・フィルで同じ曲のコンサートがある
これを聴いたあとは自分はどんな記憶が刻まれるのだろう
これも楽しみ(聴くためのコンディションづくりは次回も頑張るぞ)



コメント
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