Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

ベイリーとグレンラガン、そして月岡芳年

2009年07月05日 | SF・FT
SF界屈指の奇想系作家、バリントン・J・ベイリーの追悼特集が組まれた
「SFマガジン」2009年5月号を、古本屋で見つけてきました。

カップリングはこれまた奇想系で鳴らした才人、T・M・ディッシュの追悼特集。
なんだか死んだあとまで「エース・ダブル」仕様っぽいのが、この二人らしいところかも。
(このネタがわかった人は、ここでちょっとだけ笑ってやってください~。)
BPさんの「究極映像研究所」でもすでに取り上げられてますが、この傑物二人を
同じ年に失うという損失は、特に奇想SFファンにとって大きな痛手でした。

さてベイリーといえば、本邦での代表作は衣装哲学系奇想SF『カエアンの聖衣』で
決まりなのですが、諸事情により最近復刊されたのは『禅銃』のほうでした。

衰退した銀河帝国、知性化された動物、そしてキメラの猿が手にした謎の超兵器
「禅銃」に、謎めいた戦士“小姓”(これはむしろ“古将”と表記すべきかも)・・・と、
ディテールだけ抜き書きしてもわかるとおり、この作品を元ネタのひとつにしてるのが
今も劇場版が上映されている『天元突破グレンラガン』なわけですね。

最終話タイトルと「人類とは天を目指すもの」というディテールだけを借りてきた
『天の光はすべて星』と比べれば、むしろ『禅銃』のほうが元ネタ色は濃厚です。
なにしろ螺旋王ロージェノムの乗る愛機が、ずばり「ラゼンガン」ですからねぇ。
(そのへんは『天の光はすべて星』新装文庫版のあとがきで、中島かずき氏も
自ら明かしているところですが。)

で、『禅銃』新装版の表紙について少々補足しておきます。
上のイラストは新しい文庫の表紙ですが、カバー見返しにはデザイナーとおぼしき
外人の名前しか書かれていません。
でもこの絵の元型はれっきとした日本の、それも明治時代に描かれた作品です。


下の絵は、月岡芳年「月百姿」より「玉兎 孫悟空」。
向きが逆になってる以外は、ほぼ同じ絵なのがわかると思います。

まさか芳年も、自分の絵が海外SFの表紙を飾るとは思わなかったでしょう。
でもこの人の作風は「マンガ・劇画の先駆」とも言われているようですから、
人気イラストレーターが表紙を飾る最近のSF作品と比べて遜色がないのも
むしろ当然のことかもしれません。
サイケな色調にアレンジしてみせたデザイナーのセンスも、芳年の絵だからこそ
うまくハマったのではないかとも思います。

ところで、ベイリーで『グレンラガン』の元ネタときたら、やっぱり外せないのは
短編の代表作「洞察鏡奇譚」でしょうね。
たしか、岩ばっかりの宇宙で穴を掘りまくるという話だったはずなので。
これが収録された傑作短編集『シティ5からの脱出』も、早期の復刊を希望します。

あと未読ですが、ベイリーは「地底戦艦インタースティス」ってのも書いてました。
これは単行本未収録なので、国書かどっかで短編集つくって入れて欲しいな。
翻訳SFは売れる芽があるうちに出しとくのが吉なので、担当の方はご一考を!
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