Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

第23回東京国際映画祭「映画人 りんたろうの世界」

2010年10月31日 | イベント・観覧レポート
第23回東京国際映画祭の特別企画「映画人 りんたろうの世界」に行ってきました。

最初にゲストを迎えたカンファレンスが行われ、続いて『幻魔大戦』『カムイの剣』『メトロポリス』の
新旧3本が上映されるという、とても充実した内容でした。

まずは2時間にわたって行われたカンファレンスについて。
りんたろう監督の代表作といえば、劇場デビュー作品でもある『銀河鉄道999』が思い浮かびますが、
その脚本に石森史郎さんを起用したきっかけであり、劇場版999のイメージの原点にもなっているという
1972年の実写映画『約束』の一部が、最初に上映されました。
この作品の主演女優は当時40歳前後の岸恵子ですが、なるほどメーテルの面影もあるなあという感じ。
この作品の脚本家である石森さんを起用することで「年上の女性と大人になりつつある少年の交流」という、
劇場版999のテーマが確立されたようです。

続いて一人目のゲスト、『幻魔大戦』で主人公の東丈を演じた古谷徹さんが登場。
角川初のアニメ映画である幻魔への意気込みと声優一本でやっていこうという覚悟から、この作品を機に
所属先を青二プロダクションに変えたという逸話を披露してくれました。

古谷さんご自身の演技で特に気に入っている場面は、ベガとの対決シーンだとか。
ちなみに作中で吉祥寺周辺が頻出するのは、アニメで実在の街をリアルに描きたいという監督の意図によるもの。
この当時、りん監督は吉祥寺に住んでいたため、ロケハンなしでも描けたそうです。

なお、この日は参加できなかったものの、『幻魔大戦』『カムイの剣』『メトロポリス』の全てに出演している
小山茉美さんからも祝電が届いてました。

その後にりん監督が虫プロ時代に動画を手がけた作品「ある街角の物語」の一部を流しつつ、アーバン指向や
虫プロ当時の思い出話、手塚作品への思いなどが語られた後、次のゲストとして漫画家でありアニメ監督の
大友克洋さんが登場しました。
当時吉祥寺に住んでいた大友さんを、同じく吉祥寺に住んでいたりん監督が喫茶店で口説いて『幻魔大戦』に
参加してもらったのが、今に至る付き合いの始まりとか。
大友さんには当時のマッドハウスの汚さと居心地のよさがとても印象的で、この体験が自らアニメを手がける
ひとつのきっかけにもなったそうです。
そしてベガのデザインイメージには、辻村ジュサブローの影響も少し入ってるとか。

ルナ姫のデザインについては、当時これを見た現マッドハウス社長の丸山正雄さんからひとこと、
「かわいくねー!もっと可愛くできないか」と言われたとか。
(ちなみに、このカンファレンスでは当の丸山さんご本人が、大友さんの目の前に座ってました。)
さらにマントも着せようという提案に対し、大友さんは「それは無理、オレの中にはマントは無い!」

なお、東京壊滅シーンの群集シーンには大友さん直筆のカットがあるそうで、意識しながら見てみると、
それらしきカットがはっきりと見分けられます。
(追記:MOOKさんからの情報によれば、全部で4カット描いているとのこと。)

続いて大友さんが脚本を書いた『メトロポリス』について。
「自分を含めた多くの作家に影響を与えたのは初期の手塚作品であり、昔ながらの指も手足も太いキャラで、
自分好みのアーバンスタイルなアニメを撮りたい」というりん監督の希望から、初期作品のメトロポリスが
選ばれたそうです。
大友さんによると「原作のお話そのものはかなりアレ」だとのことですが、つぎ込まれたアイデアの量は
半端ではなく、脚本化の過程でそれを膨らます作業が楽しかったとの話。
スターシステムでロックを登場させるというのは、大友さんのアイデアだそうです。
作中では巨大都市とそこにひしめく民衆の姿が印象的で、アニメのほうでもこれを見事に再現していますが、
アニメーターさんには非常に苦労をかけたとか。

この後『スチームボーイ』公開時に応援作品として作られた「48×61」が流されましたが、これがとにかく
メチャクチャで面白かった。
自転車好きのりん監督と大友さんが多摩川べりで自転車レースをするという短編アニメですが、後半部分は
ほとんど自転車版『REDLINE』という内容。
キャラデザの寺田克也さんの描く二人が異様に似ているのがまた笑えるところで、さらにそれを見ながら
当の本人たちがコメントしている、というシチュエーションがシュールでした。
「こういう作品が賞を獲れるようになると、未来は明るいんですけどね(笑)」とは、りん監督ご自身の弁。

続いてのゲストは、『カムイの剣』で音楽を担当された宇崎竜童さん。
劇中音楽に和太鼓を取り入れたいという監督の希望に応えたこと、絵コンテの横に書かれている効果音を
現場で見た体験などが、太鼓と掛け声を駆使する「竜童組」のスタイルへとつながっていったそうです。
また劇中で印象的に使われているケチャの音源は、監督がバリ島のビーチで買ってきたカセットテープを
使用しているとのこと。
「忍者をリアリズムではなくあやつり人形的に動かしたいと考えたとき、ケチャの音が合うと思った」
「尻から太鼓の音がドーンと上がってきて、頭の上からケチャの音がチャッチャッと来るのが面白かった」
(りん監督の発言より)

さらに『カムイの剣』の映像と音楽表現の原点として、りん監督が演出に携わっていたモノクロTVアニメ
佐武と市捕物控』の第一話冒頭も上映されました。

実は番外編として、宇崎さん自身が関わった映画作品の話題も出たのですが、内容があまりに危なすぎるので
ここには書けません(^^;。

そして最後のゲストは、今回の東京国際映画祭「みなと上映会」で『マイマイ新子と千年の魔法』が上映された
片淵須直監督。
「若僧なもんで、今日は何で呼ばれたのか」と謙遜する片淵監督、相変わらず奥ゆかしかったです(笑)。

りん監督の『よなよなペンギン』とほぼ同時期に『マイマイ新子』を製作し、共にマッドハウスを牽引する
片淵監督ですが、意外にもきちんと挨拶するのはこの日がはじめてとのことでした。
しかし大学生時代に属していた池田ゼミで、なんと実習と称して「キャプテンハーロック」の絵コンテを
切らされたという思い出話から、実は昔から間接的なつながりがあったと判明(笑)。
また同じく大学の講師だった月岡貞夫さんがりん監督に仕掛けたというイタズラ話も聞かせていただきました。

実写への意識について問われたりん監督は「そもそも東映動画に入ったのはアニメ指向ではなく、
実写に進むための方便だった」と発言。
そのためあまり熱心に仕事もせず、隣の大泉撮影所へ頻繁に顔を出していたようです。
しかしその後に虫プロへと移籍し、気がつけばすっかりアニメ業界に染まっていたとか。

逆に片淵監督のほうは「(実写)映像は好きだけど人に指図するのが苦手なので、ドキュメンタリー作品を
撮りたかった。それも人間を撮るのは怖いので、自然のアルバムみたいに山の中で延々とフクロウとかを
一人で撮ってたら、きっと幸せだろうなと思った(笑)。」

最後に、最近の「映画としてのアニメ」をどう思うか、という質問に対して、片淵監督からは
「今はいろいろな企画もできるようになってきたけれど、それを世間に知らしめるという部分で
 バランスのとれてない部分があると思う。」
「(マーケティング主体から)作り手が前に立ってモノを作れるようになってきたので(そういう作品が)
 アニメマニアでない一般の人にも伝わって欲しい。」とのこと。
マイマイ新子の実情を知るファンの一人として、深くうなずける言葉でした。

これを受けて、りん監督はアトム以来の日本アニメがたどってきた“浸透と拡散”に触れながら、
日本アニメの閉塞感とこれからの展開に対する期待感を述べられました。
また急速に普及している3Dに対しては、日本アニメの良さである「手描き」の力を評価しつつも、
時代の流れにどう立ち向かうべきかという危機感も滲ませていました。

そしてカンファレンス終了後には、『幻魔大戦』『カムイの剣』『メトロポリス』を連続上映。
3作に共通して感じたのは、スケールの大きな画面構成と壮絶な破滅美でした。
こういう画作りの作品は、やっぱり大画面で見ないと本領が発揮されないものですね。
またどの作品も音楽の個性が映像と緊密に関係して、強固な世界観を形づくっています。
『幻魔大戦』では、幻魔のイメージがブリューゲル的であることにもはじめて気づきました。

さすがに3作品とも優れていますが、やはり全ての面で出色だと思ったのは『カムイの剣』です。
個性的なキャラのすばらしい動き、雄大な背景美術とケレン味たっぷりな特殊効果。
そして矢野徹先生の原作による、世界と歴史を股にかける物語の破天荒な面白さ。
ケチャと和太鼓のミックスによるボーダーレスな音楽が、これらの魅力をさらに増幅しています。
原作の知名度で一番損をしている気がする作品ですが、娯楽冒険活劇にして伝奇アニメの傑作なので、
この上映を機に、もっと正当な評価を受けるようになって欲しいものです。
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