河童の歌声

歌声喫茶&キャンプ&ハイキング&写真&艦船

マジノ線・壮大なる大失敗

2022-06-13 18:30:33 | 軍事
1914年~1918年、第一次世界大戦。
フランス軍はパリ郊外でドイツ軍と対峙し、
30万人をはるかに超えるという大損害を記録しました。

何しろここを突破されると、花の都パリはドイツ軍の手に堕ちるのですから、
フランス軍は必死です。
両軍は総延長数千キロという塹壕を掘って立てこもり、
そこから出ると、この大戦から大量に装備されるようになった、
機関銃が銃弾を浴びせてくるのですから、全くの膠着状態になったのでした。
この戦いを映画にしたのが「西部戦線異状なし」という有名な映画です。

この戦争は一応フランス軍が勝利しましたが、
フランスとしては、隣国に居る好戦的なドイツという国が絶えず脅威です。
この国が在る限りフランスは安閑としてはいられません。
ではどうしたらいいのか?
フランスは中国の「万里の長城」よろしく、鉄壁の要塞を造ったのです。
それは歴史上最大と言われた大要塞地帯でした。





ドイツの下側にある国はスイスで、要塞の総延長は700キロとも言われています。







工事は1930年頃から始まり、1940年頃まで約10年間続きました。
マジノ線とは、当時の陸軍元帥、アンドレ・マジノの提案で造られ、
それを冠してマジノ線と名付けられました。
工事費用は当時の国家予算にも匹敵する膨大な金額でした。
いかにフランスがドイツに脅威を抱いていたかの証しです。

15キロ間隔で108の要塞を築き、
それは厚さ3,5メートルに達するコンクリートに覆われていました。
この要塞の地下には大きな地下道があり、
兵員、食糧、弾薬を運ぶ電気鉄道も走っていました。

フランスはこの要塞がドイツとの国境を囲っている限り安全だと信じ込んでいました。
二十数万のフランス兵が立てこもっている鉄壁の要塞は、
ドイツ軍の指導者たちさえ、それを認めるのにやぶさかではありませんでした。

さて、第二次世界大戦が始まりました。
1940年5月10日、ドイツの機甲師団がフランスへ向け進撃を始めました。
しかし、フランス軍はドイツ軍の進路に大きな衝撃を受けます。
ドイツ軍はマジノ線を避けて、北方のベルギーに在る、
アルデンヌの森から進軍して来たのです。





そこは標高300~350メートルの丘陵地帯が続く森林でした。
そこには広い道など無く、また湖沼も多く、大軍の通過は出来ない。
フランス軍はこの丘陵地帯を進軍する事は不可能だと考えていたのです。
しかし、ドイツ軍は進軍の可否を試して「行ける」と結論づけていました。
ドイツ軍はアルデンヌを詳細に調査し、慎重に進みさえすれば、
大軍であっても進軍は可能である事を知っていたのです。
鉄壁の要塞、マジノ線は何の役にも立ちませんでした。
ドイツ軍から見捨られてしまったのです。



見捨てられたからと言って、そこを護るフランス兵25万人は、
マジノ要塞の中で右往左往するばかりで、生殺し状態でした。
それからひと月足らずでフランスはドイツに降伏したのでした。

現在もマジノ要塞の殆どは、その姿を留め、観光客のポイントとなっています。
というのは、あまりにも分厚いコンクリートな為に撤去するにも膨大な費用がかかるのです。

しかし、フランスの甘さには呆れますね。
誰一人マジノ線の北側のアルデンヌの森など考えもしなかったのですから。
よく世界の三大無用の長物として、
「ピラミッド」「万里の長城」「戦艦大和」と言われますが、
このマジノ線も彼等と全く同じで、国家予算を喰い潰した大失敗作でした。


さて、ここまでは、ある本から引用させて頂いたのですが、
この文の著者は、最後にこう言っています。



「軍備に関する事だけではなく、国家的な大事業に着手する際、
あらゆる可能性について徹底的に検討し、議論を重ね、
少数意見にも耳を貸す事が必要なのである。
こう考えると数兆円を投じて建設中のリニア新幹線も、
我が国にとって本当に必要かどうか、議論を深めてほしいと思われる」

「もはやSNSを駆使してテレワークの時代である。
また観光客の為の移動なら既成の新幹線でも十分対応できる。
東京と名古屋間を30分速くする為に、
国家予算の10パーセント近くをつぎ込むのである。
リニアが現代における万里の長城、マジノ線なのではあるまいか。」

どうでしょう。
とても深い蘊蓄ある言葉ですね。
私も、なるほどと考えさせられてしまいました。
リニアはマジノ線となるのか?


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 生涯未婚率 | トップ | 丹波哲郎 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

軍事」カテゴリの最新記事