宮司の祝詞が3人の体を包むように大きく小さく流れてきます。その声は何処までも清らかです。おせんはなんだか自分が自分ではなく、何にもない空っぽの中にいるように思えます。かって祖父から聞いた無の世界とかこんなものではないだろうかとも思います。昨夜見た夢の中の真っ黒な闇の世界に真っ白な毬がとんとんと跳ねていた処のようだと感じました。
宮司の祝詞が終わります。辺りは全くの静寂です。秋がその静寂を後押ししています。
とんとんと宮司の階を降ります。神殿の入り口でしばらく佇んだまま3人は、今までの空っぽの世界から解き放たれたように、ほっとして社の秋色を楽しんでいます。2,3段降りられた所で宮司は、振り返りながら3人に話しかけられます。
「もう少し秋が深まってまいりますと、お園さんのご存知のように、この神殿からの秋の眺めは本当にきれいで、なんといいましょうか、この世の物でははいかのように映ります。今は、まだその入り口ですが。・・・・ここから見る秋の景色は、もう何百年かの昔から、多くの里人だけでなく、ここにお参りする人々に、毎年毎年、感動を与え続けてきているのです。・・・・どうして人は神様にお参りするのかお分かりでしょうか。御利益を頂戴すると為だとか言われていますが、それは間違っています。・・・・・ちょっと横道にそれてお話しして見ます。そこから吉備津神社の秋色を見ながら聞いてください」
そう言われると宮司は階を上られてみんなの側に来ます。
「銀杏も暫らくするとまッ黄に色付きます。・・・・神代のお話です。大国主命たちが出雲の国から信濃の国に旅をした時です。大国主命だけが大きな袋を肩に担いで行きました。この袋を背負っていたために皆から遅れてしまい、その途中で、あの因幡の白兎に出会います。その話はまたのことにして。・・・・ほかの兄弟の神様達は何も持たないで手ぶらです。この時、大国主命が担いでいた袋の中身はなんだったかご存知ですか。あれは一緒に旅する命の兄達の荷物が全部入っていたのだそうです。兄達は一番小さい弟大国主命に全部の荷物を預けて持たして、自分達だけは楽々として旅をしたのだそうです。兄達は弟の苦労など少しも考えないで自分達だけが楽な旅をしたのです。意地悪な神さんなのです。神様の中にもこんな悪い神様もいるのです。でも、結局、出雲の国をお治めになられる神様は、悪い心を持ってなかった大国主命なのです。われわれは神様ではないのです。人なのです。だから、誰でも欲を持って生きています。お金持ちになろうとか、偉い人になろうとか欲に絡んだ暮らしをしています。悪は総てこの人の持つ欲が作り出しているのです。誰でも悪心を持って生まれてくるのです。ただ、神様の前で祝詞を聞くとその悪心が消えていきます。というか、神様が人の悪心を取り出してくれるのです。だから、人々は神様にお参りして、自分の心をきれいに掃除してもらっているのです。そんな人々の悪心が神殿の中にはいっぱい詰まっております。それを時々後ろにあるあのおにぎり山に持ち込んで、よい心と交換して貰って、再び、元の人に返しています。そのいっぱい詰まった悪い心を裏にある木戸からおにぎり山に持っていくために出口をここのお宮さんは作っているのだそうです。裏に出口をもうけているお宮さんは全国でも珍しいのです」
宮司の祝詞が終わります。辺りは全くの静寂です。秋がその静寂を後押ししています。
とんとんと宮司の階を降ります。神殿の入り口でしばらく佇んだまま3人は、今までの空っぽの世界から解き放たれたように、ほっとして社の秋色を楽しんでいます。2,3段降りられた所で宮司は、振り返りながら3人に話しかけられます。
「もう少し秋が深まってまいりますと、お園さんのご存知のように、この神殿からの秋の眺めは本当にきれいで、なんといいましょうか、この世の物でははいかのように映ります。今は、まだその入り口ですが。・・・・ここから見る秋の景色は、もう何百年かの昔から、多くの里人だけでなく、ここにお参りする人々に、毎年毎年、感動を与え続けてきているのです。・・・・どうして人は神様にお参りするのかお分かりでしょうか。御利益を頂戴すると為だとか言われていますが、それは間違っています。・・・・・ちょっと横道にそれてお話しして見ます。そこから吉備津神社の秋色を見ながら聞いてください」
そう言われると宮司は階を上られてみんなの側に来ます。
「銀杏も暫らくするとまッ黄に色付きます。・・・・神代のお話です。大国主命たちが出雲の国から信濃の国に旅をした時です。大国主命だけが大きな袋を肩に担いで行きました。この袋を背負っていたために皆から遅れてしまい、その途中で、あの因幡の白兎に出会います。その話はまたのことにして。・・・・ほかの兄弟の神様達は何も持たないで手ぶらです。この時、大国主命が担いでいた袋の中身はなんだったかご存知ですか。あれは一緒に旅する命の兄達の荷物が全部入っていたのだそうです。兄達は一番小さい弟大国主命に全部の荷物を預けて持たして、自分達だけは楽々として旅をしたのだそうです。兄達は弟の苦労など少しも考えないで自分達だけが楽な旅をしたのです。意地悪な神さんなのです。神様の中にもこんな悪い神様もいるのです。でも、結局、出雲の国をお治めになられる神様は、悪い心を持ってなかった大国主命なのです。われわれは神様ではないのです。人なのです。だから、誰でも欲を持って生きています。お金持ちになろうとか、偉い人になろうとか欲に絡んだ暮らしをしています。悪は総てこの人の持つ欲が作り出しているのです。誰でも悪心を持って生まれてくるのです。ただ、神様の前で祝詞を聞くとその悪心が消えていきます。というか、神様が人の悪心を取り出してくれるのです。だから、人々は神様にお参りして、自分の心をきれいに掃除してもらっているのです。そんな人々の悪心が神殿の中にはいっぱい詰まっております。それを時々後ろにあるあのおにぎり山に持ち込んで、よい心と交換して貰って、再び、元の人に返しています。そのいっぱい詰まった悪い心を裏にある木戸からおにぎり山に持っていくために出口をここのお宮さんは作っているのだそうです。裏に出口をもうけているお宮さんは全国でも珍しいのです」