高尚の書いた「あやごろも」と云う文に、彼の著書を神社に奉納したことを記しています。
「二日(天保六年正月)けふも同じよそおひにてまゐり三十巻の書の箱に入れたるをささげ奉る。その書にそえたるうた
さくら木の板にゑりてもみそ巻のふみのことばの花ぞ色なき
此ふみどもはおのれわかかりし時より物まなびに深く心いれてみそぢにあまれる頃消息文例さき草などいふ書をかきあらはしつるを都難波の書あき人ども乞ひ取りて板にゑりつるすり巻の世に広まれるまにまにつぎつぎしかしつるがかく数多く積れるなりけり。」
一口に「三十巻」とは申せ、それだけの書物を書き著すとなると、だけでも大変な労力が必要になります。彼の著書を見ると伊勢物語や源氏物語だけではありません。平家物語・源平盛衰記・枕草子・栄華物語・狭衣・紫式部日記・土佐日記・蜻蛉日記・和泉式部日記は、勿論、日本書紀・古事記は云うに及ばず万葉集・古今和歌集など幅広く日本の古典に就いて研究しています。それらについては、彼の著書「三のしるべ』について詳しく書かれていますので、何時かそれについても書いてみたいものだと思っております。