私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

長風は万里の涛を破らんと欲す

2011-07-27 09:34:51 | Weblog
 今の永代橋は、写真によると、ビルの谷間に埋もれるように架かっていますが、わずか150年昔の永代橋には、詩人をして自然に詩を生ましむような情緒がそこに存在しているかのように思われます。

    

 それでと云う訳ではありますまいが、江戸名所図絵にある永代橋の絵には服部南郭の詩が付けてあります

       東望天邊海気高
       三叉口上接滔々
       布帆一片懸秋色
       欲破長風万里涛

 詩の内容は、
 「永代橋から東を望めば、天高く海の香りがいっぱいに立ちこめている。しかも、隅田川等の川が三つも流れ込み水がみなぎっている、そんな広大な川の中を、たった一艘の帆懸け船が、ゆっくりと秋色を醸し出すように進んでいる。そのような海の上を吹けている風は、見渡す限り何処までも続くかと思われる様な大波を打ち破らんとするかのようにゆったりとを流れています。秋たけなわの候です」
 と、まあ、これくらいな情感を歌った詩だろうと思います。

 それがどうでしょうか、現代の文明は近代化と云う名の元に、そのような人の情感すら完全に打ちのめすだけではありません。総てを、そこにある総てを打ち消してしまっています。 
        

 これが現代という時間です。風情なんてくそくらえとばかりに前進あるのみと、一途に邁進する現代なのです、何か心寂しさがこの絵を見るたびに感じてなりません。

 何か人間の自然に対する不敬みたいなものが感じられ、誰かが言ったように「これは天罰だ」をという感じがしないでもありません。皆さんはどうお思いですか