私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

遠野物語最終

2010-06-30 09:46:32 | Weblog
 100年前の6月14日に出された遠野物語ですが、最後に、その(五四)にあるお話を書いてみますので、読んでみてください。

 「閉伊川の流れには淵多く恐ろしき伝説少なからず。小国川との落合に近き所に、川井という村あり。其村の長者の奉公人、ある淵の上なる山にて樹を伐るとて、斧を水中に取落としたり。主人の物なれば淵に入りて之を探りしに、水の底に入るままに物音聞ゆ。之を求めて行くに岩の陰に家あり。奥の方に美しき娘機を織りて居たり。そのハシタに彼の斧は立てかけてありたり。之を返したまわらんと言う時、振り返りたる女の顔を見れば、二三年前に身まかりたる我が主人の娘なり。斧は返すべければ我が此所にあることを人に言ふな。其礼として其方身上よくなり、奉公をせずともすむようにして遣らんと言いたり。その為なるか否かは知らず。其後胴引など云う博奕び不思議に勝ち続けて金溜り、程なく奉公をやめて家に引込みて中位の農民になりたれど、此男疾くに物忘れして、此娘の言ひしことも心付かずしてありしに、或日同じ淵の辺りを過ぎて町へ行くとて、ふと前の事を思い出して、伴なる者に以前かかることありきと語りしかば、やがて其噂は近郷に伝わりぬ。其頃より男は家産再び傾き、又昔の主人に奉公して年を経たり。家の主人は何と思ひしにや、その淵に何荷(なんが)ともなく熱湯を注ぎ入れなどしたりしが、なんの効も無かりしとのことなり」

 
 このお話からもわかるように、これなどのお話は勧善懲悪的であったり、また、仏教的な匂いがしたりするようなお話ではなく、どこか縄文の匂いがするようなお話ではないかと思います。