「へンくつ日記」

日常や社会全般の時事。
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備忘録 国会事故調報告書(抜粋)

2012年07月06日 04時51分28秒 | Weblog
 
元日本学術会議会長の黒川清委員長を中心とした
「原発事故 国会事故調査委員会」の報告書を読
んだ。この手の書類は回りくどく、急所を突かず
突っ込まれないことだけを考えた、いわゆる役人
書類が殆どで、隔靴掻痒感は否めないのだが、こ
れは急所をズバッと突いており、読んでいて実に
痛快な気分になった
嘘と言い訳・誤魔化し・責任転嫁を指摘した嘘の
ない書類の、なんと嬉しいことか
備忘録として、ここに残そうと思う

以下は、サンケイに載っていた要旨…



 【事故は「人災」】

 事故の根源的な原因は、東京電力福島第1原発が、地震にも津波にも
耐えられる保証がない
、ぜい弱な状態だったことと推定される。

 今回の事故は、これまで何回も対策を打つ機会があったにもかかわらず
歴代の規制当局と東電経営陣が、それぞれ意図的な先送り、不作為
あるいは自己の組織に都合の良い判断を行うことで、安全対策が
取られないまま3月11日を迎えたことで
発生した。

 規制当局と東電との関係では、規制する立場とされる立場の「逆転関係」
が起き、規制当局は電力事業者の「虜」となっていた。安全についての監視
監督機能は崩壊していたと見ることができ、いわゆる「規制の虜」だった
何度も事前に対策を立てるチャンスがあったことに鑑みれば、事故は自然
災害ではなくあきらかに「人災」だ。

 【事故の直接的原因】

 事故の直接的原因は、地震と津波という自然現象だが、事故が実際に
どのように進展していったか解明されていないことが多い。

 しかし、東電は事故の主因を早々に津波とし、「安全上重要な機器は
地震で損傷を受けたものはほとんど認められない」と中間報告書に明記
政府も、国際原子力機関(IAEA)に提出した事故報告書に同趣旨のことを記した。

「想定外」とすることで責任を回避するための方便のようにも聞こえるが
地震リスクと津波リスクも、東電と規制当局関係者によって事前に認識さ
れていたことが検証されており、言い訳の余地はない

1号機では、地震により、小規模のLOCA(小さな配管破断などの
冷却材喪失事故)が起きた可能性を否定できない。

 【運転上の問題の評価】

 1号機の非常用復水器(IC)の操作に関してはマニュアルもなく
運転員は十分訓練されていなかった。早期のうちにICの蒸気管に水素
ガスが充満し、そのために自然循環が阻害され、ICが機能喪失してい
たと推測している。

 多重防護が一気に破られ、同時に4基の原子炉の電源が喪失する中で
2号機の原子炉隔離時冷却系(RCIC)が長時間稼働したことなど、
偶然というべき状況がなければ、2、3号機はさらに厳しい状況に
陥ったとも考えられる。

 【緊急時対応の問題】

緊急時対応について、官邸、規制当局、東電経営陣には、準備も
心構えもなく、その結果、被害拡大を防ぐことはできなかった。


官邸は、緊急事態宣言を速やかに出すことができなかった。官邸は東電の
本店と現場に直接的な指示を出したことで、現場の指揮命令系統が混乱した。

官邸による発電所の現場への直接的な介入は指揮命令系統の混乱を
拡大する結果となった
。東電本店は官邸の意向を現場に伝える役割だけの状態に陥った。

3月14日、2号機の状況が厳しくなる中で、東電が全員撤退を考えている
のではないかという点について、東電と官邸の間で認識のギャップが拡大し
たが、根源には、両者の相互不信が広がる中で、東電社長が官邸の意向を探る
かのような曖昧な連絡に終始した点があったと
考えられる。

ただし、(1)発電所の現場は全面退避を一切考えていなかったこと
(2)東電本店でも退避基準の検討は進められていたが、全面退避が
決定された形跡はなく、東電社長が官邸に呼ばれる前に確定した退避
計画も緊急対応メンバーを残して退避するといった内容であったこと
などから判断して、首相によって東電の全員撤退が阻止されたと理解
することはできない。

 【被害拡大の要因】

 事故発災当時、政府から自治体に対する連絡が遅れたばかりではなく
その深刻さも伝えられなかった


 同じように避難を余儀なくされた地域でも、原発からの距離によって事故情報の
伝達速度に大きな差が生じた。着の身着のままの避難、多数回の避難移動、あるい
は線量の高い地域への移動が続出した。

 その後の長期にわたる屋内避難指示や自主避難指示での混乱、線量の高い地域に
避難した住民の被曝、4月まで避難指示が出されず放置された地域など避難施策は
混乱した。規制当局の原子力防災対策への怠慢と、当時の官邸、規制当局の危機管
理意識の低さが、住民避難の混乱の根底にあり、官邸と規制当局の危機管理体制は機能しなかった

 【住民の被害状況】

 被害を受けた広範囲の多くの住民は、不必要な被曝を経験した
また、避難のための移動が原因と思われる死亡者も発生した。

1万人を超す住民アンケートには、いまだに進まない政府の対応に
厳しい声が多数寄せられている。

放射線被曝による健康問題、家族、生活基盤の崩壊、そして広大な
土地の環境汚染問題は深刻だ。

 【問題解決に向けて】

関係者に共通していたのは、およそ原子力を扱う者に許されぬ無知と慢心で
世界の潮流を無視し国民の安全を最優先とせず、組織の利益を最優先とする
組織依存のマインドセット(思い込み、常識)だった

規制される側とする側の「逆転関係」を形成した真因である組織的、制度的問題が
「人災」を引き起こしたと考える
人を入れ替え、組織の名称を変えるだけでは再発防止は不可能だ。

 【事業者】

東電はエネルギー政策や原子力規制に強い影響力を行使しながらも自らは
矢面に立たず、役所に責任を転嫁する経営を続けてきた


東電は官僚的だったが、一方で原子力技術に関する情報の格差を武器に、電気事業
連合会などを介して規制を骨抜きにする試みを続けた。東電は官邸の過剰介入や全
面撤退との誤解を責めることが許される立場になく、混乱を招いた張本人だった。
常により高い安全を目指す姿勢に欠け、現場軽視の東電の経営陣の姿勢は
原子力を扱う事業者としての資格があるのか。


 【規制当局】

 規制当局は原子力の安全に対する監視・監督機能を果たせなかった
規制当局の、推進官庁、事業者からの独立性は形骸化しており
その能力においても、専門性においても、安全への徹底的な
こだわりという点でも、国民の安全を守るには程遠いレベルだった。
 
日本の原子力法規制は、その改定で、実際に発生した事故のみを踏まえた
対症療法的対応が重ねられ、諸外国の事故や安全への取り組みなどを真摯に
受け止めて見直す姿勢にも欠けた。その結果、常に想定外のリスクにさらさ
れることとなった。原子力法規制は抜本的に見直す必要がある。




大いに合点がいったのは、「問題解決」の部分

“関係者に共通していたのは、およそ原子力を扱う者に許されぬ無知と慢心で
世界の潮流を無視し国民の安全を最優先とせず、組織の利益を最優先とする
組織依存のマインドセット(思い込み、常識)だった。
人を入れ替え、組織の名称を変えるだけでは再発防止は不可能だ”

原子力を「教育」に代えると、現代の教育界の問題点になるし
更に、全ての分野でいえる問題点だ
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