今回はこれで終わりです。
これは倉庫での写真ですね。みないい顔をしています(笑)。
http://www.enve.com/history.aspx
エンヴェはカーボンファイバーだけでなく、マトリクスにも相当なものがあるようです。もちろん各々は自前で作ることなんかできません。しかし組み合わせとなるとそれこそ無限大にあります。各社のリクエストに応じて、それに見合うようなマトリクスも提案するようです。故にまだ他社では少ない、耐紫外線タイプのエポキシも採用しているのでしょう。
オートクレーブは備えていないようですが、それでも問題ないと判断したのかと。それもそれでアリです。オートクレーブを否定するわけではありませんが、欧米ではRTMやVaRTMに主流が移りつつあるようですし、ここでのチューブの作り方は歴史と実績のあるマンドレル式のようですから、大外れということはまずないでしょう。
初期の最軽量チューブラーリムは200グラム台のものもありました。しかしいつの間にか消えていましたね(苦笑)。今では25チューブラーが最も軽く、250グラムとなっています。……言ってしまうと結構普通の重量だったりします(笑)。それでもアメリカロードバイク界で、これほど完成され信頼を置かれているカーボンリムは他にありません。世界を見れば、カンパニョーロ、ライトウェイト、コリマなど先駆者でありライバルがいますけどね。
デザインもそんなに良いとは思っていません(苦笑)。いや思っていなかったのですが……、あれ? かっこいい? 見慣れたから? ……性能が私の目をそうさせたのでしょうか(笑)? グロス&マットブラックのスマートシステムなんか、かなり好きですねえ!
こうやって見ていくと、創業者、各エンジニア、商品管理、そしてテストなどが非常に上手くかみ合って、エンヴェという会社が回っているんですね。厳密に数えたわけではありませんが、40人近く従業員が居そうです。できてまだ間もない会社ですけど、評判に見合う量を提供するように成長したということでしょうか。
そして2013年、エンヴェはさらにワンステップ登ろうとしています。ナノテクノロジーで有名なZyvexテクノロジーズとの提携を発表したのです。自転車業界における独占契約です。Zyvexは市場に初めてなのかーボンを投入した、アメリカの会社だそうです。今はわかりませんが、イーストンの初期のナノカーボンパーツにもこの名前がありました。ロッキードマーチンなどの航空業界へも納品しています。エポキシの製作を始め、プリプレグも手がけているとか。でカーボンファイバーの仕入れ先は東邦テナックスみたいです。
http://www.sicklines.com/2012/05/02/enve-composites-and-zyvex-technologies-announce-partnership/
http://www.zyvextech.com/what-we-do
すでに共同開発品は2010年から始まっており、2011年のDHワールドカップでスティーブ・ピートが使用していたのはこれだったようです。Zyvexの技術であるKenteraテクノロジーを用いたマトリクスを使った、Arovexプリプレグ(カーボンナノチューブ配合カーボンシート、商品名)を採用している模様です。
Kenteraテクノロジーは新世代のカーボンナノテクノロジーのようです。通常ならあまり長く精製できないカーボンナノチューブ同士を、つなぎ合わせて長い状態にすることが可能で、結果として樹脂の強化につながっています。従来のエポキシを50%上回る強度を持ち、剥離強度とせん断強度も15%向上しているとか。靱性と強度に優れて居るようです。カーボンの弱点はまさにそこですから、マトリクスとしてはうってつけですね。このエポキシを東邦テナックスのカーボンファイバーに含ませたのが、Arovexプリプレグということみたいです。
ま、ここらへんのスペックはナノカーボンを採用したところの常套句です。肝心の性能は走って示すしかありませんね(笑)。
でも、こいつの性能はどうやらとんでもないようで、ピートは年間等してワンセットのホイールで走り抜いたそうです。……こんな話しはアルミモデルでも聞いたことがありません。プロとはいえ、たまにリム打ちだって落車だってするでしょうから、それを一年間耐え抜いたというのはすごいことです。一般ライダーならひょっとしたら10年間くらい保つかもしれません。
これは業界の方に教えてもらったのですが、この10年でカーボンは本当に良くなったのだそうです。10年前のものが今後も大丈夫か? と聞かれたらなんとも言えないそうですが、今のモノは何もトラブルがなければ、胸を張って大丈夫と言えるそうです。
糸自体は日本のお家芸と言っても良いカーボンファイバーですが、その応用、実物などは欧米の後塵を拝しています。ナノカーボンだって日本はパイオニアですからね。しかしそれをまとめ上げ、いち早く実用化にこぎ着けたのはアメリカの企業でした。
エンヴェには、日本が学ぶべきモノがたくさんあるような気がしてならないのです。持っている手札はほぼ同じなのに、ちゃんと中国などのアジアンメイドと戦っていけるだけの能力がある。
素材、製品だけでなく、そういった姿勢にも強く惹きつけられる会社かなと思います。