ほうせんか幻想
おかん
きょうの朝
あまりに太陽の日射しがまぶしく
めまいがして
よろよろ
と
知らない町を歩いていた
ぼくの手は
赤く染まって
ああ
おかん
知らない人を刺してしまった
おかん
理由なんかない
ただ
太陽がまぶしすぎて
何も考えられず
悪意も殺意もなく
ぼくは
AIのロボットの腕と化して
勝手に動いたのだ
おかん
20世紀のなかばで
理不尽な
理由もない
殺戮はあっという間に
世界に蔓延して
21世紀には
普通の出来事になっちまったよ
たいくつな
悲惨が
美食レポの横で
繰り広げられて
ぼくの涙は
充血した目から
まっきっきに
汚れて流れていく
濁流さ
おかん
いきるって
なんだろね
14歳で哲学者になってしまったよ
いま
生きていることが
充分に大事なことなのかもしれない
ぼくはこの手を洗い流して
いきなおそう
汚れてしまったら
もうすでに
ぼくがぼくでなく
ぽかんと
空の上
真昼の決闘は
ただの幻だった
手のひらに
ほうせんかのはなびら