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今年のノーベル化学賞は米独の3博士に!

2014-10-14 11:16:37 | ニュース

「超解像顕微鏡の開発」。(ニコンの解説より抜粋)

詳細は: http://www.nikon.co.jp/profile/technology/life/instruments/nsim/index.htm

 さまざまなしくみが複雑に関連しあって、生命活動を行っている人間のからだ。神経伝達物質や免疫のしくみなど、その精密さには驚かされるばかりである。医学や科学のめざましい進歩によって、遺伝子や細胞レベルで起こっている活動が徐々に明らかになってきているが、まだまだ見えない謎がたくさん残されている」。生命活動のメカニズムを解明し、新薬の開発や治療法の確立など医療のさらなる発展をめざすためには、生きた細胞の構造や働きを詳しく知ることが必要である。そこで、細胞研究の現場で広く行われるようになってきたのが、生きた細胞を観察するライブセルイメージングです。ライブセルイメージングにより多くのことがわかるようになりました。そして近年では生物科学の進展に伴い、細胞膜や細胞小器官などの微細構造をこれまで以上に、より詳細に観察したいというニーズが高まっている。たとえば、生命活動を行う上で重要な役割を担うミトコンドリア。従来の光学顕微鏡では、生きた細胞内にあるミトコンドリアの内部構造までをはっきりとは見ることができません。また、細胞の微細構造を調べる際には、光学顕微鏡よりも高い解像度を持つ電子顕微鏡が用いられるが、観察対象を凍結し真空状態で観察しなければならないという制約があるため、生きた細胞を観察することができない。そのため、電子顕微鏡の観察結果などから細胞について仮説を立てることができたとしても、生きた細胞で立証することが難しい状況であった。このようなことから、従来の限界を超えた高い解像度を実現する光学顕微鏡が求められるようになった。

1. モアレを利用して従来の約2倍にあたる解像度を実現


図2 生細胞のミトコンドリア。従来の顕微鏡画像(左)とN-SIM画像(右) N-SIMではミトコンドリア内部の微細な構造を鮮明に観察することができる。

 カメラや顕微鏡などの光学技術において「解像度」とは、接近した2つのものを別々のものとして識別する能力のことを意味し、「分解能」とも呼ばれている。従来の光学顕微鏡では、この解像度の限界が約200ナノメートルであった。200ナノメートルよりも接近した2つのものを別々のものとして識別するためには、従来の光学顕微鏡では取り込むことのできない、より大きな角度の光を対物レンズに取り込まなければいけない。しかし、実際に取り込める光の角度は対物レンズの大きさと光の波長により制限されるという理論上の限界があった。

 この光学顕微鏡の限界を超え、従来の約2倍にあたる飛躍的な解像度を実現したのが「超解像顕微鏡N-SIM」です。N-SIMは、2000年に米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のDr. Mats G.L.Gustafsson*らが発表した、モアレを利用して解像度を高める技術「構造化照明顕微鏡法(Structured Illumination Microscopy=SIM)」と、ニコン独自の光学技術を組み合わせて、超高解像度を実現した光学顕微鏡である。

  • ハワード・ヒューズ医療研究所 Janelia Farm Research Campusグループリーダー(2008年~2011年)


モアレ現象

 モアレとは干渉によって発生する縞模様で、規則性のあるパターンを複数重ね合わせた際に元のパターンとは異なるパターンが発生する現象である。観察対象に、パターン状の照明(構造化照明)をあてるとモアレが発生する。発生したモアレはその特性上、元のパターンより粗くなるため、光学顕微鏡で撮影することができます。撮影した画像には観察対象の細かな構造情報が含まれています。そのため、構造化照明の向きや照射位置を少しずつ変化させて撮影し、取得した複数の画像から演算処理によって、観察対象の詳細な構造を復元することが可能になる。このように画期的な技術を採用したN-SIMは、顕微鏡の構造を大きく変えずに照明を工夫することで、あたかも約2倍にあたる大きな角度の光を取り込んだような高い解像力を実現している。

構造化照明の効果。構造化照明により広い角度の光を取り込み高い解像度を実現

3. 生きた細胞の超解像画像を連続撮影

 細胞研究の現場で求められているライブセルイメージングのニーズに応えるためには、単に解像度を高めるだけでなく、生きた細胞の変化を観察できるスピードが重要ある。しかし、複数の画像から1枚の高解像画像を構築する構造化照明顕微鏡法では、処理時間の短縮は困難であった。ニコンでは、細胞の生きたままの動態を捉えるため、画像取得時間の短縮を徹底的に追求。対物レンズの性能や画像演算技術の向上、さらにはモアレ画像を効率的に発生させる高精度な構造化照明光学系の開発などを進めた。その結果、1枚の超解像画像の構築に必要な画像データはわずか9枚で、1.67fpsの連続撮影で鮮明な超解像画像の取得を実現した(2D-SIMモード時)。構造化照明顕微鏡法に着目しニコン独自の技術を融合することで、超解像ライブセルイメージングを可能としたN-SIM。近年のバイオイメージングにおける課題を克服し、細胞研究の世界を大きく進展させるものとして期待されている。


図3 N-SIMは、2D-SIMモードでは計9枚(3方向、3位相)、3D-SIMモードでは計15枚(3方向、5位相)という少ない画像で超解像画像が構築できるので、画像の取得時間も少なくてすむ。


N-SIMで撮影した高速ライブセルイメージ。N-SIMは世界で初めて、生きたミトコンドリア内部のクリステと呼ばれるひだ状の構造を動画で鮮明に撮影することに成功した。(動画は5回繰り返して再生)