太った中年

日本男児たるもの

日本のソフトパワー外交に向けて

2010-03-15 | weblog

青木保氏×ピーター・バラカン対談最終回

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日本のソフトパワー外交に向けて

もし国際間の交流が経済交流だけだったら、その関係は硬直したものになるでしょう。しかし、文化交流によって、その硬直が解れる場合があります。そうした柔軟な“文化外交”を展開するためには、日本人自身が自国文化や異文化の理解に前向きになり、企業や個人が想像力・創造力を発揮できる土壌を耕して、トータルの“ソフトパワー”を充填してゆくことが必要です。

クリエイティビティを育む土壌をつくろう

青木 バブルが崩壊した90年代以降は、いわば経済の停滞期です。でも、その時期に日本のアニメをはじめ、現代日本文化が海外に展開したんですよ。最近の経済不況の中でも、文化関係は任天堂をはじめ大きな利益を上げています。世界の日本文化の支持も増えています。

問題はいま日本社会全体に、何か新しいものをつくり出していこうという意欲が、失われているように見える。これはバラカンさんがしておられるように、外からどんどん刺激を与えていただかないと駄目です。そういう点では、文化や芸術のモデルというのは、やはりクリエイティビティだと思う。そのモデルをよく認識して新しいものを創造するという社会の力をもっと養わなくてはなりません。創造力と想像力を育てるのが最大の課題だと思います。

バラカン そうね。個人主義社会の中でだったら、誰でもクリエイティビティを発揮しやすいけれど、日本のような、ちょっと悪く言えば「出る杭社会」では、ドロップアウトしないことには、自由にものをつくることはなかなか難しいかもしれない。

青木 確かに。だからアニメとかマンガの世界は、みんな小さな集団でやっている。

日本の家電製品も会社の組織が小さいときは、トランジスタラジオをつくったりして世界を驚かし、一躍発展の機をつかんだ。でも、それが巨大化し、平均化して鈍化してしまうと、創造力が失われてしまう。残念ながら、今われわれが置かれているのはそういう状況です。クリエイティブな力をどうやってつけるのか、その土台をどうつくるかというのが一番大きな問題でしょう。

バラカン アメリカの言い方で、「Thinking outside the box」と言うんですよね。箱の外で物事を考える。ソニーの創業者・盛田昭夫さんについて面白いエピソードがある。小さなトランジスタラジオをつくったときに、それをシャツのポケットに入るサイズにしたかった。でも、そこまで小さくできなかったから、盛田さんは何て言ったと思います?「だったらシャツのポケットを大きくしろ」と。それって最高じゃないですか! 企業人はこの発想じゃないと駄目だよ。

―― そういう発想ができるような土台というものが教育、その他のなかでできていないんですね。

青木 むしろ日本は、芸術・文化のモデルをいま手本にすべきではないと思います。アニメや漫画だけではなく、回転寿司やカラオケでもそうだけれども、おもしろい工夫を思いついて、それが全世界で受け入れられているという現実もある。そういう発想をして具体化するのは、小さな芸術集団のようなところだったりする。だから、独創力をもつアーティストたちをもっと尊重する必要があります。同類的な思考になると、創造性が発揮できない仕組みになってしまうから。

バラカン 現代日本の文化を特徴付けている漫画だって、ほとんどの場合は、最初はその存在が誰にも気付かれない。描き手が好き勝手にやっているんです。それが大きな漫画フェアみたいなものからどんどん広がっていって、世界的に知られるまでになる。

青木 すごい人口ですよね。それから、いまでは『源氏物語』を漫画にしたり、『資本論』を漫画にしたり、古典などを理解するための一つのツールになっている。

バラカン 把握しにくいことを取りあえず漫画を読むことによって頭にいったん入れておくというのは、とても有効な手段だと思いますけどね。

青木 今まで漫画というのは、一般にはどうしても低級な娯楽作品、子供のためのものと捉えられてきていた。でもいまやきちんと文化として位置付けて評価しなければならない。アートには娯楽から高級な芸術までも含まれる。

バラカン 僕は日本に来たばかりの頃、相撲に興味を持ってテレビで相撲を見始めたんですけど、技の名前も分からないし、しきたりのことなんかも分からなかった。そうしたら、会社の同僚が、ちばてつやの『のたり松太郎』 という相撲取りの漫画を薦めてくれたんです。読みだしたらもう面白くて、面白くて。ちばさんの絵も緻密だし、せりふも面白いし。あとは秋山ジョージさんの『浮浪雲』も好きだったなあ。『浮浪雲』を読んでいるうちに、江戸文化の面白さが分かってきた。

どちらも教育的なものではないのに、自然と教育されている。そういう効果があるわけですね。

青木 そういう意味では、漫画は広く受け入れられる21世紀の文化であると同時に、基本的な知識獲得の手段だと思うんです。漫画を一つの表現の手段として、知識獲得の手段として認めて、文化としてきちんと位置をつける時代がきたと思います。これは大げさに言うと、日本が先鞭をつけた全世界的な欲求なんです。

日本は、浮世絵もそうですが、育てる文化的な伝統と土壌がある。芸術(ハイカルチャー)としての市民権を得てないとしても、サポーターはものすごく多いわけです。ドラえもんからポケモンから何から多彩な表現が生まれてくる。このバラエティーの広さというものは、アメリカやフランスのコミックにはないんですからね。

大切なのは、文化の価値を感じること

―― 日本人が自国の文化をあまり知らないのが現状だとしたら、もっと自国の文化を知った上で外国の人たちと交流をしていくということが、これからの時代に大事ですね。文化的土壌を大切にしていくことの必要性ついて、お二人にお伺いします。

バラカン そのためにどうしていけばいいかを具体的に言うと、親が子に伝える。学校の中でも伝える。マスメディアが関心を持って、分かりやすく伝える。この三つが必要だと思います。つまり、教育が鍵だと思う。いま漫画やアニメをきっかけに日本がかっこいいと、あこがれ始めている諸外国の人たちにとっても、日本文化全般に興味を持つきっかけになるかもしれません。

そういう人たちが伝統工芸に触れ、「これは素晴らしい。何? 後継者がいない? では、私がなってやろうじゃないか」という人も既に出てきていますし。これからますます多分僕は増えると思います。でも、日本人の皆さんが、自国の伝統工芸が外国人の手によって受け継がれていくことがいいのかどうかを考えたほうがいいと思う。経済成長ばかりを追いかけて突き進むよりも、日本文化を後継する職人になることのほうが、立派な決断だと思います。

青木 僕は、まず文化の価値を感じることだと思う。文化に触れ、そのいろいろな表現から“歓喜”する、感動を得るという経験をすることから始めるのが一番大切じゃないかと。

「文化教育」といっても、単にこういうものがありますと教えているだけではつまらないから、やはり生徒みんなが、「これは素晴らしい」と思うような形でプレゼンテーションしなくちゃいけない。その面白いと思わせる仕掛けが、どうも日本人は弱い感じがする。

バラカン そう。日本に限った問題じゃないですけど、テスト中心になっちゃうからね。

青木 単に「これがありますよ」と押し付けるのではなく、感性を磨くような形で伝授することをもっと考えるべきですね。

バラカン 特に子ども相手のときは、紹介する人間自身が興味を持たなければ伝わらないね。熱意を持っていると、それが自然と伝わるから、何も努力しなくても相手が面白がるんですよね。僕なんか、たかだかポピュラー音楽をラジオで紹介しているだけだけど、自分の好きなものを自分で選んで紹介するから、不思議とその熱意がみんな伝わるんですよ。すごく簡単なことです。

青木 教育の場でもそうですし、日本も世界との関係においてはやはり日本文化だけでなく異文化をよく勉強して、そのうえで世界とどういう関係を持つかということを考えなくてはいけない。経済的な交流だけででは、やはり国際関係が硬直する。特にアジア諸国やロシアとか、日本の周囲には複雑な異文化をもつ国や地域がいっぱいありますからね。文化をこちらがきちんと理解しているということを示すことによって、初めてうまく経済進出とか経済交流もできる面も大きいと思います。まあ、こうしたこと全体が日本の「ソフトパワー」の強化につながるわけですね。

―― 文化を自分たちの財産として大切にし、それを外に向けてうまく発信していくためには、まず日本人自身が文化に触れて学ぶことが大切ですね。

今日はいろいろと文化に関するお話を伺いました。どうもありがとうございました。

バラカン 話は尽きないですが、こういう話題はいつまでも議論したいですね。

青木 いつもテレビなどを見て、「日本文化に通じたすごい人がいるぞ」と思っていたんだけども、今日初めてご本人と話せて本当に楽しかったです。

青木・バラカン ありがとうございました。

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4日間ありがとうございました。

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さっきからツイッターが不安定。これってネットの意味性を解体する=無意味にするパフォーマンス。

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坂本龍馬をやりたい…鳩山邦夫氏、新党結成意向(読売新聞) - goo ニュース

自民党の鳩山邦夫・元総務相は14日、フジテレビの番組で「覚悟は完全にできている。新党がいかに大変か経験しているが、その苦労をもう一回やってみようと思っている」と述べ、自民党を離党し、新党を結成する意向を表明した。

結党の時期は「参院選を堂々と戦えるタイミング。連休前でしょうか」として、大型連休前の4月末を示唆した。政党助成法で定める政党要件を満たす国会議員5人の参加のメドは立っているとし、「与謝野(馨・元財務相)さん、舛添(要一・前厚生労働相)さん、みなが一緒になれるよう、私は坂本龍馬をやりたい」とも強調した。新党結成の理由は「自民党は賞味期限切れだ。いまだに派閥政治をしている」と説明した。

この後、福岡県久留米市内で記者団に「民主党のポピュリズム(大衆迎合)政治では、景気、財政は悪化する。政界再編の力を借りないと、日本を安定軌道に戻せない」と語り、民主党との連携は否定した。

鳩山邦夫氏は1993年に自民党を離党、94年の新進党結党に参加し、96年には兄の鳩山由紀夫氏(現首相)とともに旧民主党を結成した経歴を持つ。今回の発言について、自民党の谷垣総裁は14日、沖縄県名護市内で記者団に「外に向かってこういうたぐいの発信をするのは極めて遺憾だ」と、不快感を表明した。

一方、同じフジテレビの番組で、みんなの党の渡辺代表は、邦夫氏との連携に否定的な考えを示した。

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沈みゆく泥舟から逃げ出すタイミングを考えているって感じだな。


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