太った中年

日本男児たるもの

原発事故の責任

2011-07-13 | weblog

原発がやっかいなのは危険確率ではなく誰も責任がとれないこと

原発は、火力よりも安全だという話があります。なぜなら化石燃料の採掘や火力発電稼働による事故による死者数、また火力発電によって起こる公害による被害とくらべれば、原発事故による死者ははるかに少ない、冷静に考えると原発が他のエネルギーよりも危険だとはいえないという説です。よく池田信夫さんが示されています。

ただ石炭による発電でも、今日は公害をださない技術が確立されているので老朽化した設備を新しい設備に置き換えれば二酸化炭素排出問題は残りますが、公害による被害はなくなります。それでも、火力のほうが事故による死亡者数は多いかもしれません。

また金融日記さんが、自動車の事故と、航空機の事故では、移動距離あたりの死亡者数では、自動車のほうが多いのと同じで、発電量あたりの死亡者数では、原発のほうが低いということを書いていらっしゃいます。それもそのとおりかもしれません。

核燃料廃棄物は本当に問題なのか? - 金融日記 - BLOGOS(ブロゴス) :

視点が抜けていると思うのは、ひとつは、事故が起こったときに誰がどのように責任をとるのか、あるいは責任がとれるのかの問題です。もうひとつは、実際に事故が起こったときの経済的、また社会的な影響の甚大さです。

自動車事故は、加害者が被害者にたいする賠償責任があります。自らの事故で自らの命を失うと、それも悲惨ですが、自己責任です。航空機の場合も、十分かどうかは別にして、航空機の会社に賠償責任はあります。

いずれにも共通するのは、責任を誰が取るのかのルールがあり、責任を果すせるように保険の制度もできています。

では原発はどうでしょう。事故が起こって、誰かが責任をとることができるのでしょうか。実際に事故を起こした東電は賠償責任がありますが、現実的には十分な賠償能力がありません。だから国が保証することになります。つまり被害者である国民がその責任をとらされることになります。

突然、トラックが家に飛び込んできて、自宅が壊れ、それが原因で家族が亡くなったにもかかわらず、その賠償金の一部を被害者が支払わなければならないようなものです。あなたもトラックの恩恵を受けてきたはずだ、だから賠償を分かち合って欲しいと言われてどう答えたらいいのでしょう。

では原発事故には保険が効くのでしょうか。被害が特定できないのだから、被害額を特定するルールもありません。これまでの原発事故への保険がどうなっていたかは知らないのですが、おそらく新規施設に保険をかけるとすれば、膨大な保険料となるばかりか、保険を引き受ける会社があるのかどうかも疑問です。膨大な保険料を支払えば、電力コストは確実にあがります。

今回の福島第一原発事故では現場での直接的な死亡事故は起こっていませんが、風評被害などで畜産業のかたが自殺したり、また避難したお年寄りが環境の変化によって亡くなるという哀しい出来事も起こっています。それらは誰が責任をとるのでしょうか。

成熟した社会では、事故による被害に対してはそれに対する加害者の責任を求めるルールがありますが、原発事故に関しては、一応は法律はあるのですが、そもそも事故が現実に起こることが想定されておらず、実際にはそのルールがないのも同然です。今回分かったことは、原発はいったん事故が起こると、技術的にもコントロールする能力をもたず、しかも責任を定めるルールもないことです。

さらに原発には根本的にはイノベーションが起こらない、いや起こせなかったというのが実態です。いくらビル・ゲイツがチャンスがあるといっても、OSでバグがでるとフリーズするだけですが、原発はいったん事故が起こると、ビル・ゲイツの資産をもってもその賠償責任ははたせません。もっと安全な原発技術を開発できるという人がいますが、その保証はありません。

使用済み核燃料も、十年後、あるいは何十年か先にはそれを再利用出来る技術が生まれるかもしれません。それはそれでビル・ゲイツが投資して自由に研究すればいいのですが、それを前提としてエネルギー政策を考えるのはあまりにも非現実的です。

もっというなら、どの発電を行うかは、国家が関与せず自由競争にすればいいのではないでしょうか。自由競争にし、電力会社を解体した際に、果たして原発運営会社を買取る会社がでてくるのかです。

またその際に生まれた発電会社が原発をつくるかです。地元との交渉も、また現在の交付金にあたるものも自己負担になります。事故が起こったときには確実にその会社が賠償責任を負うとして、いったいその会社に資本を投資するところがあるのだろうかということです。

つまり、原発は政府の国家政策がなければ成り立たない技術だということです。最終責任は国民側にあり、被害を受けてもあなたは賠償責任があります。その事実の理解があって、はじめてフェアな比較がなりたつのではないかと感じます。

(以上、BLOGOS大西宏氏の記事を転載) 

原発事故は安全性と危険率ではなく誰が責任を負うのかつーシンプルなそもそも論。

原発推進の池田信夫と金融日記に強烈なカンターパンチが炸裂した秀逸な記事だ。

政治や原発のエントリーをすこし休憩しようかなと思う。ではまた。