京大植物園TODAY

京都市左京区の京都大学北部キャンパス内にひっそり佇む現代の杜、京都大学理学研究科附属植物園の日々の風景を紹介します。

「雑草園とは何ぞ」:分類植物園という考えかた

2006年02月19日 01時47分44秒 | Weblog

雑草園とは何ぞ (岩本熊吉「雑草園の造り方」昭和15年より)

 『雑草園には植物学園実用園風致園の三つがある。此の他に自然園と称するものも列することが出来るが、之は純然たる天然であるから茲(ここ)では省くこととする。

・・・我らの智識を深くし、利益を増し、情操を養ひ、神を知るが為には必ずしも人工的に雑草園を作らねばならぬと云ふことは無い。即ち大自然は即ち大雑草園であると曰はれないことはないけれども、多数の雑草を一個所に集めて眼前に置くことは、深く雑草を研究する上に於て極めて便利である。況んや都会人の如く自然に接する機会の極めて少ない処に在っては殊に必要である。

・・・必ずしも 雑草園に植ゑる植物は、全植物を集める必要は無い。其の地方地方の附近に自然的に生ずる雑草、勿論春夏秋冬の季節を通じて、なるべく洩れ無く集めて、1ヶ所に系統的に配列して植栽するがよい。之等の雑草は大抵七八十種乃至百種以内である。各植物には一々名札を附け、之に世界共通の植物学上の真の名称即ちラテン名と学者間に公定せられたる和名の本名を書き誌すがよい。

・・・雑草園には、又単に草本のみに止まらず、其地方に存する喬木や灌木をやはり分類的に併植することが便利である。要するに、雑草園によりて自然に接し、自然を研究すると同時に更に一歩前進して植物園ともすべきで、雑草園は之等(これら)に至る階段ともいふべきである。』