fantasia*diapsida

とりとめのないメモの山

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

amphioxus genome:

2008-06-21 00:00:00 | biologie*

巷で話題のナメクジウオ(amphioxus)の論文をば。

脊椎動物の祖先はナメクジウオ=ホヤは傍流と判明-日米英などゲノム解読(時事通信) - goo ニュース
なんてニュースもよく見られますが、
まぁ脊椎動物の祖先型の1つにナメクジウオ"類"などがあるって、それは100年以上前から言われていますし
世界的に見てショボイと評判の、日本の生物の教科書にでさえ昔から載っていることです。
でもこれ、結構な誤報よね…。「ホヤは傍流」と加えてあるから辛うじて意味通っているけれど。
某所のニュースでは"ヒトの祖先はナメクジウオ"なんて"現生種&現生種"な酷いタイトルが。
一般の人はこっちの方が分かりやすいのかなぁ。
…と思いきや、某mi○iなんかの記事巡ってみると明らかにトンチンカンな反応も多い…
いつものことだけれど、情報の受渡双方がもっとしっかりせねばならんよなぁ。

"amphioxusのゲノムと脊索動物の核型の進化"というのが元の話のようです。


nature /vol. 435 /19 June 2008 /1064-1072
"The amphioxus genome and the evolution of the chordate karyotype"

Nicholas H. Putnam1,2, Thomas Butts3, David E. K. Ferrier4, Rebecca F. Furlong3, Uffe Hellsten1,Takeshi Kawashima2†,
Marc Robinson-Rechavi5,6, Eiichi Shoguchi7†, Astrid Terry1, Jr-Kai Yu8,E`liaBenitoGutie´rrez9,
Inna Dubchak1,
Jordi Garcia-Ferna`ndez10, Jeremy J. Gibson-Brown11†, Igor V. Grigoriev1,Amy C. Horton11†, Pieter J. de Jong12, Jerzy Jurka13,
Vladimir V. Kapitonov13, Yuji Kohara14, Yoko Kuroki15, Erika Lindquist1, Susan Lucas1, Kazutoyo Osoegawa12, Len A. Pennacchio1,
Asaf A. Salamov1, Yutaka Satou7, Tatjana Sauka-Spengler8, Jeremy Schmutz16, Tadasu Shin-I14, Atsushi Toyoda15,
Marianne Bronner-Fraser8, Asao Fujiyama15,17, Linda Z. Holland18, Peter W. H. Holland3, Nori Satoh7† & Daniel S. Rokhsar1,2

1 Department of Energy Joint Genome Institute,USA.
2 Center for Integrative Genomics, Department of Molecular and Cell Biology, University of California, Berkeley, USA.
3 Department of Zoology, University of Oxford, UK.
4 The Gatty Marine Laboratory, University of St Andrews, UK.
5 Department of Ecology and Evolution, University of Lausanne, Switzerland.
6 Swiss Institute of Bioinformatics, Switzerland.
7 Department of Zoology, Graduate School of Science, Kyoto University, Japan.
8 Division of Biology, California Institute of Technology, USA.
9 National Institute forMedical Research, UK.
10 Departament de Gene`tica, Facultat de Biologia, Universitat de Barcelona, Spain.
11 Department of Biology,Washington University in St Louis, USA.
12 Children’s Hospital of Oakland Research Institute, USA.
13 Genetic Information Research Institute, USA.
14 National Institute of Genetics, Mishima, Shizuoka, Japan.
15 RIKEN Genomic Sciences Center, Yokohama, Japan.
16 JGI Stanford Human Genome Center, USA.
17 National Institute of Informatics, Chiyoda-ku, Tokyo, Japan.
18 Marine Biology ResearchDivision, Scripps Institution ofOceanography, University of California, USA.
†Present addresses:Okinawa Institute of Science and Technology (OIST), Japan (T.K., E.S. and N.S.);
Genome Sequencing Center, Department of Genetics, Washington University in St Louis School of Medicine, USA (A.C.H.);
Institute for Evolutionary Discovery, USA (J.J.G-B.).

USA、スイス、スペイン、イギリス、日本…と、
amphioxus研究の有名処や遺伝子関連の大御所が百花繚乱ですね☆


 では、論文の内容を掻い摘んで。先程さっと読み通しただけなので(&結構苦手要素があるので)、
 間違い多いかも…話半分でどうぞm(_ _)m。詳しいところは省きますよ。
 正確には論文の原本を参照して下さい。
 それか、国立遺伝学研究所〈プレスリリース〉


ナメクジウオ(lancelet; =amphioxus)は
カンブリア紀から化石が見つかるほどの、脊索動物(Chordata)の最も古い系統の、数少ない現生種です。
言うまでもなく軟体動物のナメクジとはかなり遠い関係にあり、魚ともそれほどでないにせよ相当かけ離れた奴です。
似てるとすりゃ、…やっぱりホヤか。
今回の研究ではフロリダのナメクジウオ、Branchiostoma floridaeをモデルに約520Mbpのゲノムを解析、
これにより脊索動物門の3グループ
{尾索動物(urochordata;ホヤetc.)・頭索動物(cephalochordata;ナメクジウオetc.)・脊椎動物(vertebrata)}
の系統を再考察した。
のみならず、ゲノム全域にわたる重複(duplication)やそれに続く脊索動物の系統構築をも観察し、
そうした現象が脊椎動物(vertebrate)の系統でゲノムを進化させたということをも記述しています。


ナメクジウオは小型の海生動物で、多くは海底に棲み顎は無く、
口周りに生えた鬚を使ってフィルターフィーディング(濾過摂餌; filter-feeding)をして生活。
19世紀初めに発生学者のAlexander Kowalevskiによって、
脊椎動物や尾索動物(urochordate. ホヤetc…)との解剖学的・発生学的類似性が指摘されました。
3グループは背側神経管(dosal neural tube)・脊索(notochord)・穿孔性咽頭域(perforated pharyngeal region.※注1)
・分節した体幹の筋系(発生学的に体節(somite)から生じる)・肛門より後方に伸びる尾、などの共通点を保持。
脊椎動物(vertebrata)・尾索動物(urochordata)・頭索動物(cephalochordata; ナメクジウオetc.)は纏められ、
脊索動物門(Phylum Chordata)を形成するようになりました。
これらの共通祖先は約5億5000万年前(つまりカンブリア紀)まで遡るとされます。

  ちなみにコイツ、日本でも昔はいっぱいいて食ってたんですけど、今じゃすっかり砂浜が汚れてマイナー生物…
  白く、透き通るようで、実体顕などで見てみるとそれはそれは美しい、優美な生物なんですが。
  ナメクジウオ(amphioxus)自体についてはまた別所に詳しく書きました


ところがダーウィンや多くの研究者は、恐らくはナメクジウオやホヤの幼生のようだったと思われる脊索動物の共通祖先が
どうやって脊椎動物のような超複雑な形態・生理・神経系云々を発達させてきたかが疑問でならなかったらしい。

これはSusumu Ohno(1970)※注2の提唱した理論;
“脊椎動物のゲノムは遺伝子の重複によって進化してきた”でようやく説明できるようになりました。

脊椎動物のゲノム配列からすると、その遺伝子の量自体は無脊椎動物とさほど変わらない。
それなのに、過去にゲノムが大規模に重複したという証拠は次々上がってきました
(つまりゲノムは“重複したらすぐにまた減少”という動作を繰り返した?)。
ところが重複がいつ・どれくらい起こり、その後ゲノムがどう変化してきたかは理解が進んでいませんでした。
ホヤのゲノムは既に解析が終了していますが、あまりにアレンジされすぎていて
系統進化的な考察は困難とされていたようです。


今回はBranchiostoma floridaeのゲノムを、
全ゲノムショットガン法(Whole-genome Shotgun Sequencing)を用いてドラフトシークェンス(draft sequence)を読み、
他の動物と構造を比較。

配列の系統解析やエキソン-イントロンの構造から、脊椎動物とホヤなど尾索動物とが姉妹群であり、
ナメクジウオなど頭索動物が、脊索動物の中で最もbasalであることが確認されました。
 ここがニュースなどで最も大きく取り上げられている点ですね。
 しかし、ナメクジウオ‐ホヤのどちらが脊索動物の祖先型かは長い間議論されていて、
 昔はホヤのような尾索動物がbasalだとされていたんですが、
 最近はナメクジウオのような頭索動物がbasalだとされるようになってきていました。
 今回の研究の中ではそれが"確認できた"ということです。
   当然ですが、"サルからヒトが進化した"と言うのが慣習でありながらも本来は間違いで
   "サルとヒトとは共通祖先から進化した"と言うのが正確であるように、
   "ナメクジウオから脊椎動物が進化した"と言っても現生のナメクジウオが脊椎動物の祖先な訳ではございません。
   一種の言葉の綾みたいなもんです。(ちょっと違うか?)

この論文で成立した互いの系統関係はザッと上図のようなもの(元論文、fig.1を基に改変)。
  最初に"ヒトの祖先はナメクジウオ"なんて題のニュースがあったと書きましたが、
  明らかに誤報であることが分かると思います。

  それどころかむしろ、この論文の主な焦点は系統解析よりも次のようなところにあります。

比較解析により、5億年もの間独自に進化を続けたにも係わらず、脊椎動物‐ナメクジウオでも共通して
脊索動物の基本形となる17本の連鎖群(linkage group)が保存されていることも明らかになりました。
ヒトゲノムの90%以上が、この4つに重複した連鎖群(linkage group)に保存されていることが分かったため、
脊椎動物の進化において全ゲノムの重複が2回生じたとの仮説は、見事証明されたようです。
(ちなみにヒト-ナメクジウオの全ゲノム自体の相同性は約60%とされる。)

ホヤ(sea squirt)、ヤツメウナギ(lamprey)、ゾウザメ(elephant shark)、何種類かの硬骨魚類の配列と比較すると、
全ゲノム重複は尾索類(つまりホヤ)が分岐した後、軟骨魚と硬骨魚が分岐する前、に起きたと分かりました。
無顎類(agnathan。ここではヤツメウナギ)と顎口類(gnathostome。顎を持った脊椎動物)が分岐する
前と後に1回ずつ起こった、という主張がされていますが、
八倍体(octoploid)がこれらを隔てた可能性も捨てきれないようです。


 ざっとこんなところ。
 私のまとめ方がショボイのとfigureがないのとで、かなりピントがボヤけているかも。
 日本語のサイトなら上にも書きましたが
 国立遺伝学研究所のプレスリリースが最良だと思われます。参考にして下さい。



※注1:云わば咽頭に鰓孔が開いているってことか。
 陸棲脊椎動物、例えばヒトやなんかに鰓なんてないぞ、と思われるかもしれないが、
 発生過程ではこれに相同な咽頭弓(pharyngeal arch. 内臓弓;vescular arch、鰓弓;branchial archとも)
 が見られる(例えば魚のような鰓そのものが生じるわけではないよ)。

※注2:大野乾。著書、『Evolution by Gene Duplication"遺伝子重複による進化"』(1970)参照。


画像は、昔描いたヒガシナメクジウオBranchiostoma belcheri の♀。


LINK:
脊索動物 - 祖国は危機にあり 関連blog - Yahoo!ブログ
 amphioxus一連のニュース報道に関して、素晴らしい批評をなされています。是非とも読んでいただきたい。
・ウォルナット・クリーク通信 : ナメクジウオゲノムに関する一般報道について
 実際に研究に係わられた方の記事でしょうか。やはりニュース報道と実際とはまるで違うぞと
 携わった側の方々も苦い思いをしておられるようです。専門性は高いですが、こちらも是非参照していただきたい。

BLOG内関連記事:
Branchiostoma belcheri: うちのヒガシナメクジウオの標本。
vertebrata:0102 脊椎動物。


< βλογ πετ >


にほんブログ村 科学ブログへ にほんブログ村 科学ブログ 生物学・生物科学へ


Comment   Trackbacks (2)   この記事についてブログを書く
« sky - in the shell 2.0: | TOP | Branchiostoma belcheri: »
最近の画像もっと見る

post a comment

Recent Entries | biologie*

2 Trackbacks

ナメクジウオ (くろつやむしの休日)
私たちの祖先はナメクジウオか?ホヤか?・・、ホヤの子供はオタマジャクシみたいです
祖先はナメクジウオ類 (memento記憶)
脊椎動物の祖先はホヤ類ではなくナメクジウオの仲間であるというニュースです。ネーミングが・・ネーチャーに載るのだから科学的根拠があるのでしょうね。まずは魚だったのね。ダーウィン以来の懸案だとか 読売新聞から 人など脊椎(せきつい)動物の祖先は、これまで考え...